プロジェクトでは、社内のメンバーだけでなく、顧客や外部ベンダー、協力会社など、さまざまな組織や人と関わります。
外部の企業にシステム開発を依頼したり、製品やサービスを購入したりする場合には、通常、契約を締結します。
契約には、単に「仕事をお願いします」という約束だけではなく、何を、誰が、どのような条件で行うのかが定められています。
そのため、プロジェクトマネージャにとって契約を理解することは非常に重要です。
特に、契約の範囲や納期、金額、成果物、責任分担などを正しく理解していないと、後になって「そこまで契約に含まれていない」「追加費用が必要になる」といった問題が発生する可能性があります。
一言でいうと
契約とは、当事者間で合意した内容や条件を定めたものです。
プロジェクトでは、契約によって、
- 何を提供するのか
- 誰が担当するのか
- いつまでに提供するのか
- いくら支払うのか
- どのような責任を負うのか
- 変更が発生した場合にどうするのか
などを明確にします。
つまり契約は、プロジェクトにおける当事者間の役割や条件を明確にするための重要な基盤です。
プロジェクトにおける契約とは
プロジェクトでは、外部の会社に業務を依頼するケースがあります。
例えば、システム開発プロジェクトであれば、
- システム開発会社に開発を依頼する
- コンサルティング会社に支援を依頼する
- クラウドサービスを契約する
- ハードウェアを購入する
- テストや運用を外部会社へ委託する
といった取引が考えられます。
こうした場合、契約によって双方の合意事項を明確にします。
例えば、システム開発を依頼するのであれば、
- 開発するシステムの範囲
- 納品する成果物
- 納期
- 契約金額
- 検収方法
- 品質に関する条件
- 変更が発生した場合の扱い
- 責任分担
などを定めます。
なぜプロジェクトマネージャに契約の理解が必要なのか
プロジェクトマネージャは、プロジェクトの計画や進捗だけを管理していればよいわけではありません。
外部企業と契約しているプロジェクトでは、契約条件を前提としてプロジェクトをマネジメントする必要があります。
例えば、顧客から「この機能も追加してほしい」と依頼されたとします。
その機能が契約の範囲に含まれているのであれば、通常の作業として対応する必要があります。
一方、契約の範囲に含まれていないのであれば、追加作業として扱う必要があるかもしれません。
この判断を誤ると、
- 想定外の作業が増える
- コストが増える
- スケジュールが遅れる
- 顧客との認識が食い違う
- ベンダーとのトラブルになる
といった問題につながります。
だからこそ、プロジェクトマネージャは契約上の責任範囲とプロジェクトの実際の作業範囲を理解しておく必要があります。
契約で確認する主な項目
契約の内容は契約形態やプロジェクトによって異なりますが、プロジェクトマネージャとしては次のような項目を確認しておくことが重要です。
| 項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 契約範囲 | 何が契約に含まれているのか |
| 成果物 | 何を納品するのか |
| 納期 | いつまでに成果物を提供するのか |
| 契約金額 | いくらで契約するのか |
| 支払条件 | いつ、どのように支払うのか |
| 検収 | 成果物をどのような条件で受け入れるのか |
| 責任分担 | 発注者と受注者がそれぞれ何を担当するのか |
| 変更管理 | 契約内容を変更する場合にどうするのか |
| 品質条件 | どのような品質を満たす必要があるのか |
| 契約期間 | 契約がいつからいつまで有効なのか |
代表的な契約の種類
プロジェクトでは、さまざまな契約形態が利用されます。
代表的なものとして、請負契約と準委任契約があります。
また、プロジェクトマネジメントでは、契約金額やリスクの負担方法という観点から、固定価格型や実費償還型などの契約方式を考えることもあります。
請負契約
請負契約では、一般的に仕事を完成させることを目的とします。
例えば、システムを開発して納品することなどが考えられます。
発注者から見ると、「決められた成果物を完成させてもらう」という契約です。
そのため、成果物や完成条件を明確にすることが重要になります。
準委任契約
準委任契約では、一般的に一定の業務を遂行することを目的とします。
例えば、プロジェクトへのPM支援やコンサルティング業務などが考えられます。
請負契約とは異なり、必ずしも特定の成果物を完成させること自体が契約の目的になるとは限りません。
実際の契約では個別の契約内容によって責任や条件が異なるため、契約書を確認することが重要です。
固定価格型の契約
固定価格型の契約では、契約時点で価格を定める方式です。
例えば、あるシステムを1,000万円で開発する契約を締結するとします。
契約後に受注者側の作業量が想定以上に増えたとしても、契約条件を変更しない限り、当初の契約金額が基本となります。
そのため、受注者側はコストや作業量が想定を超えるリスクを負いやすくなります。
一方、発注者側からすると、契約金額が明確になるため、予算を計画しやすいというメリットがあります。
実費償還型の契約
実費償還型の契約では、受注者が実際に負担したコストを基礎として支払う方式が一般的です。
契約によっては、実費に加えて報酬などを支払う形もあります。
この場合、発注者側がコスト増加のリスクを負いやすくなります。
