「知識エリアとは何だろう?」
「プロセス群とは何が違うのだろう?」
プロジェクトマネジメントを学んでいると、知識エリア(Knowledge Areas)という言葉が登場します。
知識エリアとは、プロジェクトマネジメントのプロセスを、管理する対象や専門領域によって分類したものです。
PMBOK®第6版では、プロジェクトマネジメントを次の10の知識エリアに分類していました。
- プロジェクト統合マネジメント
- プロジェクト・スコープ・マネジメント
- プロジェクト・スケジュール・マネジメント
- プロジェクト・コスト・マネジメント
- プロジェクト品質マネジメント
- プロジェクト資源マネジメント
- プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
- プロジェクト・リスク・マネジメント
- プロジェクト調達マネジメント
- プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント
この記事では、10の知識エリアの意味や役割、プロセス群との違い、現在のPMBOK®との関係について解説します。
一言でいうと
知識エリアとは、「プロジェクトマネジメントの何を管理するのか」という専門領域ごとにプロセスを分類したものです。
例えば、スケジュールについて管理するプロセスをまとめたものが「プロジェクト・スケジュール・マネジメント」です。
知識エリアとは
プロジェクトには、さまざまな管理対象があります。
例えば、
- プロジェクト全体をどう統合するか
- 何を作るのか
- いつまでに作るのか
- いくらかかるのか
- どの程度の品質にするのか
- 誰が作業するのか
- どのように情報を共有するのか
- どのようなリスクがあるのか
- 外部の会社から何を調達するのか
- 関係者とどのように関わるのか
これらの管理対象を整理したものが知識エリアです。
つまり、知識エリアは「プロジェクトマネージャが何について管理する必要があるのか」を整理するための分類と考えると分かりやすいでしょう。
PMBOK®第6版の10の知識エリア
| 知識エリア | 簡単な意味 |
|---|---|
| 統合マネジメント | プロジェクト全体を調整・統合する |
| スコープ・マネジメント | プロジェクトで実施する範囲を管理する |
| スケジュール・マネジメント | 作業の順序や期限などを管理する |
| コスト・マネジメント | プロジェクトの費用を管理する |
| 品質マネジメント | 必要な品質を確保する |
| 資源マネジメント | 人や物などの資源を管理する |
| コミュニケーション・マネジメント | 必要な情報を適切に共有する |
| リスク・マネジメント | リスクを特定・分析し、対応する |
| 調達マネジメント | 外部から製品やサービスなどを調達する |
| ステークホルダー・マネジメント | プロジェクト関係者との関係を管理する |
1.プロジェクト統合マネジメント
プロジェクト統合マネジメントは、プロジェクト全体をまとめ、各活動を統合する知識エリアです。
プロジェクトでは、スコープ、スケジュール、コスト、品質、リスクなどを個別に管理するだけでは不十分です。
例えば、スコープを変更するとスケジュールやコストにも影響します。
このような各要素の関係を考慮しながら、プロジェクト全体として整合性を取ることが統合マネジメントの重要な役割です。
2.プロジェクト・スコープ・マネジメント
スコープ・マネジメントは、プロジェクトで実施する作業の範囲を管理する知識エリアです。
「何を作るのか」「何を作らないのか」を明確にし、プロジェクトの成果物と作業範囲を管理します。
代表的な考え方として、要求事項、WBS、スコープ・ベースラインなどがあります。
スコープクリープを防ぐためにも重要な知識エリアです。
3.プロジェクト・スケジュール・マネジメント
スケジュール・マネジメントは、プロジェクトの作業をいつ実施するのかを管理する知識エリアです。
作業を特定し、順序を決め、期間を見積もり、スケジュールを作成します。
プロジェクト実行中には、実際の進捗を確認し、遅延が発生していれば必要な対応を検討します。
4.プロジェクト・コスト・マネジメント
コスト・マネジメントは、プロジェクトに必要な費用を見積もり、予算を設定し、管理する知識エリアです。
代表的な考え方として、コスト見積もり、予算、コスト・ベースラインなどがあります。
また、EVM(アーンド・バリュー・マネジメント)を利用して、コストやスケジュールのパフォーマンスを分析することもあります。
5.プロジェクト品質マネジメント
品質マネジメントは、プロジェクトや成果物に求められる品質を確保するための知識エリアです。
品質を計画し、品質保証を行い、品質を管理します。
レビュー、テスト、品質メトリクス、不具合管理など、さまざまな活動と関係します。
「完成してから品質を確認する」だけではなく、プロセスの中で品質を作り込むことが重要です。
6.プロジェクト資源マネジメント
資源マネジメントは、プロジェクトに必要な人や物などの資源を管理する知識エリアです。
特に人的資源については、チームの育成、役割分担、チームマネジメントなどが重要になります。
プロジェクトでは「誰が何をするのか」を明確にすることが、円滑な実行につながります。
7.プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
コミュニケーション・マネジメントは、プロジェクトに必要な情報を、適切な相手に、適切なタイミングと方法で伝えるための知識エリアです。
