「問題が発生したが、原因がたくさんありそうで整理できない」
「一つの原因だけではなく、複数の原因を体系的に洗い出したい」
このようなときに役立つのが特性要因図です。
特性要因図とは、ある結果に対して、どのような原因が影響しているのかを整理して可視化する図です。
見た目が魚の骨のように見えることから、「魚の骨図」や「フィッシュボーンチャート」と呼ばれることもあります。
品質管理や問題解決で広く使われていますが、プロジェクトマネジメントにおいても、問題や不具合の原因を整理するために活用できます。
一言でいうと
特性要因図とは、「ある問題がなぜ発生したのか」を、複数の原因に分解して整理するための図です。
例えば、「納期遅延」という問題が発生した場合、原因として、
- 要件変更が多かった
- 見積もりが甘かった
- メンバーが不足していた
- レビューに時間がかかった
- テストで大量の不具合が発生した
などが考えられます。
特性要因図では、こうした原因をさらに掘り下げながら整理します。
その結果、「問題の原因を漏れなく考えるための土台」を作ることができます。
特性要因図とは

特性要因図は、結果と、その結果を引き起こした可能性のある要因との関係を整理するための図です。
一般的には、右側に分析したい「結果」を置き、そこから左側に向かって原因を枝分かれさせていきます。
その形が魚の骨に似ているため、「魚の骨図」と呼ばれています。
例えば、
「プロジェクトが納期に遅れた」
という結果を分析するとします。
その原因を、
- 人
- 方法
- 環境
- ツール
- 要件
などの観点から整理し、さらにそれぞれの原因を細かく掘り下げていきます。
このように、原因を階層的に整理できることが特性要因図の特徴です。
特性要因図の「特性」と「要因」
特性要因図という名前は、「特性」と「要因」という2つの言葉からできています。
特性
「特性」とは、分析したい結果や問題のことです。
例えば、
- 製品の不良率が高い
- システム障害が多い
- プロジェクトが遅延している
- 顧客からのクレームが多い
などです。
要因
「要因」とは、その結果を引き起こしていると考えられる原因のことです。
特性要因図では、特性に対してどのような要因が関係しているのかを整理します。
特性要因図の目的
特性要因図を作成する主な目的は、問題の原因を体系的に洗い出すことです。
問題が発生すると、人は最初に思いついた原因だけで判断してしまうことがあります。
例えば、プロジェクトが遅延したときに、
「メンバーの作業が遅かったからだ」
と考えてしまうかもしれません。
しかし、実際には、
- 要件が頻繁に変更された
- 作業量の見積もりが不十分だった
- レビューの体制が整っていなかった
- 依存する作業が遅れていた
- 意思決定に時間がかかった
など、複数の要因が関係している可能性があります。
特性要因図を使うことで、一つの原因に決めつけず、さまざまな可能性を整理できます。
特性要因図の作り方
1.分析する問題を決める
まず、何について原因を分析するのかを決めます。
例えば、
「システム障害が多い」
という問題を分析するとします。
ここで重要なのは、できるだけ具体的な問題を設定することです。
「品質が悪い」のように曖昧な表現では、原因も曖昧になってしまいます。
2.特性を図の右側に置く
分析する問題を図の右側に配置します。
これが特性要因図の「特性」です。
例えば、
「システム障害が多い」
を特性として設定します。
3.大きな原因の分類を決める
次に、原因を考えるための大きな分類を決めます。
製造業では、よく「4M」が使われます。
- Man(人)
- Machine(設備・機械)
- Method(方法)
- Material(材料)
必要に応じて、
- Measurement(測定)
- Environment(環境)
- Management(管理)
などを加える場合もあります。
ただし、4Mなどの分類を必ず使用しなければならないわけではありません。
分析対象に適した分類を設定することが重要です。
4.原因を洗い出す
それぞれの分類について、原因を洗い出します。
例えば、「システム障害が多い」という問題であれば、
| 分類 | 原因の例 |
|---|---|
| 人 | スキル不足、教育不足、確認漏れ |
| 方法 | 手順が不明確、レビュー不足 |
| システム | 設計上の問題、性能不足 |
| 環境 | 本番環境とテスト環境の違い |
| 管理 | 変更管理不足、監視不足 |
などが考えられます。
5.さらに原因を掘り下げる
一度洗い出した原因について、さらに「なぜ?」と掘り下げます。
例えば、
レビュー不足
↓
なぜレビュー不足なのか?
↓
レビューの時間が確保されていない
↓
なぜ時間が確保されていないのか?
