「リスクを洗い出して分析しました。その後は何をすればよいのでしょうか。」
プロジェクトでは、リスクを特定・分析するだけでは十分ではありません。
重要なのは、リスクが発生した場合に備えて、どのような行動を取るかを事前に決めておくことです。
この活動をリスク対応(Risk Response)と呼びます。
この記事では、リスク対応の意味や代表的な対応戦略、実務での活用方法、プロジェクトマネージャが押さえるべきポイントについて解説します。
一言でいうと
リスク対応とは、「特定・分析したリスクに対して、発生確率や影響を小さくするための具体的な行動を決める活動」です。
リスク対応とは
リスク対応とは、特定したリスクに対して、どのように向き合うかを決定する活動です。
プロジェクトでは、すべてのリスクをなくすことはできません。
そのため、リスクの種類や影響度に応じて、適切な対応方法を選択します。
PMBOK®︎では、リスク対応はリスクマネジメントの重要な活動の一つとして位置付けられています。
また、リスク対応は「悪い影響を与えるリスク(脅威)」だけではなく、「良い影響を与えるリスク(好機)」に対しても検討します。
リスク対応が重要な理由
リスクは、発生してから対応すると、プロジェクトへ大きな影響を与える可能性があります。
例えば、以下のようなケースです。
- 重要メンバーが離脱してから代替要員を探す
- 技術問題が発生してから調査を開始する
- 納期遅延が発生してからスケジュールを見直す
このような事後対応では、対応できる選択肢が限られてしまいます。
事前にリスク対応を決めておくことで、問題発生時にも迅速な判断と行動が可能になります。
リスク対応の基本的な考え方
リスク対応を検討する際には、以下の観点が重要です。
- そのリスクを発生させない方法はあるか
- 発生した場合の影響を小さくできるか
- 他者へ移転できるか
- 受け入れることが合理的か
リスクの大きさやプロジェクト状況に応じて、最適な対応方法を選択します。
脅威に対する代表的なリスク対応戦略
回避(Avoid)
回避とは、リスクの原因を取り除き、リスクが発生しない状態にする対応方法です。
例えば、
- 実績のない技術利用をやめる
- 複雑な機能を削減する
- 契約条件を変更する
などがあります。
リスクの影響が非常に大きい場合に検討されます。
軽減(Mitigate)
軽減とは、リスクの発生確率や影響度を低下させる対応方法です。
例えば、
- 事前検証を実施する
- 教育や訓練を行う
- レビュー回数を増やす
などがあります。
実務では最も多く利用される対応方法の一つです。
転嫁(Transfer)
転嫁とは、リスクへの対応責任や影響を第三者へ移す方法です。
例えば、
- 保険へ加入する
- 専門業者へ委託する
- 契約によって責任範囲を明確化する
などがあります。
ただし、リスクそのものがなくなるわけではなく、管理主体を変更する方法です。
受容(Accept)
受容とは、追加対応を行わず、リスクが発生した場合に対応する方法です。
例えば、影響が小さいリスクや、対応コストがリスク影響を上回る場合に選択します。
受容する場合でも、発生時の対応方針や担当者を決めておくことが重要です。
好機に対するリスク対応戦略
PMBOK®︎では、良い影響を与えるリスク(好機)についても対応を検討します。
| 対応方法 | 概要 |
|---|---|
| 活用(Exploit) | 機会を確実に実現する |
| 強化(Enhance) | 発生確率や効果を高める |
| 共有(Share) | 第三者と協力して実現する |
| 受容(Accept) | 機会を自然に受け入れる |
実務ではこんな場面で活用される
例えば、新しい技術を利用するシステム開発プロジェクトを考えます。
リスク分析の結果、
「新技術の習得不足により、開発遅延が発生する可能性が高い」
というリスクが判明しました。
そこで、以下のリスク対応を実施します。
- 事前に技術検証を実施する
- 専門家によるレビューを行う
- 経験者をプロジェクトへ参画させる
- スケジュールに余裕を持たせる
このように、リスク対応では「発生したらどうするか」ではなく、「発生する可能性をどう管理するか」を考えます。
よくある勘違い
リスク対応策を決めれば終わりではない
リスク対応は、計画を作成するだけでは十分ではありません。
実際に対応策が実行されているか、効果が出ているかを確認する必要があります。
すべてのリスクに対策する必要はない
すべてのリスクに対して詳細な対策を行うと、時間やコストが不足します。
重要なのは、リスクの大きさと対応コストを比較し、適切な判断を行うことです。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
IPAのプロジェクトマネージャ試験では、リスクをどのように管理し、対応したかが重要なテーマになります。
午後試験では、以下の観点を説明できることが重要です。
- どのようなリスクを特定したか
- なぜその対応方法を選択したか
- 対応策をどのように実行したか
- 対応後の効果をどのように確認したか
「リスク対応を実施した」ではなく、「リスクの特徴を踏まえて最適な対応を判断した」という説明が重要です。
PM道場のワンポイント
リスク対応で重要なのは、すべてのリスクをなくすことではなく、プロジェクトとして受け入れられる状態にすることです。
実務では、リスクが発生しないようにすることばかりに注目しがちです。
しかし、プロジェクトマネージャに求められるのは、不確実性を理解したうえで適切な判断をすることです。
時には、コストや期間を考慮して「受容する」という判断も必要になります。
優れたプロジェクトマネージャは、リスク対応を通じて、チームが安心して行動できる環境を作っています。
関連用語
- リスク(Risk)
- リスクマネジメント
- リスク登録簿(Risk Register)
- リスク分析
- 定性的リスク分析
- 定量的リスク分析
- リスクトリガー
- 課題(Issue)
まとめ
リスク対応とは、特定・分析したリスクに対して、発生確率や影響を管理するための具体的な行動を決める活動です。
代表的な対応方法には、回避・軽減・転嫁・受容があります。
重要なのは、リスクを完全になくすことではありません。
プロジェクトの状況に応じて適切な対応方法を選択し、不確実性を管理することがプロジェクトマネージャの役割です。
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- 定性的リスク分析とは?
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よくある質問(FAQ)
Q. リスク対応とは何ですか?
A. 特定・分析したリスクに対して、発生確率や影響を管理するための具体的な行動を決める活動です。
Q. リスク対応にはどのような種類がありますか?
A. 脅威に対しては回避・軽減・転嫁・受容、好機に対しては活用・強化・共有・受容などがあります。
Q. リスク対応で最も重要なことは何ですか?
A. リスクの特徴を理解し、プロジェクトにとって最適な対応方法を選択することです。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
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