「メンバー同士の意見が合わない」
「顧客と開発チームの要求が対立している」
「A社とB社で責任の押し付け合いになっている」
プロジェクトを進めていると、このような対立が発生することがあります。
プロジェクトには、さまざまな立場や考え方を持った人が関わります。
そのため、意見や利害が完全に一致することはありません。
そこで重要になるのがコンフリクトマネジメントです。
コンフリクトマネジメントは、単純に「喧嘩を仲裁すること」ではありません。
対立している人たちの意見や背景を理解し、問題の原因を整理しながら、プロジェクトにとって適切な解決策を見つけていく活動です。
一言でいうと
コンフリクトマネジメントとは、プロジェクト内で発生する意見や利害の対立を適切に管理し、プロジェクトの成果につなげることです。
簡単に言えば、
「対立を放置せず、適切に扱って、より良い方向に導くこと」
です。
ここで重要なのは、コンフリクト=悪いものとは限らないということです。
異なる意見がぶつかることで、それまで気づかなかった問題が見つかったり、より良いアイデアが生まれたりすることもあります。
そのため、PMには「対立をなくす」のではなく、対立を適切にマネジメントする力が求められます。
コンフリクトが起こる原因
プロジェクトでコンフリクトが起こる原因はさまざまです。
代表的なものとして、次のようなものがあります。
- プロジェクトの優先順位に対する認識の違い
- スケジュールに対する意見の違い
- リソースの取り合い
- 予算に対する考え方の違い
- 要求事項に対する認識の違い
- 役割や責任範囲の曖昧さ
- 技術的な意見の違い
- コミュニケーション不足
- 組織間の利害関係
- 個人の価値観や考え方の違い
例えば、顧客は「機能を増やしたい」と考えている一方、開発チームは「納期を守るためには機能を減らしたい」と考えているとします。
どちらも自分たちの立場から見ると正しい意見です。
このような場合、単純に「どちらが正しいか」を決めようとすると対立が激しくなる可能性があります。
そこで、プロジェクト全体の目的や制約を踏まえて、双方が納得できる解決策を探します。
コンフリクトは悪いものなのか?
コンフリクトという言葉には、どうしても「悪いもの」というイメージがあります。
しかし、すべてのコンフリクトが悪いわけではありません。
例えば、プロジェクトの設計方法について、2人のエンジニアが異なる意見を持っていたとします。
お互いが根拠を示して議論することで、両方の案よりも優れた第三の案が見つかるかもしれません。
このような建設的な対立は、プロジェクトにとってプラスになることがあります。
一方で、個人攻撃や感情的な対立に発展してしまうと、チームワークを壊し、プロジェクトに悪影響を与えます。
そのためPMには、
「対立をなくす」のではなく、「建設的な議論に変える」
という視点が重要です。
コンフリクトマネジメントの基本的な流れ
コンフリクトが発生した場合、まず感情的に解決しようとするのではなく、状況を整理することが重要です。
基本的には、次のような流れで考えるとよいでしょう。
- コンフリクトの存在を把握する
- 対立している論点を整理する
- それぞれの意見や背景を確認する
- プロジェクトの目的や制約を確認する
- 解決策を検討する
- 必要に応じて意思決定する
- 合意した内容を共有する
- その後の状況を確認する
特に重要なのは、「何について対立しているのか」を明確にすることです。
人間関係の問題に見えても、実際には役割分担が曖昧だったり、プロジェクトの優先順位が共有されていなかったりすることがあります。
まず「人」と「問題」を分ける
コンフリクトマネジメントで重要な考え方の一つが、人と問題を分けることです。
例えば、
「あの人はいつも無理な要求をしてくる」
と考えてしまうと、相手そのものを問題視してしまいます。
しかし、実際に解決すべきなのは、
「なぜその要求が必要なのか」
「プロジェクトのどの制約と衝突しているのか」
という問題かもしれません。
相手を責めるのではなく、何が問題なのかを切り分けることが重要です。
相手の立場を理解する
対立しているときは、自分の意見を理解してもらうことばかり考えてしまいがちです。
しかし、コンフリクトを解決するためには、まず相手がなぜその意見を持っているのかを理解することが重要です。
例えば、顧客が追加機能を要求している場合、単純に「要求が多い」と考えるのではなく、
「なぜその機能が必要なのか?」
を確認します。
もしかすると、その機能がないと業務上の重要な問題が解決できないのかもしれません。
背景を理解することで、別の解決策が見つかる可能性があります。
コンフリクトへの代表的な対応方法
コンフリクトへの対応には、さまざまな方法があります。
代表的な考え方として、次のようなものがあります。
協力・問題解決
双方の意見や要求を確認し、根本的な問題を解決する方法です。
「どちらが勝つか」ではなく、双方が納得できる解決策を探します。
例えば、納期と機能追加が対立している場合、機能を優先順位付けし、一部の機能を次のリリースに回すといった方法があります。
プロジェクトマネジメントでは、特に重要なアプローチです。
妥協
双方がある程度譲歩して、現実的な解決策を見つける方法です。
例えば、AチームとBチームが同じリソースを必要としている場合、それぞれが利用できる時間を分けるといった方法があります。
完全な解決ではなくても、双方が受け入れられるポイントを探します。
受容・適応
相手の要求を受け入れることで、コンフリクトを収束させる方法です。
プロジェクトへの影響が小さく、相手の要求を受け入れることが合理的な場合などに有効です。
回避
すぐに解決しようとせず、いったん距離を置いたり、問題を後回しにしたりする方法です。
例えば、感情的になっている状態で話し合いを続けても解決が難しい場合、いったん時間を置いてから再度話し合うことがあります。
ただし、単純に問題を放置することとは違います。
「今は解決するタイミングではない」と判断して戦略的に保留することが重要です。
強制・指示
PMなどの責任者が意思決定し、一方の案を採用する方法です。
緊急性が高く、すぐに意思決定しなければプロジェクトに大きな影響が出る場合などには必要になることがあります。
ただし、常にこの方法を使っていると、メンバーの納得感や主体性が低下する可能性があります。
どの方法を使えばよいのか?