↓
スケジュールにレビュー工程が十分に設定されていない
というように、原因を段階的に掘り下げます。
6.原因を整理する
最後に、洗い出した原因を整理します。
同じ原因が複数の場所に出ていないか、原因と結果が逆になっていないかなどを確認します。
また、洗い出した原因が本当に「原因」なのか、単なる事象なのかを確認することも重要です。
特性要因図の使い方
問題の原因を洗い出す
最も基本的な使い方です。
問題が発生したときに、考えられる原因を体系的に洗い出します。
特に、原因が複数考えられる問題に向いています。
チームで原因を検討する
特性要因図は、チームで原因を検討するときにも有効です。
一人で考えると、自分の経験や知識の範囲に原因分析が偏ってしまいます。
複数のメンバーで議論することで、異なる視点から原因を洗い出すことができます。
原因の関係を整理する
原因を箇条書きにするだけでは、原因同士の関係が分かりにくい場合があります。
特性要因図では、原因を階層構造で整理できるため、「大きな原因」と「その原因を引き起こしたさらに細かい原因」を把握できます。
特性要因図と5Why
特性要因図と5Whyは、どちらも原因分析に使われる手法です。
5Whyは、問題に対して「なぜ?」を繰り返すことで、原因を深掘りしていきます。
一方、特性要因図は、複数の原因を広く洗い出し、それらを体系的に整理することに向いています。
そのため、両者を組み合わせることもできます。
例えば、最初に特性要因図を使って原因を広く洗い出します。
その後、重要な原因について5Whyを使って深掘りします。
このように、
「広く洗い出す → 深く掘り下げる」
という使い分けができます。
特性要因図と根本原因分析
特性要因図は、根本原因分析を行う際にも活用できます。
例えば、「本番環境で障害が発生した」という問題について、特性要因図を作成します。
すると、
- 設計
- 実装
- テスト
- 環境
- 運用
- 人
など、さまざまな観点から原因を洗い出すことができます。
その後、重要な原因を選び、さらに詳細な分析を行います。
このため、特性要因図は根本原因を探すための最初の整理手段として活用できます。
特性要因図とパレート図
パレート図も、問題分析に使われる代表的な手法です。
ただし、両者には役割の違いがあります。
| 手法 | 主な目的 |
|---|---|
| 特性要因図 | 原因を体系的に洗い出す |
| パレート図 | 問題や原因の多さを比較し、優先順位を検討する |
例えば、まず特性要因図を使って原因を洗い出し、その後、実際の発生件数を集計してパレート図で重要な原因を特定する、といった使い方ができます。
つまり、
特性要因図=「原因を広く考える」
パレート図=「どの原因を優先するか考える」
と理解すると分かりやすいでしょう。
特性要因図とFMEA
FMEAは、故障モードやその影響、原因などを事前に分析する手法です。
特性要因図とは目的が異なりますが、組み合わせて利用することができます。
例えば、特性要因図を使って問題の原因を幅広く洗い出し、その原因をFMEAの分析項目に反映します。
これにより、潜在的な故障モードや原因をより多角的に検討できます。
プロジェクトマネジメントでの活用例
特性要因図は、プロジェクトマネジメントでもさまざまな問題の原因分析に利用できます。
| 問題 | 原因の分類例 |
|---|---|
| 納期遅延 | 人、計画、要件、技術、コミュニケーション |
| 不具合が多い | 要件、設計、実装、テスト、環境 |
| コスト超過 | 見積もり、作業量、変更、リソース、管理 |
| 顧客満足度が低い | 品質、納期、コミュニケーション、期待値、サポート |
| 意思決定が遅い | 権限、情報、会議、承認、コミュニケーション |
このように、特性要因図は品質問題だけではなく、スケジュール、コスト、コミュニケーション、ステークホルダーなど、プロジェクトのさまざまな問題の原因分析に活用できます。
特性要因図を使うメリット
原因を幅広く考えられる
一つの原因に決めつけることなく、複数の視点から原因を洗い出せます。
原因を整理して見える化できる
箇条書きでは分かりにくい原因同士の関係を、図として整理できます。
チームで共通認識を作れる
図を見ながら議論することで、メンバー間で問題や原因についての認識を共有できます。
根本原因分析につなげられる
特性要因図を使って原因を整理した後、5Whyなどを使ってさらに深掘りすることができます。
特性要因図を使うときの注意点
原因を思いつくだけ並べない
特性要因図では、多くの原因を洗い出すことができます。
しかし、思いついた原因を無制限に追加すると、図が複雑になってしまいます。
分析の目的を意識しながら、重要な原因を整理することが大切です。
「原因」と「結果」を混同しない
分析している問題と、その問題を引き起こした原因を明確に区別する必要があります。
例えば、「納期遅延」という問題に対して「作業が遅れた」という項目を置くだけでは、十分な原因分析とはいえません。
「なぜ作業が遅れたのか?」とさらに掘り下げる必要があります。
特性要因図だけで根本原因が決まるわけではない
特性要因図は、あくまで原因を整理するための手法です。
図に書かれた原因がすべて真の原因とは限りません。
実際のデータや事実を確認しながら、原因を検証する必要があります。
