プロジェクトでは、さまざまな人が関わり、多くの情報をやり取りします。
そのため、
- 誰に情報を伝えるのか
- 何を伝えるのか
- いつ伝えるのか
- どのような方法で伝えるのか
- 問題が発生したとき、誰に報告するのか
といったことを事前に決めておくことが重要です。
これらのコミュニケーションの方針や方法を整理したものが、コミュニケーションマネジメント計画書です。
コミュニケーションマネジメント計画書は、単なる「連絡方法の一覧」ではありません。
プロジェクトに必要な情報を、必要な人へ、必要なタイミングで届けるための仕組みを設計するための文書です。
一言でいうと
コミュニケーションマネジメント計画書とは、プロジェクトにおける情報の「誰に・何を・いつ・どのように伝えるか」を定めた計画書です。
例えば、
- 週次の進捗報告は誰に行うのか
- 課題が発生した場合は誰に報告するのか
- チーム内の情報共有には何を使うのか
- 会議の議事録をどこに保管するのか
- 緊急時にはどのように連絡するのか
などをあらかじめ決めておきます。
これによって、「誰に報告すればよいのか分からない」「必要な情報が共有されていない」といったコミュニケーション上の問題を防ぎやすくなります。
コミュニケーションマネジメント計画書とは
プロジェクトでは、プロジェクトマネージャ、チームメンバー、顧客、スポンサー、経営層、外部ベンダーなど、多くのステークホルダーが関わります。
それぞれが必要としている情報は異なります。
例えば、プロジェクトマネージャは詳細な課題やリスクを把握する必要がありますが、経営層はプロジェクト全体の進捗や重要な問題を把握できればよい場合があります。
そのため、全員に同じ情報を同じ方法で伝えるのではなく、相手に応じてコミュニケーションを設計する必要があります。
コミュニケーションマネジメント計画書は、そのための基本的なルールを整理したものです。
なぜコミュニケーションマネジメント計画書が必要なのか
情報共有の漏れを防ぐ
プロジェクトで発生する問題の中には、「問題そのもの」ではなく、必要な情報が必要な人に伝わっていなかったことが原因となっているものがあります。
例えば、進捗が遅れているにもかかわらず、プロジェクトマネージャへの報告が遅れたとします。
その結果、対応が後手に回り、納期に間に合わなくなる可能性があります。
あらかじめ「どのような状況になったら誰に報告するか」を決めておけば、このような情報共有漏れを防ぎやすくなります。
コミュニケーション方法を標準化する
人によって情報共有の方法が違うと、プロジェクト内で混乱が生じます。
例えば、あるメンバーはメールで報告し、別のメンバーはチャットで報告し、別のメンバーは口頭で報告するといった状態です。
重要な情報がどこにあるのか分からなくなる可能性があります。
そこで、プロジェクトとして基本的な共有方法を決めておくことが重要です。
緊急時の連絡方法を明確にする
通常の進捗報告だけではなく、重大な問題や障害が発生した場合の連絡方法も重要です。
例えば、
- 通常の課題:週次会議で報告
- 重要な課題:当日中にプロジェクトマネージャへ報告
- 重大な障害:直ちに責任者へエスカレーション
というように、重要度に応じた連絡方法を決めておくことができます。
コミュニケーションマネジメント計画書に記載する内容
プロジェクトによって必要な内容は異なりますが、一般的には次のような項目を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 誰に情報を伝えるのか |
| 情報 | 何を伝えるのか |
| 目的 | なぜ情報を伝えるのか |
| タイミング | いつ伝えるのか |
| 頻度 | どのくらいの頻度で伝えるのか |
| 方法 | 会議、メール、チャット、報告書など、どの方法で伝えるのか |
| 責任者 | 誰が情報を発信するのか |
| 保管場所 | 情報や記録をどこに保存するのか |
| エスカレーション | 問題が発生した場合、誰にどのように報告するのか |
すべてを細かく記載する必要があるわけではありません。
プロジェクトの規模や複雑さに応じて、必要なレベルまで詳細化することが重要です。
コミュニケーションマネジメント計画書の作り方
1.ステークホルダーを整理する
まず、プロジェクトに関係する人を整理します。
例えば、
- プロジェクトスポンサー
- プロジェクトマネージャ
