「プロジェクトマネジメント原則って何?」
PMBOK®︎ガイドについて調べていると、「プロジェクトマネジメント原則」という言葉が出てきます。
プロジェクトマネジメント原則とは、プロジェクトを成功に導くために、プロジェクトマネージャやプロジェクトチームが大切にすべき考え方をまとめたものです。
特にPMBOK®︎ガイド第7版では、プロジェクトマネジメントを「プロセス」だけではなく、「原則」という観点から捉える考え方が示されています。
原則を理解することで、「何をすればいいのか」だけではなく、「なぜそのような行動をするのか」を考えやすくなります。
一言でいうと
プロジェクトマネジメント原則とは、プロジェクトマネジメントを実践するうえで大切にすべき基本的な考え方です。
例えば、プロジェクトではステークホルダーとの関係、チームづくり、価値の提供、品質、リスクなど、さまざまなことを考える必要があります。
プロジェクトマネジメント原則は、こうした場面でプロジェクトマネージャが判断するときの基本的な考え方になります。
プロジェクトマネジメント原則が重要な理由
プロジェクトには、一つとして同じものはありません。
プロジェクトの規模や業界、組織、メンバー、顧客、技術、要求などが異なるため、すべてのプロジェクトに同じ方法を当てはめることはできません。
そのため、プロジェクトマネージャには、状況に応じて判断する能力が求められます。
そこで重要になるのが「原則」です。
原則を理解していれば、具体的な方法が変わっても、
「この状況では、何を大切にして判断すべきか?」
を考えることができます。
つまり、プロジェクトマネジメント原則は、特定の手順を覚えるためのものではなく、状況に応じた判断の土台となる考え方です。
PMBOK®︎ガイド第7版の12のプロジェクトマネジメント原則
PMBOK®︎ガイド第7版では、プロジェクトマネジメントの原則として12の原則が示されています。
- スチュワードシップ
- チーム
- ステークホルダー
- 価値
- システム思考
- リーダーシップ
- テーラリング
- 品質
- 複雑性
- リスク
- 適応性と回復力
- 変革
ここから、それぞれの原則を簡単に見ていきます。
1.スチュワードシップ
スチュワードシップとは、プロジェクトを責任ある立場で管理し、組織やステークホルダー、社会などに対して責任を持って行動することです。
プロジェクトマネージャは、単にスケジュールやコストを管理するだけではありません。
プロジェクトによって生み出される価値や、関係者への影響なども考える必要があります。
例えば、短期的な利益だけを優先して品質を大幅に犠牲にするような判断は、長期的には顧客や組織に大きな損失を与える可能性があります。
目の前のプロジェクトだけではなく、より広い視点で責任を持って判断することが重要です。
2.チーム
チームとは、プロジェクトに関わるメンバーが協力し、共通の目的に向かって活動することを重視する考え方です。
プロジェクトは、プロジェクトマネージャ一人で成功させるものではありません。
開発、営業、品質、調達など、さまざまな専門性を持つメンバーが協力して進めます。
そのため、単にメンバーへ仕事を割り当てるだけではなく、信頼関係を構築し、チームとして協働できる環境を作ることが重要です。
3.ステークホルダー
ステークホルダーとは、プロジェクトに影響を与えたり、プロジェクトから影響を受けたりする人や組織のことです。
プロジェクトを成功させるためには、ステークホルダーとの関係を適切に管理する必要があります。
例えば、顧客、経営層、プロジェクトメンバー、利用者、協力会社などがステークホルダーになります。
重要なのは、単にステークホルダーへ情報を伝えるだけではありません。
相手の期待や関心を理解し、適切に関与してもらうことが重要です。
4.価値
価値とは、プロジェクトによって生み出される成果や便益に焦点を当てる考え方です。
プロジェクトでは、スケジュール通りに終わらせることや、予算内に収めることだけが目的ではありません。
最終的に、顧客や組織にどのような価値を提供できたのかが重要です。
例えば、システムを予定通り完成させても、誰にも利用されなければ、本来期待していた価値を生み出せていないかもしれません。
