「関係者全員が納得しないとプロジェクトは進められないのでしょうか。」
プロジェクトでは、多くのステークホルダーが関わるため、意見や立場が異なることは珍しくありません。
そのような状況で、プロジェクトを前へ進めるために重要なのが合意形成(Consensus Building)です。
この記事では、合意形成の意味や目的、進め方、実務で意識したいポイントについて解説します。
一言でいうと
合意形成とは、「関係者が十分に話し合い、それぞれの立場を理解したうえで、プロジェクトとして進むべき方向を決定するプロセス」です。
合意形成とは
合意形成とは、関係者同士が対話を重ね、共通の理解を持ちながら意思決定を行うことです。
プロジェクトでは、スコープやスケジュール、コスト、品質など、さまざまな場面で意思決定が必要になります。
PMBOK®︎では、ステークホルダーエンゲージメントやコミュニケーションマネジメントの中で、合意形成はプロジェクト成功のために欠かせない活動とされています。
合意形成が重要な理由
プロジェクトでは、正しい判断をすることだけでは十分ではありません。
関係者が決定内容を理解し、納得して行動できる状態を作ることが重要です。
例えば、次のようなケースがあります。
- 仕様変更を一部の関係者だけで決定してしまう
- スケジュール変更の理由が十分に共有されていない
- 役割分担について認識が一致していない
このような状態では、後から反対意見が出たり、作業の手戻りが発生したりする可能性があります。
そのため、プロジェクトでは意思決定だけでなく、合意形成のプロセスも重要になります。
合意形成の進め方
1. 関係者を明確にする
まず、誰の意見を確認する必要があるのかを整理します。
意思決定者だけでなく、影響を受ける関係者も把握することが重要です。
2. 情報を共有する
判断に必要な情報を関係者へ共有します。
情報量や認識に差があると、建設的な議論ができません。
3. 意見を整理する
賛成・反対だけではなく、それぞれの理由や懸念事項を整理します。
背景を理解することで、新しい解決策が見つかることもあります。
4. 意思決定を行う
議論を踏まえて、最終的な方針を決定します。
全員が完全に同じ意見になる必要はありませんが、決定内容を理解し、受け入れられる状態を目指します。
合意形成とネゴシエーションの違い
| 項目 | 合意形成 | ネゴシエーション |
|---|---|---|
| 目的 | 関係者全体の共通認識を作る | 利害が異なる相手と条件を調整する |
| 対象 | 複数の関係者 | 主に当事者同士 |
| 重視すること | 納得感と共通理解 | 双方が受け入れられる条件 |
ネゴシエーションが合意形成の一部として行われることもありますが、合意形成はより広い概念です。
実務ではこんな場面で活用される
例えば、プロジェクト途中で顧客から新機能の追加要望があったとします。
プロジェクトマネージャは、開発チーム、顧客、スポンサーと話し合い、次のような点を整理します。
- 追加機能の必要性
- スケジュールへの影響
- 追加コストの有無
- 優先順位の変更が可能か
その結果、「一部機能は今回対応し、残りは次回リリースで対応する」という方針で関係者が合意しました。
このように、異なる立場の意見を調整しながら、プロジェクト全体として最適な方向を決めることが合意形成です。
よくある勘違い
全員が100%賛成する必要はない
合意形成は、多数決や全会一致とは異なります。
最終的な判断に全員が完全に賛成していなくても、決定理由を理解し、協力できる状態であれば合意形成は成立します。
時間をかければよいわけではない
議論を続けるだけでは、プロジェクトは前へ進みません。
必要な情報を整理したうえで、適切なタイミングで意思決定することもプロジェクトマネージャの重要な役割です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
IPAのプロジェクトマネージャ試験では、関係者との調整や意思決定のプロセスが頻繁に問われます。
午後試験では、次のような観点を説明できることが重要です。
- どのような関係者と調整したか
- 異なる意見をどのように整理したか
- 最終的な意思決定に至った理由
- 合意形成によって得られた効果
「承認を得た」だけではなく、「関係者の理解と納得を得ながら意思決定を進めた」と説明できることが評価につながります。
PM道場のワンポイント
合意形成とは、「全員を同じ意見にすること」ではなく、「全員が前を向いて行動できる状態を作ること」です。
プロジェクトでは、立場が違えば意見が違うのは当然です。
優れたプロジェクトマネージャは、誰かを説得することよりも、互いの考えを理解し、共通のゴールへ向かえる環境を作っています。
そのためには、十分なコミュニケーションとファシリテーション、そして適切なネゴシエーションが欠かせません。
関連用語
- ネゴシエーション
- ファシリテーション
- コミュニケーションマネジメント
- ステークホルダー
- ステークホルダーエンゲージメント
- 意思決定
- エスカレーション
- リーダーシップ
まとめ
合意形成とは、関係者が十分に話し合い、それぞれの立場を理解したうえで、プロジェクトとして進むべき方向を決定するプロセスです。
重要なのは、全員を同じ意見にすることではなく、決定内容を理解し、協力して行動できる状態を作ることです。
プロジェクトマネージャにとって、合意形成はプロジェクトを円滑に進めるための重要なマネジメントスキルと言えるでしょう。
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- ファシリテーションとは?
- コミュニケーションマネジメントとは?
- ステークホルダーとは?
- エスカレーションとは?
- リーダーシップとは?
よくある質問(FAQ)
Q. 合意形成とは何ですか?
A. 関係者が十分に話し合い、それぞれの立場を理解したうえで、プロジェクトとして進むべき方向を決定するプロセスです。
Q. 合意形成とネゴシエーションの違いは何ですか?
A. 合意形成は関係者全体の共通認識を作る活動であり、ネゴシエーションは利害が異なる相手と条件を調整する交渉活動です。
Q. 合意形成では全員が賛成する必要がありますか?
A. いいえ。全会一致である必要はありません。決定理由を理解し、協力して行動できる状態を作ることが重要です。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
実際に合格した経験をもとに、勉強方法やおすすめ参考書、最難関といわれる午後Ⅱ論文の対策方法を詳しく解説しています。
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