先入観に注意する
「おそらくこれが原因だろう」という思い込みで分析すると、原因の見落としや偏りが発生します。
複数の関係者から意見を集め、事実に基づいて原因を確認することが重要です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
特性要因図については、単に「魚の骨の形をした図」と覚えるだけではなく、目的と使い方を理解しておきましょう。
重要なのは、
- ある結果に対する原因を整理する
- 原因を複数の観点から洗い出す
- 原因を階層的に整理する
- チームで原因分析を行う
- 根本原因分析につなげる
という点です。
また、特性要因図は原因を洗い出すための手法であり、原因が本当に正しいかどうかを証明するものではありません。
そのため、実際のデータや事実を確認しながら原因を検証することが重要です。
PM道場のワンポイント
特性要因図は「原因を一つに決めつけないための道具」と考えると分かりやすいです。
プロジェクトで問題が発生すると、私たちはつい「これが原因だ」と決めつけてしまいます。
しかし、実際のプロジェクトでは、一つの問題に複数の原因が絡んでいることが少なくありません。
例えば、納期が遅れたとしても、
- 見積もりが不足していた
- 要件変更が多かった
- レビューが遅れた
- メンバーが不足していた
- 意思決定に時間がかかった
など、複数の要因が重なっている可能性があります。
そこで特性要因図を使い、まずは「原因を広く洗い出す」ことから始めます。
そのうえで、5Whyなどを使って重要な原因を深掘りし、実際のデータや事実によって検証していきます。
つまり、特性要因図は「答えを出すための図」ではなく、「正しい答えを探すために、原因を整理する図」です。
関連用語
- 品質管理
- 品質保証
- 品質メトリクス
- 不具合
- 根本原因分析
- 5Why
- パレート図
- FMEA
- レビュー
- インスペクション
- テスト
- リスク
- 課題
- 継続的改善
まとめ
特性要因図とは、ある結果に対して、どのような原因が影響しているのかを体系的に整理するための図です。
魚の骨のような形をしていることから、「魚の骨図」や「フィッシュボーンチャート」とも呼ばれます。
特性要因図を使うことで、
- 原因を幅広く洗い出す
- 原因を分類して整理する
- 原因を階層的に掘り下げる
- チームで問題に対する認識を共有する
- 根本原因分析につなげる
といったことができます。
特に重要なのは、「最初に思いついた原因だけで問題を説明しない」ことです。
特性要因図を使って原因を広く洗い出し、その後、5Whyや根本原因分析、実際のデータなどを使って原因を検証することで、より効果的な問題解決につなげることができます。
また、パレート図やFMEAなどの手法と組み合わせることで、原因の洗い出しから優先順位付け、リスクへの対応まで、より体系的に進めることができます。
「問題が起きたら、すぐに原因を一つに決めつけない。まずは原因を広く洗い出して整理する。」
これが、特性要因図をプロジェクトマネジメントで活用するうえでの重要なポイントです。
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- レビューとは?
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- テストとは?
- リスクとは?
- 課題とは?
- 継続的改善とは?
よくある質問(FAQ)
Q. 特性要因図とは何ですか?
A. 特性要因図とは、ある結果や問題に対して、どのような原因が影響しているのかを整理するための図です。魚の骨のような形をしていることから、魚の骨図やフィッシュボーンチャートとも呼ばれます。
Q. 特性要因図は何のために使いますか?
A. 問題の原因を一つに決めつけず、複数の観点から幅広く洗い出し、体系的に整理するために使います。
Q. 特性要因図と5Whyの違いは何ですか?
A. 特性要因図は複数の原因を幅広く洗い出して整理することに向いています。一方、5Whyは「なぜ?」を繰り返して、一つの原因を深く掘り下げることに向いています。両者を組み合わせて使うこともできます。
Q. 特性要因図とパレート図の違いは何ですか?
A. 特性要因図は「どのような原因が考えられるか」を整理するために使います。一方、パレート図は問題や原因を件数順に並べ、「どの問題を優先すべきか」を検討するために使います。
Q. 特性要因図は品質管理以外でも使えますか?
A. はい。納期遅延、コスト超過、システム障害、コミュニケーション不足、顧客満足度の低下など、原因が複数考えられるさまざまな問題に活用できます。
Q. 特性要因図を作れば根本原因が分かりますか?
A. 特性要因図だけで根本原因が確定するわけではありません。特性要因図は原因を洗い出して整理するための手法です。整理した原因について、5Whyやデータ分析などを行い、実際の事実と照らし合わせながら検証することが重要です。

私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
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