「PM経験10年です。」
そう聞くと、PM経験5年の人よりもPMとして強そうに感じるかもしれません。
確かに、PMとして長く仕事をしてきたことは、それだけで一つの強みです。
さまざまなプロジェクトを経験し、さまざまな問題に向き合ってきた可能性があります。
しかし、私はPM経験年数だけでは、その人のPM戦闘力を判断できないと考えています。
なぜなら、同じ「PM経験10年」でも、経験してきたプロジェクトの難しさや、そこから何を学んできたかによって、PMとしての強さは大きく変わるからです。
PM戦闘力を高めるために重要なのは、単純な経験年数ではありません。
どのような経験をしたのか。
そして、その経験から何を学び、次のプロジェクトで何を変えたのか。
今回は、PM経験の「質」について考えてみます。
PM経験年数は重要。でも、それだけでは足りない
まず、誤解のないようにしておきたいのですが、私は「PM経験年数なんて意味がない」と考えているわけではありません。
むしろ、経験年数はPM戦闘力を考えるうえで重要な土台です。
1年目のPMと10年目のPMでは、経験してきたことに大きな差があるでしょう。
ただし、
経験年数=PM戦闘力
ではありません。
重要なのは、
経験をどのようにPMとしての能力に変えてきたか
です。
同じ10年間でも、毎回似たようなプロジェクトを、同じような方法で進めてきた人と、異なる環境・難易度のプロジェクトに挑戦し、そこで得た教訓を次のプロジェクトに活かしてきた人では、経験の価値は変わります。
だから私は、
PM経験年数は「経験の量」を表す一つの指標であって、経験の質まで表しているわけではない
と考えています。
PM経験の「質」は何で決まるのか?
では、どのようなプロジェクトを経験すると、PMとしての経験値が高まるのでしょうか。
私自身の経験から考えると、特に重要なのは次の5つです。
- ステークホルダーの難しさ
- メンバーの多さ
- 技術の難しさ
- メンバーの質
- ベンダーの多さ
もちろん、これだけが全てではありません。
しかし、こうした条件が複雑になるほど、PMにはより高度なマネジメントが求められます。
① ステークホルダーが難しい
私が経験値が高いと感じるプロジェクトの中でも、特に重要なのがステークホルダーの難しさです。
例えば、次のような状況です。
- 初めて取引する顧客
- 自社に対して良い印象を持っていない顧客
- 要求が非常に多い顧客
- 意思決定者が複数いる
- 顧客と自社で利害が一致していない
- 社内でもプロジェクトに対する考え方が異なる
プロジェクトマネジメントは、計画を作って、その通りに進めれば終わる仕事ではありません。
人が関わる以上、認識の違いや期待値の違いが生まれます。
ステークホルダーが難しくなるほど、PMに求められる能力も増えていきます。
- コミュニケーション
- 交渉
- 期待値のコントロール
- 合意形成
そのため、難しいステークホルダーとのプロジェクトを経験することは、PMの戦闘力を高める大きな経験になると考えています。
② メンバーが多い
メンバーが増えると、単純に管理する人数が増えるだけではありません。
例えば、10人のメンバーを一つのチームとして管理するのではなく、複数のチームに分ける必要が出てくるとします。
すると、次のような新しいマネジメントが必要になります。
- チーム間の認識合わせ
- チーム間の依存関係
- チーム間の優先順位
- チーム間のコンフリクト
- 情報共有
人数が増えることで、
「一人ひとりとコミュニケーションを取ればいい」
というマネジメントから、
「チームという単位をマネジメントする」
という段階に変わっていきます。
これもPMとして重要な経験です。
③ 技術的な難しさ
技術的に難しいプロジェクトも、PMにとって貴重な経験になります。
- そもそも技術的に成功する可能性が低い
- やってみなければ結果が分からない
- 前例がない
このようなプロジェクトでは、単純に「計画通りに進める」だけでは対応できません。
例えば、
「もし技術的に実現できなかったらどうするのか?」
というところまで考えておく必要があります。
場合によっては、失敗した場合の代替案や関係者への説明方法まで、事前に準備しておく必要があるでしょう。
つまり、技術的な難しさが増えるほど、
不確実性をマネジメントする力
が求められます。