プロジェクトでは、情報が存在するだけでは十分ではありません。
必要な人が必要な情報を受け取り、理解できる状態にすることが重要です。
コミュニケーション計画や情報配布、コミュニケーションの監視などが関係します。
8.プロジェクト・リスク・マネジメント
リスク・マネジメントは、プロジェクトに影響を与える可能性のある不確実性を管理する知識エリアです。
リスクを特定し、定性的・定量的に分析し、対応策を検討します。
また、プロジェクト実行中にはリスクを監視し、新たなリスクが発生していないか確認します。
リスク登録簿、定性的リスク分析、定量的リスク分析、リスク対応、コンティンジェンシープランなど、多くのプロジェクト管理活動と関係します。
9.プロジェクト調達マネジメント
調達マネジメントは、プロジェクトに必要な製品やサービスなどを外部から調達するための知識エリアです。
例えば、外部のベンダーにシステム開発を依頼する場合などが該当します。
RFP、契約、ベンダー選定、契約後のベンダーマネジメントなどと関係します。
10.プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント
ステークホルダー・マネジメントは、プロジェクトに関係するステークホルダーを特定し、適切に関与してもらうための知識エリアです。
ステークホルダーには、プロジェクトスポンサー、顧客、プロジェクトメンバー、経営層、ユーザー、ベンダーなど、さまざまな関係者が含まれます。
それぞれの期待や関心を理解し、適切にエンゲージメントを行うことが重要です。
知識エリアとプロセス群の違い
知識エリアとプロセス群は、どちらもPMBOK®第6版までのプロジェクトマネジメントを理解するうえで重要な分類です。
| 項目 | 知識エリア | プロセス群 |
|---|---|---|
| 分類の基準 | 何を管理するか | 何のために行うプロセスか |
| 例 | スコープ、コスト、リスク | 立上げ、計画、実行 |
| 数 | 10 | 5 |
例えば「リスク・マネジメント」は知識エリアです。
一方、リスクに関するプロセスが「計画プロセス群」や「監視・コントロール・プロセス群」に分類されることがあります。
つまり、
知識エリア=「何について管理するのか」
プロセス群=「そのプロセスはどのような目的で行うのか」
と整理すると分かりやすいでしょう。
知識エリアとプロセス群は組み合わせて考える
知識エリアとプロセス群は、それぞれ独立して覚えるよりも、組み合わせて理解すると分かりやすくなります。
例えば、リスク・マネジメントという知識エリアには、リスクを計画するプロセス、特定するプロセス、分析するプロセス、対応するプロセス、監視するプロセスなどがあります。
このように、
「リスクについて、プロジェクトのどの段階・目的で、どのような活動を行うのか」
という視点で整理すると、プロセス全体を理解しやすくなります。
第7版以降との違い
知識エリアについても、PMBOK®第7版では大きな変更がありました。
第6版までは、10の知識エリアと5つのプロセス群によってプロジェクトマネジメントを体系的に整理していました。
一方、第7版では、従来のプロセス中心の構成から、12の原則と8つのプロジェクト・パフォーマンス領域を中心とした構成へ変更されています。
そのため、現在のPMBOK®を学ぶ場合には、10の知識エリアを「最新のPMBOK®の中心的な構成」として扱わないことが重要です。
ただし、スコープ、スケジュール、コスト、品質、リスクなどの考え方自体が不要になったわけではありません。
これらは現在のプロジェクトマネジメントにおいても重要な管理対象です。
知識エリアを覚えるポイント
10の知識エリアは、単純に名称だけを暗記するよりも、「プロジェクトで何を管理するのか」と関連付けて覚えると理解しやすくなります。
- 統合:プロジェクト全体をまとめる
- スコープ:何を作るのか
- スケジュール:いつ作るのか
- コスト:いくらで作るのか
- 品質:どの品質で作るのか
- 資源:誰・何を使って作るのか
- コミュニケーション:どう情報を共有するのか
- リスク:何が起こる可能性があるのか
- 調達:外部から何を調達するのか
- ステークホルダー:誰と関係するのか
実務ではこんな場面で活用される
例えば、新しいシステム開発プロジェクトを担当するとします。
まず、プロジェクト全体を統合しながら、必要な機能をスコープとして整理します。
その後、スケジュールとコストを計画し、必要なメンバーや設備などの資源を確保します。
品質基準を決め、関係者とのコミュニケーション方法を整理し、リスクを特定します。
外部ベンダーが必要であれば調達を行い、顧客や経営層などのステークホルダーとの関係も管理します。
このように考えると、10の知識エリアは単なる試験用の分類ではなく、プロジェクトを多面的に管理するためのチェックリストとしても利用できます。
よくある勘違い
知識エリアはプロジェクトの順番ではない
10の知識エリアは、プロジェクトを「1番から10番まで順番に実施する」というものではありません。
それぞれの知識エリアはプロジェクトのさまざまな場面で関係します。
すべてを個別に管理すればよいわけではない
プロジェクトでは、各知識エリアが相互に影響します。
例えば、スコープを変更すると、スケジュールやコスト、品質、リスクなどにも影響する可能性があります。
そのため、各知識エリアを個別に見るだけでなく、プロジェクト全体を統合して考えることが重要です。
