「今回のスプリントでは、何を実現するのか?」
スクラムで開発を進めるとき、スプリントの中で取り組む作業を決めるだけでは十分ではありません。
チーム全員が「このスプリントでは何を達成するのか」を共有しておくことが重要です。
そこで登場するのがスプリントゴールです。
一言でいうと
スプリントゴールとは、スプリントで達成したい目的や価値を表したものです。
簡単に言えば、
「このスプリントでは、何を実現するために活動するのか?」
を示すものです。
例えば、単純に、
「ログイン画面を作る」
「検索機能を作る」
「テストを20件実施する」
といった作業だけを目標にするのではありません。
それらの作業を通じて、
「ユーザーが安全にサービスへログインできるようにする」
といった、スプリントで実現したい目的を明確にします。
スプリントゴールの目的
スプリントゴールの目的は、スプリントで達成したい共通の目的をチームで共有することです。
具体的には、次のような役割があります。
- スプリントの目的を明確にする
- チームの方向性をそろえる
- 作業の優先順位を判断しやすくする
- スプリント中の意思決定を支援する
- 必要に応じて作業内容を調整しやすくする
- ステークホルダーにスプリントの目的を説明しやすくする
特に重要なのは、「何を作業するか」ではなく、「なぜその作業をするのか」を明確にすることです。
スプリントゴールとスプリントバックログの関係
スプリントゴールとスプリントバックログは密接に関係しています。
スプリントゴールが「今回のスプリントで実現したい目的」だとすると、スプリントバックログは、その目的を達成するために必要な作業を表します。
例えば、
スプリントゴール
「新規ユーザーが商品を簡単に検索できる状態にする」
そのために、
- 検索画面を作成する
- 検索APIを実装する
- 検索結果画面を作成する
- 検索機能をテストする
といった作業が必要になるかもしれません。
この場合、これらの作業はスプリントゴールを達成するための手段です。
つまり、
スプリントゴール → 目的
スプリントバックログ → 目的を達成するための作業
と考えると分かりやすいでしょう。
スプリントゴールとプロダクトゴールの違い
スクラムでは、プロダクトゴールという考え方もあります。
スプリントゴールとプロダクトゴールは、どちらも「何を実現するのか」を示しますが、対象となる期間や目的が異なります。
| 項目 | スプリントゴール | プロダクトゴール |
|---|---|---|
| 対象 | 1つのスプリント | プロダクト全体 |
| 期間 | スプリント単位 | より長期的 |
| 目的 | 今回のスプリントで実現すること | プロダクトが将来的に目指す状態 |
| 関係 | プロダクトゴールに向けた一つのステップ | プロダクトの長期的な方向性 |
イメージとしては、
プロダクトゴール=最終的に目指す目的地
スプリントゴール=目的地に向かうための今回の一歩
と考えると分かりやすいでしょう。
スプリントゴールは作業リストではない
スプリントゴールを理解するときに注意したいのが、作業リストと混同しないことです。
例えば、
- 画面Aを作る
- 画面Bを作る
- APIを3本作る
- テストを実施する
という内容をそのままスプリントゴールにしてしまうと、単なる作業リストになってしまいます。
もちろん、これらの作業はスプリントを進めるうえで必要です。
しかし、スプリントゴールとして考えるのであれば、
「ユーザーが商品を検索し、購入候補を比較できる状態にする」
など、作業の先にある目的を考えることが重要です。
なぜスプリントゴールが必要なのか?
