「プロジェクトは予定どおり進んでいるけれど、品質に問題がある……」
プロジェクトマネージャとして仕事をしていると、そんな状況に遭遇することがあります。
プロジェクトでは、納期やコストだけではなく、成果物が要求された品質を満たしているかどうかも重要です。
どれだけ早く、安くプロジェクトを完了できても、成果物に重大な問題があれば、プロジェクトが成功したとは言いにくいでしょう。
そこで重要になるのが品質マネジメントです。
一言でいうと
品質マネジメントとは、プロジェクトや成果物に求められる品質を明確にし、その品質を実現・維持するために計画、実施、評価、改善を行うことです。
品質マネジメントは、単純に「完成した成果物を検査すること」ではありません。
プロジェクトの最初に、どのような品質が求められているのかを明確にし、その品質を実現できるようにプロセスや方法を計画します。
そしてプロジェクトの実行中には、計画どおりに品質を確保できているかを確認し、問題があれば原因を分析して改善します。
つまり、
品質を計画する → 品質を確保する → 品質を確認する → 改善する
という活動を継続的に行うことが品質マネジメントです。
品質マネジメントの目的
品質マネジメントの目的は、単純に「不具合をゼロにすること」ではありません。
顧客やステークホルダーが求める品質を満たした成果物を提供し、プロジェクトの目的を達成することが重要です。
具体的には、次のような目的があります。
- 求められる品質を明確にする
- 品質の評価基準を決める
- 品質を確保するためのプロセスを整える
- 品質上の問題を早期に発見する
- 不具合や問題の原因を分析する
- 再発を防止する
- 成果物の品質を継続的に改善する
品質と「良いもの」は同じではない
品質マネジメントを考えるときに注意したいのが、「品質が高いこと」と「必要以上に高性能であること」は同じではないという点です。
例えば、顧客が求めている性能が「処理時間3秒以内」だったとします。
これに対して、1秒で処理できるシステムを作ったとしても、それだけで必ずしも価値が高まるとは限りません。
そのために多くのコストや時間をかけてしまえば、プロジェクト全体としては非効率になる可能性があります。
重要なのは、プロジェクトの目的や要求に対して適切な品質を実現することです。
品質マネジメントの基本的な流れ
品質マネジメントは、大きく次のような流れで考えると分かりやすいでしょう。
- 品質を計画する
- 品質を確保するための活動を行う
- 品質をコントロールする
- 問題を分析し、改善する
それぞれについて見ていきましょう。
1.品質を計画する
まず、プロジェクトでどのような品質が求められているのかを明確にします。
例えばシステム開発であれば、
- 性能
- 可用性
- セキュリティ
- 信頼性
- 操作性
- 保守性
などについて、どの程度の水準が求められるのかを決めます。
さらに、
- どのように品質を測定するのか
- どのタイミングで確認するのか
- 誰が確認するのか
- どの程度の不具合を許容するのか
なども整理します。
ここで重要なのは、「品質を頑張って確保する」という曖昧な目標にしないことです。
可能な限り、具体的な基準として定義することが重要です。
2.品質を確保するための活動を行う
品質を計画したら、その品質を実現するための活動を行います。
例えば、
- 標準的な開発プロセスを整備する
- レビューを実施する
- チェックリストを利用する
- メンバーへの教育を行う
- 作業手順を標準化する
- 品質上の問題が発生しないようプロセスを改善する
などがあります。
品質を高めるためには、完成した成果物を検査するだけではなく、そもそも問題が発生しにくいプロセスを作ることが重要です。
3.品質をコントロールする
プロジェクトの実行中には、成果物が品質基準を満たしているかを確認します。
例えば、
- レビュー結果を確認する
- テスト結果を確認する
- 不具合件数を確認する
- 不具合の傾向を分析する
- 品質基準との適合状況を確認する
といった活動があります。
問題が見つかった場合には、原因を確認し、必要な是正措置を行います。
品質保証と品質コントロールの違い
品質マネジメントを理解するときに混乱しやすいのが、品質保証と品質コントロールの違いです。
品質保証とは?
品質保証とは、適切な品質を実現できるように、プロセスや活動を評価・改善することと考えると分かりやすいでしょう。
例えば、
- 開発プロセスを評価する
- 標準手順が守られているか確認する
- 品質上の問題が発生していないか確認する
- プロセスの改善を行う
などがあります。
つまり、品質保証は「正しい品質を実現できるプロセスになっているか」という視点が強い活動です。
品質コントロールとは?