重要なのは、「どの方法が一番優れている」と決めつけないことです。
状況によって適切な方法は変わります。
| 対応方法 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 協力・問題解決 | 根本原因を解決する | 重要な問題、長期的な関係が必要な場合 |
| 妥協 | 双方が譲歩する | 短時間で現実的な解決策が必要な場合 |
| 受容・適応 | 相手の意見を受け入れる | 相手の要求を優先することが合理的な場合 |
| 回避 | 一時的に保留する | 冷静な話し合いが難しい場合など |
| 強制・指示 | 責任者が判断する | 緊急時や明確な意思決定が必要な場合 |
PMは、状況に応じて適切な方法を選択する必要があります。
コンフリクトマネジメントで重要なコミュニケーション
コンフリクトを解決するうえで、コミュニケーションは非常に重要です。
特に意識したいのが、相手の意見を否定する前に、相手の話を聞くことです。
例えば、
「それは無理です」
と最初から否定するのではなく、
「なぜその機能が必要なのか教えてください」
と質問してみます。
相手の背景を理解することで、対立しているように見えた意見が、実は同じ目的を目指していることに気づく場合があります。
コンフリクトマネジメントと合意形成
コンフリクトマネジメントと合意形成は密接に関係しています。
コンフリクトを解決するためには、最終的に関係者が納得できる方向性を決める必要があるからです。
ただし、合意形成とは「全員の意見を完全に一致させること」ではありません。
意見が異なっていても、
「この方針で進めることに納得する」
という状態を作ることが重要です。
そのため、PMにはコンフリクトマネジメントだけでなく、合意形成や意思決定のスキルも求められます。
コンフリクトマネジメントとファシリテーション
ファシリテーションも、コンフリクトマネジメントに役立つスキルです。
ファシリテーションとは、会議や議論を円滑に進め、参加者から意見を引き出しながら、議論を整理していくことです。
意見が対立している会議では、PMが一方の意見に肩入れするのではなく、
- 論点を整理する
- 双方の意見を確認する
- 共通している部分を見つける
- 相違点を明確にする
- 判断基準を整理する
ことで、建設的な議論に変えていくことができます。
コンフリクトマネジメントでよくある失敗
対立を避け続ける
「揉めたくない」という理由で対立を避け続けると、問題が大きくなることがあります。
小さな認識違いの段階で話し合っておけば解決できた問題が、後になって大きな問題になることもあります。
対立そのものを恐れるのではなく、必要な議論として向き合うことが重要です。
どちらが正しいかを決めようとする
コンフリクトでは、必ずしも「Aが正しい」「Bが間違っている」と決められるとは限りません。
双方に合理的な理由がある場合もあります。
そのため、個人の正しさを競うのではなく、プロジェクトの目的にとって何が最適かという視点で考えることが重要です。
感情的に対応する
対立が激しくなると、相手の言い方や態度に反応してしまうことがあります。
しかし、PMが感情的になると、さらに対立が激しくなる可能性があります。
事実と意見を分け、論点を整理して冷静に対応することが重要です。
表面的な問題だけを解決する
「とりあえず今回はA案で進めましょう」と決めても、根本原因が残っていれば、同じコンフリクトが再び発生する可能性があります。
なぜ対立が起きたのか、その背景まで確認することが重要です。
プロジェクトマネージャにとってのコンフリクトマネジメント
PMは、プロジェクトの中でさまざまな立場の人をつなぐ役割を担います。
そのため、コンフリクトが起きること自体は珍しいことではありません。
むしろ、
「コンフリクトが起こらないチーム」よりも、「コンフリクトが起きても建設的に解決できるチーム」
のほうが強いチームだと考えることもできます。
PMがすべての対立を自分で解決する必要もありません。
メンバー同士で解決できるのであれば、PMは必要以上に介入せず、必要なときに支援することも重要です。
一方、対立がプロジェクト全体に影響する場合には、PMが介入して論点を整理し、意思決定や合意形成を支援する必要があります。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
コンフリクトマネジメントを学ぶときは、次の用語と関連付けて整理しておくとよいでしょう。
- リーダーシップ
- サーバントリーダーシップ
- コミュニケーションマネジメント
- ファシリテーション
- ネゴシエーション
- 合意形成
- 意思決定
- ステークホルダーエンゲージメント
- チームマネジメント
- チームビルディング
特に重要なのは、「対立を避けること」と「コンフリクトをマネジメントすること」は違うという点です。
意見の違いを適切に扱い、プロジェクトにとってより良い結果につなげることがコンフリクトマネジメントです。
