「問題が発生した原因は分かったが、本当にそこが原因なのだろうか?」
「同じ問題が何度も発生してしまう」
「目の前の問題を解決するだけでなく、根本的な原因を取り除きたい」
このようなときに活用できるのが5Why(5Whys)です。
5Whyとは、発生した問題に対して「なぜ?」を繰り返し問いかけることで、表面的な原因からさらに深い原因を掘り下げていく問題分析の手法です。
「5回」と名前についていますが、必ず5回質問しなければならないわけではありません。
重要なのは回数ではなく、問題の根本的な原因にたどり着くまで「なぜ?」を掘り下げることです。
一言でいうと
5Whyとは、「なぜ?」を繰り返して、表面的な原因のさらに奥にある根本原因を探るための分析手法です。
例えば、プロジェクトで「本番環境に不具合が発生した」という問題が起きたとします。
そこで、
「なぜ不具合が本番環境に入ったのか?」
と問いかけます。
すると、
「テストで発見できなかったから」
という答えが出てきます。
さらに、
「なぜテストで発見できなかったのか?」
と掘り下げます。
このように「なぜ?」を繰り返すことで、単なる「テスト漏れ」という事象から、なぜテスト漏れが発生したのかという、より根本的な原因に近づいていきます。
5Whyとは
5Whyは、問題の根本原因(真因)を探るために使われる原因分析の手法です。
問題が発生したとき、人は最初に見つかった原因を「原因」として扱ってしまいがちです。
しかし、その原因のさらに奥に別の原因が存在している場合があります。
例えば、
「プロジェクトの納期に遅れた」
という問題があったとします。
原因を調べた結果、
「作業が予定より遅れた」
ことが分かりました。
しかし、これだけでは「なぜ作業が遅れたのか」が分かりません。
そこで、さらに「なぜ?」を繰り返していきます。
5Whyの具体例
例えば、システム開発プロジェクトで「本番環境で障害が発生した」とします。
Why 1:なぜ障害が発生したのか?
本番環境に不具合が残ったままリリースされたから。
Why 2:なぜ不具合が残ったままリリースされたのか?
テストでその不具合を発見できなかったから。
Why 3:なぜテストで発見できなかったのか?
その条件を想定したテストケースがなかったから。
Why 4:なぜテストケースがなかったのか?
要件定義書にその条件が明確に記載されていなかったから。
Why 5:なぜ要件定義書に記載されていなかったのか?
例外条件を確認するための要件レビューの観点が定義されていなかったから。
このように分析すると、最初は「テストで不具合を見つけられなかった」という問題に見えていたものが、さらに掘り下げることで、要件レビューの仕組みに問題があったことが見えてきます。
ここまで原因を掘り下げることで、単純に「テストを増やす」という対策だけではなく、要件レビューの仕組みを改善するという対策につなげられます。
5Whyの進め方
1.問題を明確にする
まず、何が起きたのかを具体的に定義します。
例えば、
「品質が悪い」
という表現では曖昧すぎます。
「本番環境で顧客データの登録エラーが発生した」
など、事実として確認できる具体的な問題にすることが重要です。
2.最初の「なぜ?」を考える
問題が発生した直接的な原因を考えます。
例えば、
「なぜ顧客データの登録エラーが発生したのか?」
という問いに対して、
「入力値のチェック処理に不備があったから」
と答えます。
3.さらに「なぜ?」と掘り下げる
ここで終わりにせず、
「なぜ入力値のチェック処理に不備があったのか?」
とさらに問いかけます。
この「なぜ?」を繰り返していきます。
4.原因が仕組みやプロセスまでたどり着いているか確認する
分析を進めるときには、個人のミスだけで原因分析を終わらせないことが重要です。
例えば、
「担当者が確認を忘れた」
という答えが出た場合、
「なぜ担当者は確認を忘れたのか?」
とさらに掘り下げます。
そこから、
- チェック項目が定義されていなかった
- 確認手順が明確ではなかった
- レビュー体制がなかった
- スケジュールに確認時間が設定されていなかった
など、個人ではなくプロセスや仕組みに原因がある可能性が見えてくることがあります。
5.対策を決める
根本原因を特定したら、その原因を取り除くための対策を検討します。
例えば、
原因:レビューの観点が定義されていなかった
であれば、
対策:レビュー観点を標準化し、チェックリストとして利用する
といった対策が考えられます。
6.対策の効果を確認する
対策を実施したら、それによって本当に問題の再発を防げたのか確認します。
必要であれば、対策後の結果を測定し、さらに改善します。
「5回」なぜを繰り返す必要があるのか
5Whyという名前から、「必ず5回なぜを繰り返す必要がある」と考えてしまうかもしれません。
しかし、必ず5回である必要はありません。
3回で根本原因にたどり着くこともあれば、5回以上必要になることもあります。
重要なのは回数ではなく、
「この原因を取り除けば、同じ問題の再発を防げるのか?」
という視点です。