そのため、実費の管理やコストの透明性が重要になります。
時間・材料型の契約
時間・材料型の契約では、作業にかかった時間や使用した材料などを基準として支払います。
例えば、エンジニアの作業時間に応じて費用を支払う契約などがあります。
要求事項が完全には固まっていない場合などに利用されることがありますが、作業時間が増えると費用も増えるため、発注者側では作業量やコストの管理が重要になります。
契約とプロジェクトスコープの関係
契約を理解するうえで重要なのが、スコープとの関係です。
契約には、受注者が実施する業務や提供する成果物が定められています。
つまり、契約内容はプロジェクトのスコープを考えるうえで重要な情報になります。
例えば、契約では「A機能とB機能を開発する」となっているにもかかわらず、プロジェクトチームがC機能まで開発しようとしているのであれば、その作業が契約上必要なのかを確認する必要があります。
「顧客が欲しいもの」と「契約で合意しているもの」は必ずしも同じとは限りません。
この違いを理解することが、スコープクリープや契約トラブルを防ぐうえで重要です。
契約変更とは
プロジェクトでは、契約締結後に要求や条件が変わることがあります。
例えば、
- 機能を追加したい
- 納期を変更したい
- 成果物を追加したい
- 作業範囲を変更したい
- 契約期間を延長したい
といったケースです。
このような場合、契約で定められた変更手続きに従って対応します。
重要なのは、口頭で合意しただけで作業を開始しないことです。
変更によってコストやスケジュール、責任範囲などが変わるのであれば、その影響を確認したうえで、必要な承認や契約変更を行うことが重要です。
契約とリスク
契約はプロジェクトのリスクにも大きく関係します。
例えば、
- 納期遅延のリスク
- 品質不足のリスク
- コスト超過のリスク
- 仕様変更のリスク
- 責任範囲が不明確になるリスク
- 外部ベンダーの倒産などのリスク
などがあります。
契約によって、これらのリスクを誰がどの程度負担するのかを定めることがあります。
そのため、契約を確認するときには、単に「何をするか」だけではなく、「何が起きたときに誰が責任を負うのか」という視点も重要です。
契約と課題管理
プロジェクトでは、契約内容と実際のプロジェクト状況に差が生じることがあります。
例えば、契約では10種類の成果物を作ることになっているのに、顧客から追加で3種類の成果物を要求されたとします。
この場合、単なる作業上の課題として扱うのではなく、契約範囲に含まれているのかを確認する必要があります。
契約範囲外であれば、変更要求として扱い、必要に応じて追加費用やスケジュールへの影響を協議します。
契約を無視して「とりあえず対応する」としてしまうと、後から大きな問題になる可能性があります。
契約とベンダーマネジメント
外部ベンダーを利用するプロジェクトでは、契約とベンダーマネジメントを切り離して考えることはできません。
ベンダーの作業範囲、成果物、納期、品質基準などを契約と照らし合わせながら管理する必要があります。
例えば、ベンダーから「この作業は契約範囲外なので対応できません」と言われた場合、感情的に「プロジェクトなのだから対応してください」と要求するのではなく、まず契約内容を確認します。
そのうえで、必要であれば変更や追加契約について協議します。
契約を基準にして、発注者とベンダーの責任範囲を明確にすることが、ベンダーマネジメントでは重要です。
契約でよくあるトラブル
契約範囲が曖昧
「この作業は当然含まれていると思っていた」という認識の違いは、契約トラブルの代表例です。
そのため、成果物や作業範囲をできるだけ具体的に定義することが重要です。
口頭で追加作業を依頼する
プロジェクトの現場では、顧客から「これもお願いできますか?」と簡単に依頼されることがあります。
しかし、その作業が契約範囲外であれば、後から費用や納期について問題になる可能性があります。
そのため、契約への影響を確認してから正式に対応することが重要です。
契約と実際のプロジェクト計画が一致していない
契約締結後にプロジェクト計画を作成した結果、契約条件と実際の作業内容に差が見つかることがあります。
この場合は早い段階で関係者と認識を合わせ、必要に応じて契約内容を見直す必要があります。
プロジェクトマネージャが契約を見るときのポイント
プロジェクトマネージャが契約を見るときには、細かな法律知識をすべて身につけることよりも、プロジェクト運営に影響する条件を理解することが重要です。
特に、次の項目は確認しておきたいポイントです。
- 契約の対象範囲
- 成果物
- 納期
- 契約金額
- 支払条件
- 検収条件
- 責任分担
- 品質条件
- 変更手続き
- 契約期間
- 問題発生時の対応
また、契約書だけを見るのではなく、契約内容とプロジェクト計画、WBS、スケジュール、成果物などが整合しているかを確認することも重要です。
契約書はプロジェクトマネージャだけで判断しない
契約には法律や会計、調達などの専門的な内容が含まれる場合があります。
そのため、プロジェクトマネージャが契約内容について疑問を感じた場合には、法務部門、調達部門、契約担当者などの専門部署に確認することが重要です。
特に、責任範囲や損害賠償、知的財産、秘密保持など、専門的な判断が必要な事項については、自己判断だけで進めないことが重要です。
プロジェクトマネージャに求められるのは、すべての法律問題を一人で判断することではありません。