第7版でも10の知識エリアがそのまま使われているわけではない
第7版ではPMBOK®の構成が大きく変更されています。
したがって、試験対策や学習では、どの版を前提としているのかを確認することが重要です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
プロジェクトマネージャ試験でPMBOK®の考え方を理解する際には、10の知識エリアを単なる暗記項目として覚えるのではなく、それぞれが何を管理する領域なのかを理解することが重要です。
特に、次の関係を整理しておくとよいでしょう。
- スコープ=プロジェクトで何を実施するか
- スケジュール=いつ実施するか
- コスト=いくらかかるか
- 品質=どのような品質を確保するか
- リスク=不確実性をどう管理するか
- ステークホルダー=関係者をどうエンゲージするか
- 統合=それらをプロジェクト全体としてどう調整するか
特に重要なのは、「知識エリアはプロジェクトマネジメントの何を管理するのかを分類したもの」という点です。
PM道場のワンポイント
知識エリアは「プロジェクトマネージャの仕事のチェックリスト」と考えると理解しやすくなります。
プロジェクトを担当したときに、「スコープは大丈夫か?」「スケジュールは?」「コストは?」「品質は?」「リスクは?」と確認していけば、プロジェクトを多面的に見ることができます。
ただし、ここで注意したいのが統合マネジメントです。
各知識エリアを個別に管理するだけでは、プロジェクト全体として最適な判断になるとは限りません。
例えば、スコープを増やせば顧客満足度が上がるかもしれませんが、スケジュールが遅れたり、コストが増えたりする可能性があります。
そのため、プロジェクトマネージャには、各知識エリアを個別に管理するだけでなく、全体への影響を考えて調整する力が求められます。
「何を管理するか」が知識エリア、「それらをどうつなげるか」が統合マネジメント。
この視点を持つと、知識エリアを単なる暗記ではなく、実務で使える知識として理解できます。
関連用語
- PMBOK®ガイド
- プロセス群
- プロジェクト統合マネジメント
- スコープ・マネジメント
- スケジュール・マネジメント
- コスト・マネジメント
- 品質マネジメント
- 資源マネジメント
- コミュニケーション・マネジメント
- リスク・マネジメント
- 調達マネジメント
- ステークホルダー・マネジメント
まとめ
知識エリアとは、プロジェクトマネジメントのプロセスを、管理する対象や専門領域によって分類したものです。
PMBOK®第6版では、次の10の知識エリアに分類されていました。
- プロジェクト統合マネジメント
- プロジェクト・スコープ・マネジメント
- プロジェクト・スケジュール・マネジメント
- プロジェクト・コスト・マネジメント
- プロジェクト品質マネジメント
- プロジェクト資源マネジメント
- プロジェクト・コミュニケーション・マネジメント
- プロジェクト・リスク・マネジメント
- プロジェクト調達マネジメント
- プロジェクト・ステークホルダー・マネジメント
知識エリアを理解すると、プロジェクトマネージャがプロジェクトのどのような領域を管理する必要があるのかを体系的に整理できます。
また、プロセス群と組み合わせて考えることで、「何について」「どのような目的で」管理するのかを整理できます。
なお、PMBOK®第7版では構成が大きく変更されているため、10の知識エリアは主に第6版までのプロセス中心の考え方として理解しておくとよいでしょう。
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- プロジェクト統合マネジメントとは?
- スコープとは?
- スケジュールとは?
- コストとは?
- 品質マネジメントとは?
- リスクマネジメントとは?
- コミュニケーションマネジメントとは?
- ステークホルダーエンゲージメントとは?
よくある質問(FAQ)
Q. 知識エリアとは何ですか?
A. プロジェクトマネジメントのプロセスを、何を管理するのかという専門領域によって分類したものです。PMBOK®第6版では10の知識エリアが定義されていました。
Q. PMBOK®第6版の10の知識エリアとは何ですか?
A. 統合、スコープ、スケジュール、コスト、品質、資源、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダーの10の知識エリアです。
Q. 知識エリアとプロセス群の違いは何ですか?
A. 知識エリアは「何について管理するのか」による分類で、プロセス群は「どのような目的のプロセスなのか」による分類です。
Q. 知識エリアは現在のPMBOK®でも使われていますか?
A. PMBOK®第7版では、従来の10の知識エリアを中心とする構成から、12の原則と8つのプロジェクト・パフォーマンス領域を中心とする構成へ変更されています。ただし、スコープ、スケジュール、コスト、品質、リスクなどの管理対象そのものが重要でなくなったわけではありません。
Q. 知識エリアは順番に覚える必要がありますか?
A. 知識エリアはプロジェクトの実施順序ではありません。それぞれが相互に関係しながらプロジェクト全体を管理するため、何を管理する領域なのかを理解することが重要です。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
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