- プロジェクトチーム
- 顧客
- ユーザー
- PMO
- 外部ベンダー
などです。
重要なのは、単純に名前を並べるだけではなく、それぞれがどのような情報を必要としているのかを考えることです。
2.必要な情報を整理する
次に、それぞれのステークホルダーが必要とする情報を整理します。
例えば、プロジェクトスポンサーには、
- 全体進捗
- 重要なリスク
- 重大な課題
- 予算状況
などが必要になるかもしれません。
一方、プロジェクトチームには、
- 作業状況
- 課題
- 変更事項
- 今後の予定
など、より具体的な情報が必要になります。
3.共有するタイミングを決める
情報を「いつ」共有するのかを決めます。
例えば、
- 毎日の進捗:デイリースクラム
- 週次進捗:週次進捗会議
- 月次報告:ステアリングコミッティ
- 重大な問題:発生時に即時報告
などです。
すべての情報を定期的に共有する必要はありません。
情報の性質に応じて、適切なタイミングを設定することが重要です。
4.共有方法を決める
次に、どのような方法で情報を共有するのかを決めます。
例えば、
- 定例会議
- メール
- チャット
- 進捗報告書
- ダッシュボード
- プロジェクト管理ツール
などがあります。
ここで重要なのは、共有方法を増やしすぎないことです。
情報共有の方法が多すぎると、「どこを見れば最新情報が分かるのか」が分からなくなってしまいます。
プロジェクトに必要な共有方法を整理し、できるだけシンプルな仕組みにすることが重要です。
5.エスカレーションルールを決める
通常の情報共有だけではなく、問題が発生した場合のエスカレーションルールも決めます。
例えば、
| レベル | 状況 | 対応 |
|---|---|---|
| レベル1 | チーム内で解決可能 | チーム内で対応 |
| レベル2 | プロジェクトマネージャの判断が必要 | プロジェクトマネージャへ報告 |
| レベル3 | 予算・納期・契約などへの重大な影響 | スポンサーや責任者へエスカレーション |
このように、どのような問題を、どのレベルで、誰に報告するのかをあらかじめ決めておくことで、問題を抱え込むことを防ぎやすくなります。
6.計画を関係者と合意する
コミュニケーションマネジメント計画書は、プロジェクトマネージャが一人で決めるものではありません。
必要な関係者と確認し、実際に運用できる内容になっているかを確認します。
特に、報告を受ける側が「その情報は必要ない」と考えていたり、報告する側の負担が大きすぎたりすると、計画どおりに運用できません。
実際に利用する人が無理なく運用できることが重要です。
コミュニケーションマネジメント計画書の例
例えば、システム開発プロジェクトであれば、次のような計画を作ることができます。
| 情報 | 対象者 | タイミング | 方法 | 発信者 |
|---|---|---|---|---|
| 日次進捗 | プロジェクトチーム | 毎日 | デイリーミーティング | 各メンバー |
| 週次進捗 | PM・顧客 | 毎週 | 進捗報告会 | PM |
| 課題一覧 | PM・チーム | 更新時 | 課題管理表 | 担当者 |
| 重要リスク | PM・スポンサー | 定例会議・発生時 | 報告書・会議 | PM |
| 重大障害 | 責任者・顧客 | 発生時 | 緊急連絡 | PM・担当者 |
このように整理しておくことで、情報共有のルールをプロジェクトメンバー全員で共有できます。
プロジェクトの規模によって計画を変える
コミュニケーションマネジメント計画書は、プロジェクトの規模によって詳細度を変える必要があります。
例えば、5人程度の小規模なプロジェクトであれば、細かいコミュニケーション計画書を作成する必要がない場合もあります。
一方、数百人が関係する大規模プロジェクトでは、
- 組織ごとの情報共有方法
- 会議体
- 報告ルート
- 承認ルート
- エスカレーションルール
- 情報の保管場所
などを明確にする必要があります。
つまり、「計画書を作ること」そのものが目的ではなく、プロジェクトに必要なコミュニケーションを適切に設計することが目的です。
コミュニケーションマネジメント計画書を作るときの注意点
情報共有の方法を増やしすぎない
「情報共有が重要だから」といって、メール、チャット、会議、掲示板、複数の管理ツールなどを大量に使うと、かえって情報が分散します。