契約がプロジェクトに与える影響を把握し、必要な専門家を適切に巻き込むことも重要なマネジメントです。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
契約については、単に「発注者と受注者の約束」と覚えるだけではなく、契約によってプロジェクトの責任範囲や条件が定められることを理解しておきましょう。
特に重要なのは、
- 契約範囲
- 成果物
- 納期
- コスト
- 責任分担
- 変更管理
- リスク分担
- 検収
などです。
また、契約の種類によって、発注者と受注者が負うリスクが異なることも重要です。
例えば固定価格型の契約では、受注者側がコスト超過のリスクを負いやすくなります。
一方、実費償還型の契約では、発注者側がコスト増加のリスクを負いやすくなります。
契約問題が発生した場合には、感覚的に判断するのではなく、まず契約条件を確認し、そのうえで関係者と協議することが基本です。
PM道場のワンポイント
プロジェクトマネージャにとって契約は、「プロジェクトを動かすための前提条件」です。
私は、プロジェクトで問題が起きたときほど、まず「契約上どうなっているのか」を確認することが重要だと考えています。
例えば、顧客から追加作業を依頼されたとします。
そこで、
「顧客が言っているから対応しよう」
とすぐに作業を始めてしまうと、後から「その作業は契約に含まれているのか?」という問題になる可能性があります。
逆に、
「契約にないので一切対応しません」
と突っぱねるのも、必ずしも良い対応とは限りません。
重要なのは、
契約範囲を確認する → 影響を整理する → 関係者と協議する → 必要なら契約を変更する
というプロセスです。
また、契約は「相手を縛るためのもの」と考えるより、発注者と受注者の認識を合わせるための共通ルールと考えると分かりやすいと思います。
プロジェクトマネージャは契約の専門家である必要はありません。
しかし、契約がプロジェクトのスコープ、スケジュール、コスト、品質、リスクにどのような影響を与えるのかは理解しておく必要があります。
「プロジェクト計画を見る前に、まず契約を見る」
外部ベンダーと進めるプロジェクトでは、この視点を持っておくことが非常に重要です。
関連用語
- ベンダーマネジメント
- RFP
- 調達マネジメント
- スコープ
- WBS
- 変更管理
- リスク
- 課題
- コスト
- 予算
- 見積もり
- ステークホルダー
- エスカレーション
まとめ
契約とは、当事者間で合意した内容や条件を定めたものです。
プロジェクトでは、契約によって作業範囲、成果物、納期、金額、責任分担、変更手続きなどを明確にします。
プロジェクトマネージャにとって重要なのは、契約書を法律文書として読むだけではありません。
契約がプロジェクトのスコープ、スケジュール、コスト、品質、リスクにどのような影響を与えるのかを理解することです。
特に外部ベンダーを利用するプロジェクトでは、
- 契約範囲
- 成果物
- 納期
- 契約金額
- 責任分担
- 変更手続き
- 検収条件
などを確認しておくことが重要です。
また、契約締結後に要求や条件が変わった場合には、契約への影響を確認し、必要に応じて正式な変更手続きを行います。
契約を無視してプロジェクトを進めると、後になって大きなコストやスケジュール、責任上の問題につながる可能性があります。
契約をプロジェクトの前提条件として理解し、その条件の中でプロジェクトを適切にマネジメントする。
これがプロジェクトマネージャにとっての契約管理の基本です。
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よくある質問(FAQ)
Q. プロジェクトにおける契約とは何ですか?
A. 発注者と受注者などの当事者間で、作業範囲、成果物、納期、金額、責任分担などの条件を合意したものです。
Q. プロジェクトマネージャは契約書を確認する必要がありますか?
A. はい。プロジェクトの作業範囲、成果物、納期、コスト、責任分担、変更条件など、プロジェクト運営に影響する内容を理解しておくことが重要です。
Q. 契約範囲外の作業を依頼されたらどうすればよいですか?
A. まず契約内容を確認し、その作業が契約範囲に含まれているかを確認します。範囲外であれば、コストやスケジュールなどへの影響を整理し、必要に応じて変更や追加契約について協議します。
Q. 請負契約と準委任契約の違いは何ですか?
A. 一般的に、請負契約は仕事の完成を目的とするのに対し、準委任契約は一定の業務を遂行することを目的とします。ただし、具体的な責任や条件は個々の契約内容によって異なるため、契約書の確認が必要です。
Q. 契約変更はなぜ重要ですか?
A. 契約後に作業範囲、成果物、納期などが変わると、コストや責任分担にも影響する可能性があります。変更内容と影響を確認し、必要な承認や契約変更を行うことが重要です。
Q. プロジェクトマネージャは契約に関する法律をすべて理解する必要がありますか?
A. 必ずしもすべての法律知識が必要なわけではありません。ただし、契約がプロジェクトに与える影響を理解し、専門的な判断が必要な場合には法務や調達などの専門部署に相談することが重要です。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
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