こうした経験は、次のプロジェクトでリスクを考えるときにも活きてきます。
④ メンバーの質
メンバーの経験やスキルも、プロジェクトの難易度を大きく左右します。
例えば、経験豊富なメンバーが揃っているプロジェクトであれば、PMが細かく指示を出さなくても、それぞれが自律的に動けるかもしれません。
一方、若手メンバーが多いプロジェクトでは、そうはいきません。
プロジェクトを進めるだけではなく、
メンバーを育成すること
も必要になります。
- 何をすべきなのか
- なぜそれをするのか
- どういう観点で仕事をしてほしいのか
こうしたことを伝えながら、プロジェクトそのものも前に進めなければなりません。
これは、単なるタスク管理とは違うPM経験です。
⑤ ベンダーが多い
複数のベンダーが関わるプロジェクトも、PMにとって難易度が上がります。
ベンダーごとの管理だけならまだしも、複数のベンダーが関係すると、
ベンダー同士をどう連携させるか
という問題が出てきます。
例えば、次のような状況です。
- A社の作業が終わらないとB社が作業できない
- A社とB社で責任範囲の認識が違う
- ベンダー間で優先順位が異なる
- 問題が発生したときに責任の所在が曖昧になる
ここではベンダーマネジメントだけではなく、ベンダー間の調整も必要になります。
これもPMとして重要な経験になります。
重要なのは「難しいプロジェクトを経験した数」だけではない
ここまで読むと、
「では、とにかく難しいプロジェクトをたくさん経験すればいいのか?」
と思うかもしれません。
私は、それも少し違うと考えています。
もちろん、さまざまな状況のプロジェクトを経験したほうが、PMとしての引き出しは増えます。
しかし、同じようなプロジェクトでも、経験から教訓を得て、より良いマネジメントができるようになれば、経験値は上がります。
例えば、前回のプロジェクトで、
「メンバーへの指示がうまく伝わらなかった」
という問題が起きたとします。
その原因を分析し、
「メンバーがプロジェクトマネジメントの意図を理解していなかった」
と分かった。
そこで次のプロジェクトでは、
「なぜこの指示をするのか」
まで説明するようにした。
これだけでも、同じような規模のプロジェクトを経験しているにもかかわらず、PMとしての能力は変わっています。
つまり、
経験の質は、プロジェクトそのものの難しさだけで決まるわけではありません。
経験から何を得たか。
これも、経験の質を決める重要な要素です。
失敗は、失敗のまま終わらせなければ戦闘力になる
私は、失敗した経験もPM戦闘力を高める重要な材料になると考えています。
例えば、次のような経験です。
- スケジュールが遅れた
- 顧客との認識が合わなかった
- メンバーへの指示が伝わらなかった
- リスクへの対応が遅れた
- ベンダーとの調整に失敗した
こうした経験は、決して無駄ではありません。
ただし、
「失敗した」という事実だけでは、PM戦闘力にはなりません。
重要なのは、その後です。
- なぜ失敗したのか?
- 原因を分析する
- 次はどうすれば防げるのか?
- 対策を考える
- 次のプロジェクトで実際に対策する
- その結果を確認する
こうして初めて、失敗が「教訓」に変わります。
私は、
失敗を失敗のまま終わらせなければ、その経験は戦闘力になる
と考えています。
私自身の経験:若手メンバーとのプロジェクト
ここで、私自身の経験を紹介します。
ある小規模なプロジェクトで、私以外のメンバーは入社3年以内の若手が2人。
そこに50代の営業担当者が1人。
そして、顧客は要望が多く、プロジェクトを失敗させると厳しいクレームにつながる可能性がある顧客でした。
人数だけを考えれば、それほど大きなプロジェクトではありません。
しかし、PMとしては簡単なプロジェクトではありませんでした。
特に課題だったのが、若手メンバーとどのようにプロジェクトを進めるかでした。
そこで私は、プロジェクトのマネジメント方法を一から伝えることにしました。
そして、キックオフミーティングでは、
「このプロジェクトでは、メンバーとしてこういうことを意識してほしい」
ということを伝えました。
単に「これをやってください」と指示するのではありません。
なぜ自分がその指示をしているのか。
プロジェクトマネジメントの観点から、なぜその行動が必要なのか。
そこまで理解してもらおうとしました。
なぜ、そこまでやったのか?
