PMとして強くなるには、どんなスキルが必要なのでしょうか。
「PMとしてもっと成長したい」
そう思ったとき、何を身につければよいのでしょうか。
コミュニケーション能力でしょうか。
リーダーシップでしょうか。
ロジカルシンキングでしょうか。
あるいは、プロジェクトマネジメントの専門知識でしょうか。
PMに求められるスキルは非常に多くあります。
そして、PMとして経験を積めば積むほど、
「PMに必要なスキルは一つではない」
ということを実感するようになります。
私は、PMに必要なスキルを大きく4つに分けて考えています。
- 対人スキル
- 思考系スキル
- PM専門系スキル
- 業務・技術系スキル
そして、私が重要だと考えている順番もこの順番です。
特に重要なのは、対人スキルです。
PMは「人を通じて」プロジェクトを動かす
なぜ対人スキルが一番重要なのでしょうか。
PMは、必ずしも自分自身が専門技術を使って成果物を作る仕事ではありません。
プログラマーのようにプログラムを書くわけでもありません。
ハードウェア設計者のように設計をするわけでもありません。
品質保証の担当者のように、品質そのものを管理するわけでもありません。
もちろん、こうした業務や技術を理解することは重要です。
しかし、PMの仕事の中心にあるのは、人と人の調整です。
- プロジェクトメンバーとの調整
- チーム間の調整
- 顧客との調整
- 上司との調整
- ベンダーとの調整
- ステークホルダーとの調整
つまり、
PMは、人を通じてプロジェクトを動かす仕事です。
だからこそ、私は対人スキルを最も重要だと考えています。
① 対人スキルはPM戦闘力の土台になる
PMに必要な対人スキルには、さまざまなものがあります。
コミュニケーション
自分の考えを伝えるだけではありません。
相手の理解度を確認し、認識を合わせ、必要な情報を必要な人に伝える。
PMにとって基本となるスキルです。
ファシリテーション
会議を開催するだけではありません。
- 論点を整理する
- 意見を引き出す
- 対立を整理する
- 合意形成する
- 次のアクションにつなげる
といったことが求められます。
交渉
プロジェクトでは、すべての要求をそのまま受け入れられるわけではありません。
納期、コスト、品質、スコープなど、さまざまな制約の中で関係者と合意を作る必要があります。
リーダーシップ
PMは、役職上の上司とは限りません。
自分の部下ではないメンバーや、別会社のベンダー、顧客などを巻き込みながらプロジェクトを進める必要があります。
そのため、単純な「指示する力」だけでは足りません。
傾聴
PMが話すだけでは、プロジェクトの状況を正しく把握できません。
- メンバーが何に困っているのか
- 顧客が何を不安に思っているのか
- ステークホルダーが何を求めているのか
こうした情報を拾うためには、傾聴する力が必要です。
サーバントリーダーシップ
PM自身がすべてを指示するのではありません。
メンバーが力を発揮できる環境を作ります。
必要な障害を取り除き、メンバーを支援する。
こうした考え方も、PMにとって重要なスキルだと考えています。
コミュニケーションが苦手でもPMはできる
ここで、私自身の経験を少し紹介します。
私は、もともとコミュニケーションが得意なタイプではありません。
それでもPMとして仕事をする中で、
「コミュニケーションが苦手だからPMができない」わけではない
と感じるようになりました。
私の場合、コミュニケーションそのものを得意にするというより、
コミュニケーションを仕組みとして設計する
ことを意識するようになりました。
その一つが、キックオフミーティングです。
キックオフでは、単にプロジェクトの予定や役割を説明するだけではありません。
- なぜこのプロジェクトをやるのか
- プロジェクトの目的は何なのか
- 何を大切にして進めるのか
- メンバーにはどのように関わってほしいのか
といったことを、最初にしっかり伝えるようにしました。
すると、プロジェクトメンバーがプロジェクトの目的や重要性を理解しやすくなりました。
モチベーションを高めることにもつながりました。
結果として、プロジェクトをより効果的にマネジメントできるようになりました。
これは、
コミュニケーションが得意だからできたことではなく、コミュニケーションをどう設計するかを考えた結果
だと思っています。
② 思考系スキルは問題を解決する力になる
2つ目は思考系スキルです。
具体的には、次のようなスキルです。
- ロジカルシンキング
- 問題解決
- 判断力
- リスクを予測する力
- 政治力
- 全体を俯瞰して見る力
PMは、日々さまざまな問題に直面します。
そのとき、
「何となく問題がありそう」