まだ根本原因に到達していないのであれば、さらに「なぜ?」を掘り下げます。
5Whyを行うときのポイント
事実に基づいて分析する
5Whyでは、推測だけで「なぜ?」を繰り返すと誤った結論にたどり着く可能性があります。
ログ、記録、設計書、議事録、テスト結果など、確認できる事実をもとに分析することが重要です。
個人の責任追及にしない
5Whyを「誰が悪かったのか」を追及するために使ってはいけません。
「担当者が確認を忘れた」という原因が見つかったとしても、そこで分析を終わらせるのではなく、
「なぜ確認を忘れても問題を防げない仕組みになっていたのか?」
と考えます。
個人のミスを責めるのではなく、同じミスが発生しても問題にならない仕組みを作ることが重要です。
「なぜ?」を機械的に繰り返さない
5Whyは、単純に同じ質問を5回繰り返せばよいわけではありません。
それぞれの回答が本当に前の事象の原因になっているのかを確認しながら進めます。
複数の原因がある場合は分岐する
一つの問題に対して、原因が一つとは限りません。
例えば、納期遅延の原因が、
- 要件変更
- 人員不足
- 技術的問題
の3つにある場合、それぞれについて「なぜ?」を掘り下げる必要があります。
その場合は、特性要因図などを使って原因を整理すると効果的です。
5Whyと特性要因図の違い
5Whyと特性要因図は、どちらも原因分析に使われますが、得意とすることが異なります。
| 手法 | 特徴 |
|---|---|
| 5Why | 一つの原因を「なぜ?」と掘り下げる |
| 特性要因図 | 複数の原因を幅広く洗い出して整理する |
例えば、まず特性要因図を使って、問題に関係しそうな原因を幅広く洗い出します。
その後、重要な原因について5Whyを使って深掘りする、という使い方ができます。
つまり、
特性要因図=「広く考える」
5Why=「深く考える」
という関係で考えると分かりやすいでしょう。
5Whyと根本原因分析
5Whyは、根本原因分析(Root Cause Analysis)を行うための代表的な手法の一つです。
根本原因分析そのものが一つの手法というより、問題の根本的な原因を特定し、再発防止につなげるための分析活動と考えると分かりやすいでしょう。
そのため、根本原因分析を行う際に、5Why、特性要因図、パレート図などのさまざまな手法を組み合わせて利用することがあります。
5Whyとパレート図
パレート図は、問題や原因を件数の多い順に並べ、どの問題が全体に大きな影響を与えているのかを確認するための手法です。
一方、5Whyは、一つの問題や原因を深く掘り下げるための手法です。
そのため、
パレート図で重要な問題を特定する → 5Whyで原因を掘り下げる
という使い方もできます。
5WhyとFMEA
FMEAは、問題が発生する前に潜在的な故障モードやその影響、原因などを分析する手法です。
一方、5Whyは、実際に発生した問題について原因を深掘りする場面で特に活用されます。
そのため、
- FMEA:問題が起きる前に潜在的な問題を分析する
- 5Why:問題が起きた後、その原因を深掘りする
という使い分けが基本的な考え方です。
プロジェクトマネジメントでの活用例
5Whyは、プロジェクトで発生するさまざまな問題の原因分析に活用できます。
| 問題 | 分析例 |
|---|---|
| 納期遅延 | なぜ作業が遅れたのかを掘り下げる |
| 不具合発生 | なぜテストで発見できなかったのかを分析する |
| コスト超過 | なぜ想定以上のコストが発生したのかを分析する |
| 要件漏れ | なぜ要件が確認されなかったのかを掘り下げる |
| 障害発生 | なぜ障害を防止・検知できなかったのかを分析する |
| コミュニケーション不足 | なぜ必要な情報が共有されなかったのかを分析する |
5Whyのメリット
表面的な原因から深掘りできる
「担当者のミス」「テスト漏れ」といった表面的な原因で分析を終わらせず、その背景にある仕組みやプロセスまで掘り下げることができます。
再発防止策につなげやすい
根本原因を取り除く対策を検討することで、同じ問題が再発する可能性を低減できます。
シンプルで実施しやすい
特別なツールがなくても、「なぜ?」という問いを繰り返すことで実施できます。
そのため、プロジェクトチームの問題分析にも取り入れやすい手法です。
5Whyの注意点
必ず一つの答えになるとは限らない
問題の原因が複数存在する場合、5Whyを一方向に掘り下げるだけでは十分ではありません。
必要に応じて原因を分岐させ、それぞれを分析する必要があります。
推測を事実として扱わない
「おそらく○○だったから」という推測だけで分析を進めると、誤った根本原因にたどり着く可能性があります。
事実やデータを確認しながら分析することが重要です。
「人のミス」で終わらせない
「担当者が間違えた」というところで分析を終了すると、再発防止につながらない場合があります。
「なぜ間違えても発見できなかったのか?」
「なぜ間違いを防ぐ仕組みがなかったのか?」
と掘り下げることが重要です。
5回という数字にこだわらない