実は、これは前のプロジェクトから得た教訓でした。
前のプロジェクトでは、メンバーがプロジェクトマネジメントについて十分に理解していませんでした。
そのため、私が出した指示の意図がうまく伝わらず、結果として納期遅延を起こしてしまいました。
そこで私は、
「次のプロジェクトでは、メンバーに指示を出すだけではなく、プロジェクトマネジメントそのものを理解してもらおう」
と考えました。
これが、次のプロジェクトでの行動につながりました。
そして、そのプロジェクトでは、前回の教訓を活かしてプロジェクトを進めることができました。
これこそが「経験が戦闘力になる」ということ
この経験から、私はPMにとって重要なのは、
「何年PMをやったか」ではない
と改めて感じました。
もちろん、経験年数は重要です。
しかし、
前のプロジェクトで何が起きたのか。
↓
なぜ起きたのか。
↓
次はどうするのか。
↓
実際に次のプロジェクトで行動を変える。
このサイクルを回すことが重要です。
前のプロジェクトでの失敗が、次のプロジェクトでの成功につながった。
そして、その成功体験が、さらに次のプロジェクトで使える。
こうして経験が積み重なっていきます。
経験とスキルは相互に作用する
親記事では、PM戦闘力を、
(経験 × スキル × 適用力)+(資格+実績)
と考えました。
ここでいう「経験」と「スキル」は、一方通行ではありません。
経験 → スキル
という流れもあれば、
スキル → 経験
という流れもあります。
プロジェクトを経験することで、
「こういうときには、こう対応すればいい」
というスキルが身につく。
一方で、すでに持っているスキルを使うことで、
「このプロジェクトでは、ここが問題になりそうだ」
と気づくこともあります。
つまり、
経験とスキルは、お互いを高め合う関係
なのです。
ただし、ここでも重要なのは、自分で考えることです。
経験しただけ。
研修を受けただけ。
資格を取っただけ。
これでは十分ではありません。
経験から考える。
考えたことをスキルに変える。
スキルを次のプロジェクトで使う。
その結果を振り返る。
また次のプロジェクトで活用する。
この循環を自分自身で作る必要があります。
「経験年数」ではなく「経験をどう変えたか」を考える
PMとして経験を積んでいると、いつの間にか、
「PM歴○年」
という数字を自分の強さの指標にしてしまうことがあります。
しかし、PM戦闘力を高めるうえで重要なのは、単純な年数ではありません。
- どんなプロジェクトを経験したのか
- どんな難しさに直面したのか
- 何に失敗したのか
- 何を教訓にしたのか
- 次のプロジェクトで何を変えたのか
そして、
その経験を、次のプロジェクトで再現できる能力に変えられたのか。
ここまで考えて、初めて「経験」がPM戦闘力につながるのだと思います。
まとめ:経験を積むだけではなく、経験を戦闘力に変える
PM経験年数は、PM戦闘力を考えるうえで重要な土台です。
しかし、
PM経験10年=PM戦闘力10
のように単純に考えることはできません。
経験の質によって、得られるものは大きく変わります。
特に、次のような要素が複雑になるほど、PMにはより高度なマネジメントが求められます。
- ステークホルダーの難しさ
- メンバーの多さ
- 技術の難しさ
- メンバーの質
- ベンダーの多さ
一方で、難しいプロジェクトだけが価値のある経験というわけでもありません。
同じようなプロジェクトであっても、
過去の教訓を活かして、前回より良いマネジメントができた
のであれば、それもPM戦闘力を高める重要な経験です。
そして、失敗も同じです。
失敗する → 原因を分析する → 対策を考える → 教訓にする → 次のプロジェクトで活かす
このサイクルを回すことで、失敗は戦闘力に変わります。
PMとして大切なのは、
経験年数を増やすことではなく、経験を戦闘力に変え続けること。
私はそう考えています。
あなたは、これまでのPM経験から、どんな教訓を得てきましたか?
そして、その教訓を次のプロジェクトで活かせているでしょうか。
経験を「年数」で終わらせず、「次のプロジェクトで使える力」に変えていく。
それが、PM戦闘力を高める一つの方法だと思います。
PM戦闘力シリーズ
PM戦闘力について、さらに詳しく知りたい方はこちらもどうぞ。
- PM戦闘力とは?PMとしての強さを決める要素を考えてみた
- PM戦闘力を高めるPMスキルとは?重要な4つのスキル考えてみた
- PM資格は本当に必要?資格を「戦闘力の装備」として考える
- PMの実績とは何か?「トラブルを解決した」だけが実績ではない
- なぜトラブルを起こさないPMは評価されにくいのか?
- あなたのPM戦闘力はどれくらい?PM戦闘力を自己診断してみる
- PM戦闘力を高めるには?
- PM戦闘力と転職・市場価値の関係
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
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「これから勉強を始めたい」「効率よく合格したい」という方は、ぜひこちらの記事もご覧ください。