品質コントロールとは、成果物や作業結果を測定・検査し、品質要求を満たしているか確認する活動です。
例えば、
- 成果物を検査する
- テストを実施する
- 不具合を確認する
- 測定結果を分析する
などがあります。
簡単に整理すると、
品質保証:品質を確保できるプロセスを作る・改善する
品質コントロール:成果物や結果が品質要求を満たしているか確認する
という違いがあります。
「検査すれば品質が上がる」は間違い
品質マネジメントでよくある誤解が、
「最後にしっかり検査すれば品質は確保できる」
という考え方です。
もちろん検査やテストは重要です。
しかし、完成後に問題を発見して修正するだけでは、品質問題を効率的に防ぐことはできません。
例えば、設計段階のミスが開発完了後のテストで発見された場合、設計だけでなく、開発やテストにも手戻りが発生する可能性があります。
そのため、
「問題を見つける」だけではなく、「問題を発生させない」
という考え方が重要になります。
レビューの重要性
品質を確保するための代表的な活動がレビューです。
レビューでは、成果物を作成者以外のメンバーなどが確認します。
例えば、
- 要件定義書のレビュー
- 設計書のレビュー
- ソースコードレビュー
- テスト仕様書のレビュー
などがあります。
レビューのメリットは、問題を早い段階で発見できることです。
一般的に、問題を後工程で発見すると修正範囲が大きくなり、コストやスケジュールへの影響も大きくなる可能性があります。
そのため、できるだけ早い段階で品質を確認することが重要です。
品質問題が発生したらどうする?
品質問題が発生した場合、単純にその不具合を修正するだけでは十分ではありません。
重要なのは、
「なぜ、この問題が発生したのか?」
を考えることです。
例えば、テストで同じ種類の不具合が何度も発生しているのであれば、個々の不具合を修正するだけではなく、設計方法やレビュー方法、開発プロセスそのものを見直す必要があるかもしれません。
原因分析には、
- 5 Whys
- 特性要因図
- パレート図
- FMEA
などの手法を活用することもできます。
品質マネジメントとリスクマネジメント
品質とリスクも密接に関係しています。
例えば、
「新しい技術を利用するため、想定どおりの性能が出ない可能性がある」
というリスクがあれば、事前に検証を行うことで品質問題を防げるかもしれません。
つまり、品質問題が発生してから対応するだけではなく、品質に影響を与えるリスクを事前に特定し、対応しておくことも重要です。
品質マネジメントとコストの関係
品質を高めれば高めるほど良い、というわけでもありません。
品質を確保するためには、レビューやテスト、教育、ツールなどにコストがかかります。
一方で、品質問題を放置すると、後から修正するためのコストが発生します。
そのため、プロジェクトマネージャは、
「品質を確保するためにどこまでコストをかけるべきか」
を考える必要があります。
品質を上げるためのコストと、品質問題が発生した場合のコストを比較しながら、適切な品質レベルを設定することが重要です。
品質マネジメントでよくある失敗
品質基準が曖昧
「高品質な成果物を作る」とだけ決めても、何をもって高品質なのか判断できません。
品質を評価できる具体的な基準を設定することが重要です。
最後の検査だけで品質を確保しようとする
完成後のテストだけに頼ると、問題の発見が遅くなります。
要件定義、設計、開発など、それぞれの工程で品質を確認することが重要です。
不具合件数だけを見る
不具合件数が少ないからといって、必ずしも品質が高いとは限りません。
テストが十分に実施されていなければ、不具合が発見されていないだけという可能性もあります。
そのため、テストの実施状況や不具合の傾向なども含めて総合的に判断する必要があります。
品質を高めることだけを優先する
必要以上に品質を追求すると、コストやスケジュールに大きな影響を与える可能性があります。
重要なのは、プロジェクトの目的や要求に対して適切な品質を実現することです。
プロジェクトマネージャにとっての品質マネジメント
プロジェクトマネージャにとって、品質マネジメントは品質担当者だけに任せるものではありません。
プロジェクト全体を見ながら、
- 顧客が何を品質として求めているのか
- どの品質基準を設定するのか
- どのように品質を確認するのか
- 品質問題がプロジェクトにどんな影響を与えるのか
- 品質を確保するためにどの程度のコストをかけるのか
などを判断する必要があります。
特に重要なのは、品質を「テスト工程だけの問題」と考えないことです。
品質は、要件定義、設計、開発、テスト、運用など、プロジェクトのさまざまな活動によって作り込まれます。
そのため、プロジェクトマネージャは、プロジェクトの最初から品質を意識する必要があります。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
品質マネジメントを学ぶときは、次の用語を整理しておくとよいでしょう。
- 品質マネジメント
- 品質計画
- 品質保証
- 品質コントロール
- 品質基準
- レビュー
- テスト
- 不具合
- 是正措置
- 予防措置
- 継続的改善
- 5 Whys
- 特性要因図
- パレート図
- FMEA