スプリントでは、計画したすべての作業が予定どおり進むとは限りません。
途中で、
- 技術的な問題が発生する
- 想定より作業量が多いことが分かる
- 優先順位を変更する必要が出てくる
- 新しい情報が得られる
- 一部の作業が不要になる
といったことが起こる可能性があります。
このようなとき、スプリントゴールが明確になっていれば、
「この目的を達成するためには、どの作業を優先すべきか?」
と考えることができます。
つまり、スプリントゴールは、スプリント中の意思決定の軸になります。
スプリントゴールの決め方
スプリントゴールを決めるときは、まず「このスプリントでどのような価値を実現したいのか」を考えます。
例えば、ECサイトの開発であれば、
「商品検索機能を完成させる」
という作業ではなく、
「ユーザーが目的の商品を簡単に見つけられるようにする」
という目的に置き換えて考えます。
そのうえで、目的を達成するために必要な作業をスプリントバックログとして整理します。
良いスプリントゴールの特徴
良いスプリントゴールには、いくつかの特徴があります。
目的が明確である
「何のためのスプリントなのか」が分かることが重要です。
チームメンバーがスプリントゴールを見たときに、今回のスプリントで目指す方向が理解できる状態が理想です。
価値につながっている
単なる作業ではなく、ユーザーや顧客、ビジネスにとってどのような価値があるのかを意識します。
チームで共有できる
スプリントゴールは、チームの共通認識として機能する必要があります。
プロダクトオーナーだけが理解していて、デベロッパーが理解していないという状態では、十分に機能しません。
スプリント中の判断に使える
「この作業は本当に必要なのか?」
「どちらの作業を優先すべきなのか?」
と迷ったときに、判断の基準になることが重要です。
スプリントゴールの具体例
例えば、オンラインショップを開発しているとします。
例1:商品検索
スプリントゴール
「ユーザーが目的の商品を簡単に検索できる状態にする」
このゴールを達成するために、
- 検索画面の作成
- 検索APIの実装
- 検索結果画面の作成
- 検索機能のテスト
などの作業を行います。
例2:決済機能
スプリントゴール
「ユーザーが安心してオンラインで商品を購入できる状態にする」
この場合、決済画面の開発だけではなく、エラー処理やセキュリティ、テストなども重要になります。
例3:ユーザー登録
スプリントゴール
「新規ユーザーが簡単にサービスを利用開始できる状態にする」
このゴールを達成するために、ユーザー登録画面、メール認証、エラー処理などの作業を行うことが考えられます。
スプリントゴールと変更
スプリント中に、状況が変化することがあります。
ここで重要なのが、スプリントゴールと作業を同じものとして考えないことです。
スプリントゴールを達成するために必要な作業は、状況に応じて調整されることがあります。
例えば、当初は「検索画面を作る」予定だったとしても、開発途中で別の方法のほうがユーザーにとって価値が高いと分かることがあります。
その場合、スプリントゴールを達成するために必要な作業を見直すことが考えられます。
つまり、
「最初に決めた作業を絶対に全部やり切る」
ことが目的なのではありません。
スプリントゴールを達成することが重要です。
スプリントゴールとスプリントレビュー
スプリントゴールは、スプリントレビューとも関係しています。
スプリントレビューでは、スプリントで作成したインクリメントを確認します。
その際に、
「スプリントゴールに対して、どこまで価値を実現できたのか?」
という視点で成果を確認することができます。
そして、ステークホルダーからフィードバックを受け、今後のプロダクトの方向性を検討します。
このように、スプリントゴールは、スプリントの開始時だけではなく、スプリントの成果を確認するときにも重要な役割を持ちます。
スプリントゴールとレトロスペクティブ
レトロスペクティブでは、チームの仕事の進め方を振り返ります。
例えば、
「スプリントゴールを達成するために、チームとしてうまく協力できたか?」
「何がスプリントゴールの達成を妨げたのか?」
「次のスプリントでは何を改善すればよいか?」
といった観点から振り返ることができます。
そのため、スプリントゴールはチームの改善を考えるうえでも重要な基準になります。
スプリントゴールでよくある失敗
作業項目をそのままゴールにする
「画面を3つ作る」「テストを100件実施する」など、作業量だけをゴールにしてしまうケースです。
作業を完了することが目的になってしまい、ユーザーや顧客にどのような価値を提供するのかが見えにくくなります。
ゴールをたくさん設定する
一つのスプリントに多くの目的を詰め込むと、チームの方向性が分かりにくくなります。
「今回のスプリントで最も重要なことは何か?」を明確にすることが重要です。
ゴールを意識せず作業する
スプリント開始時にゴールを決めても、その後まったく意識されなければ意味がありません。
作業の優先順位を決めるときや、問題が発生したときなどに、スプリントゴールを判断基準として活用することが重要です。
ゴールと成果物を混同する
「検索画面を作る」は成果物や作業に近い表現です。
「ユーザーが目的の商品を簡単に検索できるようにする」のように、その成果物によって実現したい価値まで考えることが重要です。
プロジェクトマネージャにとってのスプリントゴール
プロジェクトマネージャがアジャイルなプロジェクトに関わる場合、スプリントゴールの考え方は非常に参考になります。
