「リスクはたくさん洗い出しましたが、どのリスクから対応すればよいでしょうか。」
プロジェクトでは、多くのリスクが発生する可能性があります。
しかし、すべてのリスクに同じ時間やコストをかけて対応することはできません。
そこで重要になるのが、リスクの優先順位を判断する定性的リスク分析(Qualitative Risk Analysis)です。
この記事では、定性的リスク分析の意味や進め方、定量的リスク分析との違い、実務で活用するポイントについて解説します。
一言でいうと
定性的リスク分析とは、「リスクの発生確率や影響度を評価し、対応すべき優先順位を決める活動」です。
定性的リスク分析とは
定性的リスク分析とは、特定したリスクについて、発生する可能性(発生確率)と、発生した場合の影響度を評価する活動です。
リスクを「高・中・低」などの相対的な基準で評価し、どのリスクを優先的に管理するべきか判断します。
PMBOK®︎では、リスクマネジメントの中で重要なプロセスとして扱われています。
多くのプロジェクトでは、まず定性的リスク分析を実施し、必要に応じて定量的リスク分析へ進みます。
定性的リスク分析が重要な理由
プロジェクトでは、多くのリスクが存在します。
例えば、以下のようなリスクです。
- メンバー不足によるスケジュール遅延
- 新技術の利用による品質低下
- 要求変更による追加作業
- 外部企業との調整遅延
しかし、すべてのリスクへ同じレベルで対応すると、重要なリスクへの対応が遅れてしまいます。
定性的リスク分析を行うことで、
- 優先して対応すべきリスク
- 監視だけでよいリスク
- 許容できるリスク
を判断できます。
定性的リスク分析の評価方法
定性的リスク分析では、主に以下の2つの観点で評価します。
| 評価項目 | 意味 |
|---|---|
| 発生確率 | そのリスクが発生する可能性 |
| 影響度 | 発生した場合にプロジェクトへ与える影響 |
例えば、以下のように評価します。
| リスク | 発生確率 | 影響度 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 重要メンバー離脱 | 高 | 高 | 最優先 |
| 資料作成遅延 | 中 | 低 | 中 |
| 軽微な仕様変更 | 低 | 低 | 低 |
発生確率・影響度マトリクス
定性的リスク分析では、発生確率と影響度を組み合わせて評価する方法がよく使われます。
| 影響度:低 | 影響度:高 | |
|---|---|---|
| 発生確率:低 | 監視 | 注意して管理 |
| 発生確率:高 | 対応検討 | 最優先で対応 |
発生確率が高く、影響度も大きいリスクほど、優先的に対応します。
定性的リスク分析の進め方
- リスクを洗い出す
- 発生確率を評価する
- 影響度を評価する
- 優先順位を決定する
- 対応方針を検討する
評価基準は、プロジェクト開始時にチームで決めておくことが重要です。
例えば、「影響度が高いとは何を意味するのか」を事前に定義しておくことで、評価のばらつきを防ぐことができます。
定性的リスク分析と定量的リスク分析の違い
| 項目 | 定性的リスク分析 | 定量的リスク分析 |
|---|---|---|
| 目的 | リスクの優先順位を決める | 影響を数値で分析する |
| 評価方法 | 高・中・低などで評価 | 金額・期間・確率などで評価 |
| 特徴 | 短時間で実施できる | 詳細な分析が可能 |
| 利用場面 | 多くのプロジェクトで利用 | 大規模案件などで利用 |
実務ではこんな場面で活用される
例えば、システム開発プロジェクトで以下のリスクが発生したとします。
- 新しい技術を利用するため、開発遅延の可能性がある
- 海外拠点との調整に時間がかかる可能性がある
- 主要メンバーが繁忙期に参加できない可能性がある
これらを定性的リスク分析すると、
- 技術リスク → 発生確率:高、影響度:高
- 調整リスク → 発生確率:中、影響度:中
- 人的リスク → 発生確率:低、影響度:高
のように整理できます。
その結果、最も優先すべきリスクを判断し、対応策を検討できます。
よくある勘違い
定性的リスク分析は「感覚」で判断するものではない
定性的という言葉から、個人の感覚で評価するものと思われることがあります。
しかし、実際には評価基準を決め、チームで共通認識を持って判断することが重要です。
すべてのリスクを詳細分析する必要はない
リスク分析の目的は、すべてを細かく分析することではありません。
重要なリスクを見極め、限られた時間やリソースを効果的に使うことが目的です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
IPAのプロジェクトマネージャ試験では、リスクをどのように評価し、対応へつなげたかが重要です。
午後試験では、以下のような観点を説明できることが重要です。
- どのような基準でリスクを評価したか
- なぜそのリスクを重要と判断したか
- 分析結果をどのような対応につなげたか
- 関係者とどのように共有したか
単に「リスクを分析した」と書くのではなく、分析結果をもとにPMがどのような判断をしたかを説明できることが重要です。
PM道場のワンポイント
定性的リスク分析の目的は、リスクに順位を付けることではなく、チームで「何を優先すべきか」を共有することです。
実務では、発生確率や影響度の評価に時間をかけすぎるケースがあります。
しかし、重要なのは評価そのものではありません。
分析結果をもとに、
- 今すぐ対応するのか
- 監視するのか
- 受け入れるのか
を判断し、行動につなげることです。
優れたプロジェクトマネージャは、リスク分析を使ってチームの判断をそろえ、未来の問題を防いでいます。
関連用語
- リスク(Risk)
- リスクマネジメント
- リスク登録簿(Risk Register)
- 定量的リスク分析
- リスク対応計画
- リスク評価
- 課題(Issue)
- 意思決定
まとめ
定性的リスク分析とは、リスクの発生確率や影響度を評価し、対応すべき優先順位を決める活動です。
多くのプロジェクトでは、まず定性的リスク分析によって重要なリスクを見極め、その後必要に応じて詳細な分析を行います。
重要なのは、評価表を作成することではありません。
分析結果をもとに、プロジェクトマネージャが適切な判断を行い、問題発生を未然に防ぐことです。
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- リスク登録簿(Risk Register)とは?
- 定量的リスク分析とは?
- リスク対応計画とは?
- 課題(Issue)とは?
よくある質問(FAQ)
Q. 定性的リスク分析とは何ですか?
A. リスクの発生確率や影響度を評価し、対応の優先順位を決める活動です。
Q. 定性的リスク分析と定量的リスク分析の違いは何ですか?
A. 定性的リスク分析は優先順位を決めるための分析、定量的リスク分析は影響を数値化するための分析です。
Q. 定性的リスク分析はいつ実施しますか?
A. リスクを特定した後に実施し、プロジェクト状況の変化に応じて必要に応じて見直します。
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