「作ること」ではなく、「何のために作るのか」を意識することが重要です。
5.システム思考
システム思考とは、プロジェクトを個々の要素だけで見るのではなく、要素同士の関係や全体への影響まで考えることです。
プロジェクトでは、一つの変更が別の領域に影響することがあります。
例えば、機能を追加すると、開発工数が増え、スケジュールが延び、コストが増加する可能性があります。
このように、プロジェクトを部分的に見るだけではなく、全体のつながりを意識することが重要です。
6.リーダーシップ
リーダーシップとは、プロジェクトの目標に向かって人々を導くことです。
リーダーシップは、単に指示を出すことではありません。
状況に応じて、メンバーを支援したり、意思決定を行ったり、対立を解消したりすることも含まれます。
また、プロジェクトマネージャだけがリーダーシップを発揮する必要があるわけではありません。
プロジェクトメンバーそれぞれがリーダーシップを発揮することも重要です。
7.テーラリング
テーラリングとは、プロジェクトの特性に合わせて、プロジェクトマネジメントの方法を調整することです。
すべてのプロジェクトに同じ管理方法を適用する必要はありません。
例えば、小規模なプロジェクトに大規模プロジェクトと同じレベルの管理資料を要求すると、管理そのものが負担になる可能性があります。
一方、非常に複雑なプロジェクトでは、より詳細な管理が必要になる場合があります。
「何をするか」だけではなく、「どこまでやる必要があるか」を考えることがテーラリングです。
8.品質
品質とは、要求事項や期待される成果を満たすことに焦点を当てる考え方です。
品質は、プロジェクトの最後に検査すればよいものではありません。
プロジェクトの計画や設計、開発など、最初から品質を意識することが重要です。
「完成したものを検査する」だけではなく、品質を作り込むという考え方が重要になります。
9.複雑性
複雑性とは、プロジェクトに存在する複雑な状況を認識し、適切に対応することです。
プロジェクトでは、技術だけではなく、人間関係、組織、政治的要因、要求の変化など、さまざまな要素が絡み合います。
そのため、問題が起きたときに一つの原因だけを探しても解決できない場合があります。
プロジェクトを取り巻くさまざまな要素の関係を理解し、状況に応じて対応することが重要です。
10.リスク
リスクとは、将来発生する可能性があり、プロジェクトの目標に影響を与える不確実な事象や状態です。
プロジェクトでは、リスクを完全になくすことはできません。
そのため、リスクを特定し、分析し、適切な対応を検討することが重要です。
また、リスクにはマイナスの影響だけではなく、プラスの影響をもたらす可能性のあるものもあります。
「問題が起きないようにする」だけではなく、不確実性を適切に管理するという視点が重要です。
11.適応性と回復力
適応性と回復力とは、プロジェクトの状況が変化したときに適応し、問題が発生しても立て直せるようにする考え方です。
プロジェクトでは、計画通りに進まないことがあります。
要求変更、技術的な問題、メンバーの離脱、市場環境の変化など、さまざまな変化が発生します。
重要なのは、変化を完全に防ぐことではありません。
変化が起きることを前提に、柔軟に対応できるプロジェクトにしておくことが重要です。
12.変革
変革とは、プロジェクトによって生じる変化を適切に支援し、組織や関係者が新しい状態へ移行できるようにすることです。
プロジェクトでは、成果物を完成させるだけで終わらないことがあります。
新しいシステムを導入すれば、利用者の仕事の進め方が変わるかもしれません。
新しい業務プロセスを導入すれば、組織そのものが変わるかもしれません。
そのため、成果物を作るだけではなく、その成果物によって起こる変化をマネジメントすることも重要です。
12の原則は独立しているわけではない
12の原則は、それぞれ独立した考え方ではありません。
実際のプロジェクトでは、複数の原則を同時に考える必要があります。
例えば、顧客から大きな要求変更があったとします。
この場合、
- ステークホルダーとの関係を考える
- チームへの影響を考える
- 価値を考える
- 変更によるリスクを考える
- プロジェクト全体への影響を考える
- 必要に応じて計画をテーラリングする
