「このリスクが発生した場合、プロジェクトにどの程度の影響があるのでしょうか。」
プロジェクトでは、リスクの優先順位を決めるだけではなく、発生した場合の影響を具体的な数値で把握したい場合があります。
そのような場面で活用されるのが定量的リスク分析(Quantitative Risk Analysis)です。
この記事では、定量的リスク分析の意味や目的、代表的な分析手法、定性的リスク分析との違い、実務での活用方法について解説します。
一言でいうと
定量的リスク分析とは、「リスクがプロジェクト目標に与える影響を数値化し、意思決定に活用する活動」です。
定量的リスク分析とは
定量的リスク分析とは、特定したリスクについて、発生確率や影響を数値で分析する活動です。
定性的リスク分析では「高・中・低」といった相対的な評価を行いますが、定量的リスク分析では、
- 発生した場合の追加コスト
- 納期への影響日数
- プロジェクト成功確率
- 目標達成への影響
などを具体的な数値で評価します。
PMBOK®︎では、必要に応じて実施する高度なリスク分析手法として位置付けられています。
定量的リスク分析が重要な理由
プロジェクトでは、すべての判断を感覚だけで行うことはできません。
特に、大規模プロジェクトや多額の投資を伴うプロジェクトでは、リスクの影響を数値で把握することが重要になります。
例えば、以下のような判断が可能になります。
- 予備費をどの程度確保すべきか
- 納期遅延の可能性は許容できる範囲か
- 追加対策へ投資する価値があるか
- プロジェクト計画を変更すべきか
定量的リスク分析によって、経験や感覚だけではなく、データに基づいた意思決定が可能になります。
定量的リスク分析を実施するタイミング
定量的リスク分析は、すべてのプロジェクトで必ず実施するものではありません。
一般的には、以下のような場合に活用されます。
- プロジェクト規模が大きい場合
- 投資金額が大きい場合
- リスクの影響が重大な場合
- 経営層への説明が必要な場合
小規模なプロジェクトでは、定性的リスク分析だけで十分な場合もあります。
代表的な定量的リスク分析の手法
期待金額価値分析(EMV)
期待金額価値分析(Expected Monetary Value:EMV)は、リスクの発生確率と影響金額を掛け合わせ、期待される損失や利益を算出する方法です。
計算式は以下のとおりです。
期待金額価値 = 発生確率 × 発生した場合の影響額
例えば、
- 発生確率:30%
- 発生時の損失:1,000万円
の場合、
0.3 × 1,000万円 = 300万円
となり、期待される損失額は300万円と判断できます。
モンテカルロ分析
モンテカルロ分析は、複数のリスクを考慮し、シミュレーションによってプロジェクトの結果を予測する方法です。
例えば、スケジュールについて、
- 予定より早く完了する可能性
- 予定通り完了する可能性
- 遅延する可能性
を多数のシミュレーションによって分析します。
大規模プロジェクトや複雑なプロジェクトで活用されます。
感度分析
感度分析とは、どのリスク要因がプロジェクトへ大きな影響を与えるかを分析する方法です。
例えば、
- 人員不足
- 材料価格上昇
- 技術的問題
の中で、どの要因がコストへ最も影響するかを判断します。
定性的リスク分析との違い
| 項目 | 定性的リスク分析 | 定量的リスク分析 |
|---|---|---|
| 目的 | リスクの優先順位を決める | 影響を数値化する |
| 評価方法 | 高・中・低などで評価 | 金額・期間・確率などで評価 |
| 特徴 | 簡単に実施できる | 詳細な意思決定が可能 |
| 利用場面 | 多くのプロジェクトで利用 | 大規模案件などで利用 |
実務ではこんな場面で活用される
例えば、大規模なシステム開発プロジェクトで、納期遅延リスクを分析するとします。
定性的リスク分析では、
「納期遅延リスク:高」
という判断になります。
さらに定量的リスク分析を行うことで、
- 20日遅延する可能性がある
- 追加費用として500万円発生する可能性がある
- 納期達成確率は70%
のように具体化できます。
これにより、プロジェクトマネージャは、追加要員投入や計画変更などの判断を行いやすくなります。
よくある勘違い
すべてのリスクを数値化すればよいわけではない
定量的リスク分析は有効ですが、すべてのリスクに対して実施すると、多くの時間やコストが必要になります。
重要なのは、分析する価値があるリスクを見極めることです。
数値結果が絶対的な未来を示すわけではない
定量的リスク分析の結果は、あくまで現在の情報に基づく予測です。
前提条件が変われば、結果も変化します。
そのため、分析結果を参考情報として活用し、継続的に見直すことが重要です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
IPAのプロジェクトマネージャ試験では、リスク分析をどのように意思決定へつなげたかが重要です。
午後試験では、以下の観点を説明できることが重要です。
- なぜ定量的分析が必要だったのか
- どのような手法を用いたのか
- 分析結果をどのように判断へ活用したのか
- 関係者へどのように説明したのか
単に「数値分析を実施した」と書くのではなく、その結果によってプロジェクトをどのように改善したかが重要です。
PM道場のワンポイント
定量的リスク分析の目的は、正確な未来予測ではなく、より良い意思決定を行うことです。
実務では、「分析結果の数字を出すこと」が目的になってしまうことがあります。
しかし、本当に重要なのは、その数字を見て、
- 追加対策を実施するのか
- 計画を変更するのか
- リスクを受け入れるのか
を判断することです。
優れたプロジェクトマネージャは、数字を目的ではなく、意思決定の材料として活用しています。
関連用語
- リスク(Risk)
- リスクマネジメント
- 定性的リスク分析
- リスク登録簿(Risk Register)
- 期待金額価値分析(EMV)
- モンテカルロ分析
- リスク対応計画
- 意思決定
まとめ
定量的リスク分析とは、リスクの影響を数値化し、プロジェクトの意思決定に活用する活動です。
期待金額価値分析やモンテカルロ分析などの手法を用いることで、リスクによる影響をより具体的に把握できます。
ただし、重要なのは分析結果そのものではありません。
数値化した情報をもとに、プロジェクトマネージャが適切な判断を行い、プロジェクト成功へつなげることが重要です。
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- 定性的リスク分析とは?
- リスク登録簿(Risk Register)とは?
- リスク対応計画とは?
- 課題(Issue)とは?
よくある質問(FAQ)
Q. 定量的リスク分析とは何ですか?
A. リスクがプロジェクト目標へ与える影響を、金額や期間などの数値で分析する活動です。
Q. 定性的リスク分析との違いは何ですか?
A. 定性的リスク分析は優先順位を決めるための分析、定量的リスク分析は影響を数値化するための分析です。
Q. すべてのプロジェクトで定量的リスク分析は必要ですか?
A. いいえ。大規模プロジェクトや影響が重大な場合など、必要性に応じて実施します。
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