プロジェクトでは、どうしても「何をいつまでに作るのか」という作業やスケジュールに目が向きがちです。
しかし、本当に重要なのは、「その作業によって何を実現したいのか」です。
例えば、
「8月末までに検索機能を完成させる」
という目標だけではなく、
「8月末までに、ユーザーが目的の商品を簡単に見つけられる状態を実現する」
と考えることで、作業の優先順位や意思決定の基準が変わってきます。
これはアジャイルに限らず、プロジェクトマネジメント全般で役立つ考え方です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
スプリントゴールを学ぶときは、次の用語と関連付けて整理しておくとよいでしょう。
- スクラム
- アジャイル
- スプリント
- スプリントバックログ
- プロダクトバックログ
- プロダクトゴール
- インクリメント
- プロダクトオーナー
- デイリースクラム
- スプリントレビュー
- レトロスペクティブ
特に、スプリントゴール=スプリントで達成したい目的、スプリントバックログ=その目的を達成するための作業という関係を理解しておくと、スクラム全体を整理しやすくなります。
PM道場のワンポイント
スプリントゴールを考えるときは、「何を作るか」よりも「何を実現したいか」を考えてみましょう。
例えば、
「ログイン画面を作る」
という作業を考えたとします。
しかし、その先には、
「ユーザーが安全かつ簡単にサービスを利用開始できるようにする」
という目的があるかもしれません。
この目的が明確になれば、ログイン画面だけではなく、認証、エラー処理、セキュリティ、ユーザー体験など、必要なことが見えてきます。
そして、スプリント中に予定外の問題が発生したときにも、
「スプリントゴールを達成するために、何を優先すべきか?」
という基準で判断できます。
つまり、スプリントゴールは単なる「目標」ではありません。
チームが同じ方向を向き、スプリント中の判断を行うための軸なのです。
「予定していた作業を全部終わらせる」ことだけに集中するのではなく、
「このスプリントで、どんな価値を生み出したいのか?」
を常に意識する。
これが、スプリントゴールを活用するうえで大切な考え方です。
関連用語
- スクラム
- アジャイル
- スプリント
- プロダクトゴール
- プロダクトバックログ
- スプリントバックログ
- インクリメント
- プロダクトオーナー
- スクラムマスター
- デイリースクラム
- スプリントレビュー
- レトロスペクティブ
- ユーザーストーリー
まとめ
スプリントゴールとは、スプリントで達成したい目的や価値を表したものです。
単なる作業リストではなく、「なぜこのスプリントを行うのか」を明確にすることが重要です。
スプリントゴールが明確であれば、
- チームの方向性をそろえられる
- 作業の優先順位を判断しやすくなる
- スプリント中の意思決定に活用できる
- スプリントレビューで成果を評価しやすくなる
- プロダクトの価値に意識を向けられる
といったメリットがあります。
また、スプリントゴールとスプリントバックログは、
スプリントゴール=目的
スプリントバックログ=目的を達成するための作業
という関係で捉えると分かりやすくなります。
アジャイルでは、最初に決めた作業をすべて完了することだけが重要なのではありません。
短い期間で価値を生み出し、学習し、その結果を次の行動に反映することが重要です。
そのための軸となるのがスプリントゴールです。
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- プロダクトバックログとは?
- プロダクトゴールとは?
- スプリントレビューとは?
- レトロスペクティブとは?
- デイリースクラムとは?
- プロダクトオーナーとは?
- スクラムマスターとは?
よくある質問(FAQ)
Q. スプリントゴールとは何ですか?
A. スプリントで達成したい目的や価値を表したものです。「このスプリントでは何を実現するのか」をチームで共有するために使用します。
Q. スプリントゴールとスプリントバックログの違いは何ですか?
A. スプリントゴールはスプリントで達成したい目的であり、スプリントバックログは、その目的を達成するために必要な作業を表します。
Q. スプリントゴールは作業項目のことですか?
A. いいえ。作業項目そのものではありません。「何を作るか」だけではなく、「その作業によって何を実現したいのか」という目的を表します。
Q. スプリントゴールは変更できますか?
A. スプリントゴールはスプリントにおける重要な目的です。スプリント中に状況が変化した場合でも、まずゴールを達成するためにスプリントバックログなどの作業を調整するという考え方が重要です。
Q. スプリントゴールとプロダクトゴールの違いは何ですか?
A. プロダクトゴールはプロダクトが目指す長期的な目的であり、スプリントゴールは、その目的に向けて今回のスプリントで達成したい具体的な目的です。
Q. 良いスプリントゴールとはどのようなものですか?
A. チームが目的を理解でき、スプリント中の優先順位や意思決定の基準として活用できるものです。単なる作業リストではなく、顧客やユーザーに提供する価値を意識すると分かりやすくなります。
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