5Whyという名前ですが、3回で十分な場合もあれば、6回、7回と掘り下げる必要がある場合もあります。
重要なのは、適切な根本原因に到達することです。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
5Whyについては、単に「なぜを5回繰り返す手法」と覚えるだけではなく、何のために行うのかを理解しておきましょう。
重要なのは、
- 問題の表面的な原因だけで終わらせない
- 「なぜ?」を繰り返して原因を深掘りする
- 根本原因を特定する
- 再発防止策につなげる
- 個人の責任追及ではなく、仕組みの改善につなげる
という点です。
また、5Whyは万能な手法ではありません。
原因が複数存在する場合には、特性要因図などを使って原因を整理してから5Whyで深掘りするなど、状況に応じて他の分析手法と組み合わせることが重要です。
PM道場のワンポイント
5Whyは「犯人探し」ではなく、「同じ問題を起こさない仕組みを作るための分析」と考えることが重要です。
例えば、プロジェクトで不具合が発生したとき、
「担当者が確認を忘れたから」
で終わらせてしまうと、その担当者を注意するだけで終わってしまいます。
しかし、5Whyで、
「なぜ確認を忘れたのか?」
「なぜ確認項目が明確になっていなかったのか?」
「なぜレビューで確認できなかったのか?」
と掘り下げていくと、
「個人の注意力に依存したプロセスになっていた」
という問題が見えてくるかもしれません。
そうであれば、対策は「担当者に注意する」ではありません。
チェックリストを作成したり、レビュー工程を見直したり、自動チェックを導入したりすることで、人が忘れても問題が発生しにくい仕組みを作ることができます。
つまり、5Whyで大切なのは「5回なぜを言うこと」ではなく、「その原因を取り除けば、本当に同じ問題を防げるのか?」と考えることです。
関連用語
- 根本原因分析
- 特性要因図
- パレート図
- FMEA
- 品質管理
- 品質保証
- 品質メトリクス
- 不具合
- レビュー
- インスペクション
- テスト
- リスク
- 課題
- 継続的改善
まとめ
5Why(5Whys)とは、問題に対して「なぜ?」を繰り返し問いかけ、表面的な原因から根本的な原因まで掘り下げる分析手法です。
重要なのは、必ず5回「なぜ?」を繰り返すことではありません。
「同じ問題の再発を防ぐためには、どこまで原因を掘り下げればよいのか」
という視点で分析することが重要です。
また、5Whyを行う際には、
- 事実に基づいて分析する
- 個人の責任追及にしない
- 仕組みやプロセスまで掘り下げる
- 複数の原因があれば分岐して分析する
- 必要に応じて他の分析手法と組み合わせる
ことが重要です。
特性要因図で原因を幅広く洗い出し、5Whyで重要な原因を深掘りし、根本原因を特定するという使い方もできます。
「問題が起きたから対策する」のではなく、「なぜ問題が起きたのかを深く理解し、同じ問題が起きない仕組みに変える」
これが5Whyをプロジェクトマネジメントで活用する際の重要なポイントです。
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- レビューとは?
- インスペクションとは?
- テストとは?
- リスクとは?
- 課題とは?
- 継続的改善とは?
よくある質問(FAQ)
Q. 5Whyとは何ですか?
A. 5Whyとは、問題に対して「なぜ?」を繰り返し問いかけることで、表面的な原因からさらに深い根本原因を探る分析手法です。
Q. 5Whyは必ず5回繰り返すのですか?
A. いいえ。必ず5回である必要はありません。3回で十分な場合もあれば、5回以上必要になる場合もあります。重要なのは回数ではなく、再発防止につながる根本原因まで掘り下げることです。
Q. 5Whyと根本原因分析は同じですか?
A. 5Whyは根本原因分析に利用できる代表的な手法の一つです。根本原因分析は、問題の根本的な原因を特定し、再発防止につなげるための分析活動全体を指します。
Q. 5Whyと特性要因図の違いは何ですか?
A. 5Whyは一つの原因を「なぜ?」と繰り返して深く掘り下げることに向いています。一方、特性要因図は複数の原因を幅広く洗い出して整理することに向いています。両者を組み合わせて使うこともできます。
Q. 5Whyは個人のミスを分析するための手法ですか?
A. いいえ。個人の責任を追及することが目的ではありません。「なぜそのミスが発生しても防止・検出できなかったのか」と掘り下げ、プロセスや仕組みの改善につなげることが重要です。
Q. 5Whyはプロジェクトマネジメントで使えますか?
A. はい。納期遅延、不具合、障害、コスト超過、要件漏れ、コミュニケーション不足など、さまざまな問題の原因分析に活用できます。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
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