特に、品質保証と品質コントロールの違いは整理しておきましょう。
また、品質問題が発生した場合に、単純な修正だけではなく、原因分析や再発防止まで考えることも重要です。
PM道場のワンポイント
品質マネジメントで大切なのは、「不具合を見つけること」よりも「不具合が生まれにくいプロセスを作ること」です。
プロジェクトで品質問題が発生すると、つい「誰がミスしたのか」を探したくなります。
しかし、個人のミスだけを原因としてしまうと、同じ問題が別の場所で繰り返される可能性があります。
例えば、設計書にミスがあったのであれば、
「設計者が確認不足だった」
だけで終わらせるのではなく、
- レビューの仕組みは適切だったか
- チェックリストは必要だったか
- 設計基準は明確だったか
- 教育は十分だったか
- スケジュールに無理はなかったか
といった視点から考えることが重要です。
つまり、品質マネジメントでは、「人を責める」のではなく「仕組みを改善する」という考え方が重要になります。
そして、品質を上げることだけを考えるのも適切ではありません。
必要以上の品質を追求すれば、コストやスケジュールを圧迫する可能性があります。
プロジェクトマネージャとして大切なのは、顧客やステークホルダーが本当に必要としている品質を見極め、コスト・スケジュール・スコープ・リスクとのバランスを取りながら品質を実現することです。
品質マネジメントは、完成した成果物をチェックする仕事ではありません。
プロジェクトの最初から最後まで、品質を作り込み、問題を予防し、必要に応じて改善していく活動なのです。
関連用語
- 品質保証
- 品質コントロール
- 品質基準
- レビュー
- テスト
- 5 Whys
- 特性要因図
- パレート図
- FMEA
- リスクマネジメント
- コストマネジメント
- スケジュールマネジメント
- スコープマネジメント
- 継続的改善
まとめ
品質マネジメントとは、プロジェクトや成果物に求められる品質を明確にし、その品質を実現・維持するために計画、実施、評価、改善を行う活動です。
重要なのは、完成した成果物を最後に検査するだけではありません。
プロジェクトの初期段階から品質基準を明確にし、品質を確保できるプロセスを作り、プロジェクトの途中でも継続的に品質を確認することが重要です。
また、品質問題が発生した場合には、個々の不具合を修正するだけではなく、原因を分析し、同じ問題が再発しないようにプロセスを改善することが重要です。
品質マネジメントで大切なのは、
「問題を見つける」
だけではなく、
「問題が発生しにくいプロジェクトを作る」
という考え方です。
プロジェクトマネージャは、品質だけを見るのではなく、コスト、スケジュール、スコープ、リスクなどとのバランスを考えながら、プロジェクトにとって適切な品質を実現していく必要があります。
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- 品質保証とは?
- 品質コントロールとは?
- 5 Whysとは?
- 特性要因図とは?
- パレート図とは?
- FMEAとは?
- リスクマネジメントとは?
- リスク分析とは?
- コストマネジメントとは?
- スケジュールマネジメントとは?
よくある質問(FAQ)
Q. 品質マネジメントとは何ですか?
A. プロジェクトや成果物に求められる品質を明確にし、その品質を実現・維持するために計画、実施、評価、改善を行う活動です。
Q. 品質保証と品質コントロールの違いは何ですか?
A. 品質保証は、適切な品質を実現できるプロセスを評価・改善する活動です。一方、品質コントロールは、成果物や作業結果を測定・検査し、品質要求を満たしているか確認する活動です。
Q. 品質マネジメントでは不具合をゼロにする必要がありますか?
A. 必ずしもそうではありません。重要なのは、プロジェクトの目的や要求に対して適切な品質を実現することです。必要以上の品質を追求すると、コストやスケジュールに悪影響を与える可能性があります。
Q. 品質問題が発生したらどうすればよいですか?
A. まず問題を修正したうえで、なぜ問題が発生したのかを分析することが重要です。原因を特定し、プロセスやルールを改善することで、同じ問題の再発を防ぎます。
Q. 品質マネジメントはテストのことですか?
A. いいえ。テストは品質を確認するための重要な活動の一つですが、品質マネジメントには品質の計画、品質を確保するためのプロセスづくり、品質の評価、改善なども含まれます。
Q. 品質マネジメントでプロジェクトマネージャが意識することは何ですか?
A. 品質だけを見るのではなく、コスト、スケジュール、スコープ、リスクなどとのバランスを考えることが重要です。また、問題が発生してから対応するのではなく、問題が発生しにくいプロセスを作ることも重要です。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
実際に合格した経験をもとに、勉強方法やおすすめ参考書、最難関といわれる午後Ⅱ論文の対策方法を詳しく解説しています。
「これから勉強を始めたい」「効率よく合格したい」という方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。