- 変化に適応する
といった複数の視点が必要になります。
つまり、プロジェクトマネジメント原則は一つずつ順番に実施するプロセスではなく、プロジェクト全体を考えるための視点と捉えると分かりやすいでしょう。
プロジェクトマネジメント原則とプロセスの違い
プロジェクトマネジメント原則とプロセスは、似ているようで役割が異なります。
| プロジェクトマネジメント原則 | プロセス | |
|---|---|---|
| 意味 | 大切にすべき基本的な考え方 | 具体的な活動や手順 |
| 目的 | 判断や行動の方向性を示す | プロジェクトを具体的に管理する |
| 特徴 | 状況に応じて解釈・適用する | 具体的な活動として整理される |
例えば、「品質を重視する」というのは原則です。
一方で、「レビューを実施する」「テストを行う」といった活動は、品質を確保するための具体的な方法です。
原則が「なぜ・何を大切にするか」を示し、プロセスや方法が「具体的にどう行動するか」を支える、と考えると理解しやすいでしょう。
プロジェクトマネージャが原則を活用する方法
意思決定の基準にする
プロジェクトでは、正解が一つに決まっていない問題に直面することがあります。
そのようなときに、原則を判断基準として利用できます。
例えば、「この変更を受け入れるべきか?」という判断をするとき、単純にスケジュールだけを見るのではなく、価値、リスク、ステークホルダー、品質などを総合的に考えます。
プロジェクトを振り返る
プロジェクト終了後に12の原則を使って振り返る方法もあります。
例えば、
- ステークホルダーとの関係は適切だったか
- チームはうまく協働できていたか
- 本当に価値を生み出せたか
- 品質を適切に管理できたか
- リスクに適切に対応できたか
- 変化に適応できたか
といった観点から振り返ります。
これにより、単に「納期を守れた」「予算内に収まった」という結果だけではなく、プロジェクトマネジメントそのものの質を振り返ることができます。
プロジェクトマネジメント原則を学ぶときのポイント
暗記だけにしない
12の原則を名前だけ暗記しても、実務で使える知識にはなりません。
「この原則は、実際のプロジェクトでどんな場面に関係するのか?」を考えることが重要です。
自分の経験と結び付ける
例えば、「ステークホルダー」という原則を学んだら、過去のプロジェクトで誰との関係に苦労したのかを思い出してみます。
「あのとき、もっと早くステークホルダーを巻き込んでいればよかった」と気づくかもしれません。
このように経験と結び付けることで、原則が単なる知識ではなく、実務で使える判断基準になります。
原則同士の関係を考える
12の原則は、それぞれが相互に関係しています。
例えば、チームの問題がステークホルダーとの関係に影響したり、要求変更がリスクや品質に影響したりすることがあります。
そのため、一つの原則だけを見るのではなく、プロジェクト全体を俯瞰して考えることが重要です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
プロジェクトマネジメント原則を学ぶときは、12の原則の名前を覚えるだけではなく、それぞれが実際のプロジェクトでどのような行動につながるのかを理解しておくことが重要です。
特に、
- ステークホルダー
- チーム
- 価値
- リーダーシップ
- テーラリング
- 品質
- リスク
- 適応性
- 変革
などは、プロジェクトのさまざまな場面で関係します。
「この状況なら、どの原則を意識すべきか?」という視点で考えると、原則を実務に結び付けやすくなります。
PM道場のワンポイント
プロジェクトマネジメント原則は、「PMとしてどう考えるか」の土台になるものです。
PMの仕事では、「正解が書いてあるマニュアル」が存在しない場面がたくさんあります。
例えば、顧客から突然大きな変更要求が出てきたとします。
「変更だから拒否する」のか、「顧客だから受け入れる」のか。
どちらか一方が必ず正解とは限りません。
そのときに、
「この変更によってどんな価値が生まれるのか?」
「ステークホルダーへの影響はどうか?」
「チームにどんな影響があるか?」
「リスクはどう変化するか?」
「品質への影響はないか?」