重要なのは、共有方法を必要最小限に整理することです。
全員にすべての情報を共有しない
すべての情報を全員に共有すると、情報量が多くなり、本当に重要な情報が埋もれてしまいます。
「誰が何を知る必要があるのか」を考えて、情報を適切な相手に届けることが重要です。
計画書を作って終わりにしない
プロジェクトが進むと、ステークホルダーやチーム構成、プロジェクトの状況が変わることがあります。
そのため、コミュニケーションマネジメント計画書も必要に応じて見直します。
報告しやすい仕組みにする
問題が発生したときに、「原因を完全に分析してから報告しよう」と考えてしまうと、報告が遅れる可能性があります。
重要なのは、問題だと思った時点で早めに報告できる仕組みを作ることです。
例えば、
「問題を認識した段階で一次報告する。原因分析や対策はその後に行う」
というルールを決めておくこともできます。
このような仕組みがあると、プロジェクトマネージャやメンバーが問題を抱え込むことを防ぎやすくなります。
コミュニケーションマネジメント計画書とステークホルダー
コミュニケーションマネジメント計画書を作成する際には、ステークホルダーごとに必要な情報が異なることを意識する必要があります。
例えば、
| ステークホルダー | 必要な情報の例 |
|---|---|
| スポンサー | 全体進捗、重要課題、リスク、予算 |
| 顧客 | 進捗、成果物、変更、課題 |
| プロジェクトチーム | 作業、課題、変更、スケジュール |
| 経営層 | 重要な成果、重大リスク、経営判断が必要な事項 |
| ベンダー | 担当範囲、スケジュール、課題、変更 |
このように、ステークホルダーの関心や役割を踏まえてコミュニケーションを設計します。
コミュニケーションマネジメント計画書とエスカレーション
プロジェクトのコミュニケーションで特に重要なのがエスカレーションです。
エスカレーションとは、プロジェクトチームだけでは解決できない問題や、上位の判断が必要な事項を、適切な責任者へ報告・相談することです。
コミュニケーションマネジメント計画書にエスカレーションルールを含めることで、
- どのような状態になったら報告するのか
- 誰に報告するのか
- どの方法で報告するのか
- どの程度の緊急性で報告するのか
を明確にできます。
これにより、「誰にも相談せず、問題を抱えたまま時間が経過する」という状況を防ぎやすくなります。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
コミュニケーションマネジメント計画書については、単に「情報共有の計画書」と覚えるだけではなく、誰に・何を・いつ・どのように伝えるのかを設計するものと理解しておきましょう。
特に重要なのは、
- ステークホルダーごとに必要な情報を整理する
- 情報共有の方法を決める
- 情報共有のタイミングを決める
- 情報の発信者を決める
- 情報の保管場所を決める
- エスカレーションルールを決める
- プロジェクトの規模に応じて詳細度を調整する
という点です。
また、コミュニケーションマネジメント計画書は、作成すること自体が目的ではありません。
プロジェクトに必要な情報が、必要な人に、必要なタイミングで届く状態を作ることが目的です。
PM道場のワンポイント
コミュニケーションマネジメント計画書は、「情報共有のルール」ではなく「情報共有の仕組み」を設計するためのものです。
プロジェクトで問題が起きたとき、原因を分析すると「情報共有が遅れていた」「必要な人に伝わっていなかった」というケースがあります。
しかし、これを単純に「もっとコミュニケーションを取ろう」としてしまうと、会議やメールが増えるだけになってしまいます。
重要なのは、
「誰が、どの情報を、いつまでに、誰へ伝えるのか」
を明確にすることです。
そして、もう一つ重要なのが、問題を早く報告できる仕組みです。
私は、問題を発見したときに、最初から原因分析や対策まで完成させて報告する必要はないと考えています。
「問題だと思いました。まず報告します。原因や対策はこれから分析します」
という一次報告ができる仕組みを作っておけば、問題を抱え込むことを防げます。
そのためには、コミュニケーションマネジメント計画書の中で、エスカレーションの基準とルートをあらかじめ決めておくことが有効です。
コミュニケーション能力が高い人に頼るのではなく、誰でも適切に情報共有できる仕組みを作る。