だけでは、適切な対応はできません。
- 何が問題なのか
- なぜ問題なのか
- どこに影響するのか
- 何を優先すべきなのか
- 誰に相談すべきなのか
- どうすれば問題を防げるのか
こうしたことを考える力が必要になります。
「全体を見る力」がPMには必要
PMは、個別のタスクだけを見ていてはいけません。
例えば、あるチームの作業が1週間遅れるとします。
単純に、
「1週間遅れているから、そのチームに頑張ってもらおう」
と考えるだけでは不十分です。
その遅れによって、次のような影響を考える必要があります。
- 次のチームにどんな影響があるのか
- スケジュール全体にどう影響するのか
- コストは増えるのか
- 品質に影響するのか
- 顧客への説明が必要なのか
- 他のリスクが増えるのか
つまりPMには、
個別の問題を見ながら、同時にプロジェクト全体を見る力
が求められます。
③ PM専門系スキルはプロジェクトを管理する専門力
3つ目は、プロジェクトマネジメントそのものに関する専門スキルです。
例えば、次のようなものがあります。
- スコープマネジメント
- スケジュールマネジメント
- コストマネジメント
- リスクマネジメント
- コミュニケーションマネジメント
- ステークホルダーマネジメント
- リソースマネジメント
- 品質マネジメント
こうしたPMの知識を体系的に学ぶことは重要です。
PMBOK®︎などを通じて、プロジェクトマネジメントの考え方を体系的に学ぶこともできます。
ただし、ここでも注意したいことがあります。
知識を知っていることと、PMとして使えることは別です。
「知っている」と「できる」は違う
例えば、リスクマネジメントについて知識があったとしても、
「このプロジェクトでは、どんなリスクが重要なのか?」
を判断できなければ、実務では十分に活用できません。
コミュニケーションについて知っていても、
「誰に、いつ、何を伝えるべきなのか?」
を判断できなければ、プロジェクトはうまく動きません。
つまり、
PMスキルは、知識を持っているだけでは完成しません。
私は、
知る → 身につける → 体現する
という3段階が必要だと考えています。
④ 業務・技術系スキルはプロジェクトを理解する力になる
最後が、そのプロジェクトに関する業務・技術系スキルです。
例えば、次のようなものがあります。
- プログラミング
- ハードウェア設計
- 品質保証
- 製造
- 建設
- ITインフラ
- 業界固有の知識
PMが必ずしも専門家である必要はありません。
しかし、そのプロジェクトで何が行われているのかを理解するためには、一定の業務・技術知識が必要です。
技術的な難しさを理解できなければ、リスクを把握できないこともあります。
顧客の要求の難しさを判断できないこともあります。
そのため、業務・技術系スキルもPM戦闘力を構成する重要な要素です。
ただし、私はPM専門系スキルよりもさらに上位に、
対人スキルと思考系スキル
があると考えています。
専門技術が高い人が、必ずしも強いPMになるわけではない
ここはPMを目指す人に伝えたいポイントです。
技術者として非常に優秀だった人がPMになるケースは多くあります。
そして、技術を理解していることは大きな武器になります。
しかし、
技術力が高い=PMとして強い
ではありません。
PMになった瞬間、仕事の中心が変わるからです。
自分で設計する。
自分でプログラムを書く。
自分で成果物を作る。
という仕事から、
人を動かし、調整し、判断し、プロジェクト全体を成功に導く仕事
へ変わります。
そのため、技術力をさらに高めるだけではなく、対人スキルや思考系スキルを身につける必要があります。
スキルは「持っているだけ」ではPM戦闘力にならない
ここまで、PMに必要なスキルを紹介してきました。
しかし、PM戦闘力という観点では、もう一つ重要なことがあります。
それは、
スキルを持っているだけでは不十分
ということです。
例えば、ファシリテーションの本を読んだ。
研修を受けた。
資格を取得した。
これらはスキルを身につけるための重要なステップです。
しかし、それだけで実際のプロジェクトをうまくファシリテーションできるようになるとは限りません。
実際の会議では、想定外の意見が出てきます。
参加者同士が対立することもあります。
話が脱線することもあります。
誰も発言しないこともあります。
そうした状況の中で、実際にスキルを使ってみる。
そして、うまくいかなかったところを振り返る。
次の会議で改善する。
この繰り返しによって、スキルが「自分のもの」になっていきます。
PMスキルは「知る→身につける→体現する」
私は、PMスキルを身につける流れを、
知る → 身につける → 体現する