「プロジェクト全体としてどう判断すべきか?」
と考えていきます。
このように、プロジェクトマネジメント原則は答えを教えてくれるものではなく、答えを考えるための視点を与えてくれるものです。
私は、PMBOK®︎ガイド第7版の原則を学ぶときには、「12個の項目を覚える」というよりも、「PMとして判断するときの12個の視点を増やす」と考えると分かりやすいと思います。
経験を積んだプロジェクトマネージャほど、「何をするか」だけではなく、「なぜそうするのか」を考えています。
プロジェクトマネジメント原則は、その「なぜ」を考えるための土台になる考え方です。
関連用語
- PMBOK®︎ガイド
- パフォーマンス・ドメイン
- テーラリング
- プロセス群
- 知識エリア
- ステークホルダー・エンゲージメント
- リーダーシップ
- チーム
- リスクマネジメント
- 品質マネジメント
- アジャイル
- 意思決定
- 価値
まとめ
プロジェクトマネジメント原則とは、プロジェクトマネジメントを実践するうえで大切にすべき基本的な考え方です。
PMBOK®︎ガイド第7版では、次の12の原則が示されています。
- スチュワードシップ
- チーム
- ステークホルダー
- 価値
- システム思考
- リーダーシップ
- テーラリング
- 品質
- 複雑性
- リスク
- 適応性と回復力
- 変革
これらは、具体的な作業手順を示したものではありません。
プロジェクトの状況に応じて、プロジェクトマネージャが適切に判断するための基本的な視点です。
そのため、12の原則を単純に暗記するのではなく、実際のプロジェクトで「この原則なら、どのような行動につながるだろう?」と考えることが重要です。
プロジェクトマネジメント原則を理解することで、決められた手順を実行するだけではなく、状況に応じて考え、判断できるプロジェクトマネージャに近づくことができます。
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- 知識エリアとは?
- ステークホルダー・エンゲージメントとは?
- リーダーシップとは?
- リスクマネジメントとは?
- 品質マネジメントとは?
- アジャイルとは?
- 意思決定とは?
- 価値とは?
よくある質問(FAQ)
Q. プロジェクトマネジメント原則とは何ですか?
A. プロジェクトマネジメントを実践するうえで大切にすべき基本的な考え方です。PMBOK®︎ガイド第7版では、12のプロジェクトマネジメント原則が示されています。
Q. PMBOK®︎ガイド第7版の12の原則とは何ですか?
A. スチュワードシップ、チーム、ステークホルダー、価値、システム思考、リーダーシップ、テーラリング、品質、複雑性、リスク、適応性と回復力、変革の12の原則です。
Q. プロジェクトマネジメント原則は暗記する必要がありますか?
A. 名前を覚えるだけでは十分ではありません。それぞれの原則が実際のプロジェクトでどのような判断や行動につながるのかを理解することが重要です。
Q. プロジェクトマネジメント原則とプロセスの違いは何ですか?
A. 原則はプロジェクトマネジメントにおける基本的な考え方であり、プロセスは具体的な活動や手順です。原則を判断の土台として、プロジェクトの状況に応じて具体的な方法を選択します。
Q. プロジェクトマネジメント原則は実務で使えますか?
A. はい。特に、正解が一つに決まっていない問題に直面したときの判断基準として活用できます。また、プロジェクト終了後の振り返りにも利用できます。
Q. プロジェクトマネジメント原則とパフォーマンス・ドメインの違いは何ですか?
A. プロジェクトマネジメント原則は「どのような考え方を大切にするか」を示すもので、パフォーマンス・ドメインは「プロジェクトでどのような領域に取り組む必要があるか」という観点から整理されたものです。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
実際に合格した経験をもとに、勉強方法やおすすめ参考書、最難関といわれる午後Ⅱ論文の対策方法を詳しく解説しています。
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