これが、プロジェクトマネージャがコミュニケーションマネジメント計画書を作る大きな意味の一つです。
関連用語
- コミュニケーションマネジメント
- ステークホルダーエンゲージメント
- ステークホルダー
- エスカレーション
- キックオフミーティング
- ファシリテーション
- ネゴシエーション
- 合意形成
- 意思決定
- リスク
- 課題
- デイリースクラム
まとめ
コミュニケーションマネジメント計画書とは、プロジェクトにおいて「誰に・何を・いつ・どのように伝えるのか」を定める計画書です。
その目的は、単純に情報共有のルールを作ることではありません。
必要な情報を、必要な人へ、必要なタイミングで届ける仕組みを作ることです。
作成するときは、
- ステークホルダーを整理する
- 必要な情報を整理する
- 共有するタイミングを決める
- 共有方法を決める
- 情報の保管場所を決める
- エスカレーションルールを決める
という流れで考えると分かりやすくなります。
また、プロジェクトの規模によって必要な詳細度は異なります。
小規模なプロジェクトであれば簡単なルールで十分な場合もありますし、大規模なプロジェクトでは組織ごとの報告ルートや会議体、エスカレーションルールなどを詳細に定める必要があります。
そして、コミュニケーションマネジメントで最も重要なのは、コミュニケーション能力の高い人に頼ることではなく、誰でも適切に情報を共有できる仕組みを作ることです。
特に、問題が発生したときに早期にエスカレーションできる仕組みを作っておくことは、プロジェクトのリスクを小さくするうえで非常に重要です。
「誰に、何を、いつ、どのように伝えるか」を事前に設計する。
これがコミュニケーションマネジメント計画書の基本です。
関連記事
- コミュニケーションマネジメントとは?
- ステークホルダーエンゲージメントとは?
- エスカレーションとは?
- キックオフミーティングとは?
- ファシリテーションとは?
- ネゴシエーションとは?
- 合意形成とは?
- 意思決定とは?
- リスクとは?
- 課題とは?
- デイリースクラムとは?
よくある質問(FAQ)
Q. コミュニケーションマネジメント計画書とは何ですか?
A. プロジェクトにおいて、誰に、何を、いつ、どのような方法で伝えるのかを整理した計画書です。必要な情報を必要な人へ届けるためのコミュニケーションの仕組みを設計します。
Q. コミュニケーションマネジメント計画書には何を書きますか?
A. 対象者、情報、目的、タイミング、頻度、共有方法、発信者、情報の保管場所、エスカレーションルールなどを記載します。ただし、プロジェクトの規模や特性に応じて必要な項目や詳細度を調整します。
Q. コミュニケーションマネジメント計画書は必ず作成する必要がありますか?
A. 重要なのは計画書という形式そのものではなく、プロジェクトに必要なコミュニケーションを適切に設計することです。小規模なプロジェクトでは簡単なルールで十分な場合もあります。
Q. コミュニケーションマネジメント計画書とコミュニケーションマネジメントの違いは何ですか?
A. コミュニケーションマネジメントは、プロジェクトにおける情報の生成、収集、配布、保管などを適切に管理する活動です。コミュニケーションマネジメント計画書は、その活動をどのように行うのかを計画・整理したものです。
Q. コミュニケーションマネジメント計画書にエスカレーションを含めるべきですか?
A. はい。問題が発生した場合に、誰へ、どのような基準で、どの方法で報告するのかをあらかじめ決めておくことで、問題の抱え込みや報告遅延を防ぎやすくなります。
Q. コミュニケーション方法は多いほど良いですか?
A. 必ずしもそうではありません。方法が増えすぎると情報が分散し、どこを確認すればよいのか分からなくなる可能性があります。プロジェクトに必要な方法を整理し、できるだけシンプルな仕組みにすることが重要です。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
実際に合格した経験をもとに、勉強方法やおすすめ参考書、最難関といわれる午後Ⅱ論文の対策方法を詳しく解説しています。
「これから勉強を始めたい」「効率よく合格したい」という方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