と考えています。
① 知る
まず、そのスキルが存在することを知ります。
例えば、
「ファシリテーションというスキルがある」
と知ることです。
② 身につける
本を読んだり、研修を受けたり、実際に勉強したりします。
スキルの考え方や方法を理解します。
③ 体現する
実際のプロジェクトで使ってみます。
そして、
「自分だったらどう使えばいいのか」
を考えます。
ここまでできて、初めてそのスキルがPM戦闘力につながっていくと考えています。
スキルは才能ではなく、意識して伸ばせる
ここまでの話をすると、
「コミュニケーションが苦手だからPMには向いていない」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、私はそうは考えていません。
もちろん、人によって得意・不得意はあります。
私自身も、コミュニケーションが得意なタイプではありませんでした。
それでも、
「どうすればプロジェクトメンバーに必要なことを伝えられるか?」
を考えました。
そして、キックオフという場を使って、最初にプロジェクトの目的や方針を共有する方法を実践しました。
その結果、コミュニケーションをPMの武器として使えるようになりました。
大切なのは、
「自分には才能がない」と考えることではありません。
まず、自分に必要なスキルを知ります。
そして、そのスキルについて学びます。
実際のプロジェクトで使ってみます。
振り返ります。
また使ってみます。
このサイクルを繰り返します。
そうすれば、PMスキルは意識して伸ばしていくことができます。
経験とスキルは、お互いにPM戦闘力を高める
前の記事では、PM経験の「質」について考えました。
今回の記事では、PMスキルについて考えました。
この2つは、別々のものではありません。
むしろ、
経験とスキルは相互に作用します。
プロジェクトを経験する。
↓
そこから問題や教訓を得る。
↓
スキルを身につける。
↓
次のプロジェクトで使う。
↓
新しい経験を得る。
↓
さらにスキルを高める。
この循環によって、PM戦闘力は高まっていきます。
だからこそ、
経験年数を増やすだけでもダメ。
スキルを勉強するだけでもダメ。
経験とスキルを、自分自身でつなげていくことが重要なのです。
まとめ:PMスキルは「知識」ではなく「使える力」にする
PMに必要なスキルは、大きく4つに分けられます。
対人スキル
コミュニケーション、ファシリテーション、交渉、リーダーシップ、傾聴、サーバントリーダーシップなどです。
思考系スキル
ロジカルシンキング、問題解決、判断力、リスクを予測する力、政治力、全体を俯瞰して見る力などです。
PM専門系スキル
プロジェクトマネジメントに関する体系的な知識や実践力です。
業務・技術系スキル
そのプロジェクトに必要となる業務知識や技術知識です。
私は、この中でも特に対人スキルを重要だと考えています。
PMは専門技術を自分で使って成果物を作る仕事というより、人を通じてプロジェクトを動かす仕事だからです。
そして、どのスキルについても、
知っているだけではPM戦闘力にはなりません。
知る → 身につける → 体現する
というところまで進める必要があります。
研修や書籍、資格などを通じてスキルを学ぶことは、そのための重要な手段です。
しかし、最終的にそのスキルを自分のものにするのは、実際のプロジェクトで使うことです。
だからこそ、PMスキルは才能だけで決まるものではありません。
自分に必要なスキルを知り、学び、実践し、振り返る。
この繰り返しによって、PM戦闘力は少しずつ高めていけるのだと思います。
あなたは、今どのPMスキルを伸ばしたいでしょうか?
そして、そのスキルを実際のプロジェクトで「体現」できているでしょうか?
PM戦闘力シリーズ
- PM戦闘力とは?PMとしての強さを決める要素を考えてみた
- PM経験年数だけでは戦闘力は上がらない?経験の質が重要な理由
- PM資格は本当に必要?資格を「戦闘力の装備」として考える
- PMの実績とは何か?「トラブルを解決した」だけが実績ではない
- なぜトラブルを起こさないPMは評価されにくいのか?
- あなたのPM戦闘力はどれくらい?PM戦闘力を自己診断してみる
- PM戦闘力を高めるには?
- PM戦闘力と転職・市場価値の関係
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
実際に合格した経験をもとに、勉強方法やおすすめ参考書、最難関といわれる午後Ⅱ論文の対策方法を詳しく解説しています。
「これから勉強を始めたい」「効率よく合格したい」という方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