PM道場のワンポイント
コンフリクトは、必ずしも悪いものではありません。
PMをしていると、意見の対立が起きるたびに、
「どうやって揉めないようにしようか」
と考えてしまうことがあります。
しかし、プロジェクトにはさまざまな専門家が参加しています。
全員が同じ意見になるほうが、むしろ不自然です。
重要なのは、意見の違いをなくすことではありません。
「なぜその意見なのか」をお互いに理解し、プロジェクトの目的に照らして最適な答えを探すことです。
私自身、PMとして仕事をする中で、意見が対立することは何度もありました。
そのときに意識したいのは、相手を説得することよりも、まず相手の背景を理解することです。
「なぜこの人はこの意見を持っているのか?」
と考えてみると、実は自分と目指しているものは同じで、重視しているポイントが違うだけということがあります。
そうであれば、「どちらが正しいか」を争う必要はありません。
お互いが大切にしているものを整理して、プロジェクトとしての最適解を探せばよいのです。
コンフリクトマネジメントは、対立を消すためのスキルではありません。
対立を、より良い意思決定につなげるためのPMの重要なスキルだと考えると、実務でも活用しやすくなります。
関連用語
- リーダーシップ
- サーバントリーダーシップ
- ファシリテーション
- ネゴシエーション
- 合意形成
- 意思決定
- コミュニケーションマネジメント
- ステークホルダーエンゲージメント
- チームマネジメント
- チームビルディング
まとめ
コンフリクトマネジメントとは、プロジェクト内で発生する意見や利害の対立を適切に管理し、プロジェクトの成果につなげることです。
プロジェクトでは、立場や専門性の違いから、さまざまなコンフリクトが発生します。
そのため、PMには、
- 対立している論点を整理する
- 相手の意見や背景を理解する
- プロジェクトの目的や制約を確認する
- 解決策を検討する
- 必要に応じて意思決定する
- 関係者の合意形成を支援する
といった対応が求められます。
また、コンフリクトは必ずしも悪いものではありません。
異なる意見をぶつけ合うことで、より良いアイデアや意思決定につながることもあります。
重要なのは、「対立をなくす」のではなく、「建設的な対立にする」ことです。
PMにとってコンフリクトマネジメントは、プロジェクトを円滑に進めるためだけではなく、異なる意見をプロジェクトの力に変えるための重要なスキルと言えるでしょう。
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- ファシリテーションとは?
- ネゴシエーションとは?
- 合意形成とは?
- 意思決定とは?
- コミュニケーションマネジメントとは?
- ステークホルダーエンゲージメントとは?
- チームマネジメントとは?
よくある質問(FAQ)
Q. コンフリクトマネジメントとは何ですか?
A. プロジェクト内で発生する意見や利害の対立を適切に管理し、プロジェクトの成果につなげることです。対立を単純になくすのではなく、建設的な議論に変えることが重要です。
Q. コンフリクトは悪いものですか?
A. 必ずしも悪いものではありません。異なる意見を議論することで、問題が明らかになったり、より良い解決策が生まれたりすることがあります。重要なのは、対立を適切にマネジメントすることです。
Q. コンフリクトが起きたらPMがすぐに仲裁すべきですか?
A. 必ずしもそうではありません。メンバー同士で解決できるのであれば、PMは必要以上に介入せず支援する方法もあります。一方、プロジェクト全体に影響する場合や、当事者だけでは解決できない場合には、PMが介入する必要があります。
Q. コンフリクトへの対応方法にはどのようなものがありますか?
A. 代表的な方法として、協力・問題解決、妥協、受容・適応、回避、強制・指示などがあります。どの方法が適切かは、問題の重要度、緊急度、関係者との関係性などによって変わります。
Q. コンフリクトマネジメントとネゴシエーションの違いは何ですか?
A. コンフリクトマネジメントは、プロジェクト内の対立を適切に管理するための幅広い活動です。ネゴシエーションは、その中で関係者が条件や意見を調整し、合意を目指すための具体的なコミュニケーション手法の一つです。
Q. コンフリクトマネジメントと合意形成は関係ありますか?
A. はい。対立を解決するためには、最終的に関係者が一定の方向性に納得して進める必要があるため、合意形成と密接に関係しています。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
実際に合格した経験をもとに、勉強方法やおすすめ参考書、最難関といわれる午後Ⅱ論文の対策方法を詳しく解説しています。
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