「プロジェクトマネージャにはリーダーシップが必要だ」
プロジェクトマネジメントについて学んでいると、このような言葉をよく耳にします。
しかし、リーダーシップとは具体的に何をすればよいのでしょうか。
「チームを引っ張ること」と考える人もいるかもしれません。
もちろん、それもリーダーシップの一つです。
一方で、プロジェクトでは、PMが常に先頭に立って指示を出すだけではうまくいかないこともあります。
メンバーの意見を引き出したり、障害を取り除いたり、メンバーが力を発揮できる環境を作ったりすることも、重要なリーダーシップです。
この記事では、プロジェクトマネジメントにおけるリーダーシップについて解説し、近年注目されているサーバントリーダーシップについても紹介します。
一言でいうと
リーダーシップとは、目標を達成するために、人やチームに方向性を示し、行動を促し、力を発揮できるようにすることです。
PMの仕事に置き換えると、
「プロジェクトの目的を示し、メンバーが同じ方向を向いて成果を出せるように導くこと」
と考えると分かりやすいでしょう。
ここで重要なのは、リーダーシップは「命令すること」ではないという点です。
メンバーに指示を出すことだけではなく、目的を共有し、信頼関係を築き、必要な支援を行いながら、チームとして成果を出せる状態を作ることもリーダーシップです。
リーダーシップの目的
リーダーシップの目的は、個人ではなくチームとして目標を達成することです。
プロジェクトでは、一人のPMだけで成果を出すことはできません。
開発、設計、営業、品質管理、顧客、ベンダーなど、さまざまな人が関わります。
そのため、PMには、異なる立場や専門性を持つ人たちを同じ目的に向けていくことが求められます。
PMにリーダーシップが必要な理由
プロジェクトには、通常の業務とは異なる特徴があります。
- 関係者が多い
- 目標や成果物が明確でない場合がある
- スケジュールに制約がある
- 予算に制約がある
- 問題やリスクが発生する
- メンバーがプロジェクト専任とは限らない
- 組織や会社をまたいで活動することがある
このような環境では、単純に「この作業をしてください」と指示するだけでは、チームを動かすことが難しい場合があります。
そこで重要になるのがリーダーシップです。
PMは、
「このプロジェクトは何を目指しているのか」
「なぜこのプロジェクトを行うのか」
を明確にし、メンバーが目的を理解して行動できる状態を作る必要があります。
PMに求められるリーダーシップ
プロジェクトマネージャに求められるリーダーシップには、さまざまな形があります。
方向性を示す
まず重要なのが、プロジェクトの方向性を示すことです。
プロジェクトでは、問題が発生したり、意見が対立したりすることがあります。
そのようなときに、PMが、
「このプロジェクトでは何を実現したいのか」
という軸を示すことで、チームが判断しやすくなります。
メンバーを動機づける
メンバーが「やらされている」と感じている状態では、高いパフォーマンスを発揮することは難しくなります。
そのため、プロジェクトの目的や仕事の意味を伝え、メンバーが主体的に動けるようにすることも重要です。
意思決定する
プロジェクトでは、すべての人の意見が一致するとは限りません。
意見が対立した場合には、PMが判断しなければならないこともあります。
必要な情報を集め、関係者の意見を聞いたうえで、プロジェクトとしての意思決定を行うこともリーダーシップです。
チームを支援する
PM自身がすべての作業を行うのではなく、メンバーが仕事を進められるように支援することも重要です。
例えば、
- 他部署との調整を行う
- 必要な情報を集める
- 意思決定を支援する
- 障害を取り除く
- 必要なリソースを確保する
といった活動があります。
リーダーシップとマネジメントの違い
リーダーシップとマネジメントは、似た言葉として使われることがあります。
しかし、完全に同じものではありません。
| 項目 | リーダーシップ | マネジメント |
|---|---|---|
| 主な役割 | 方向性を示し、人を動かす | 計画・実行・管理する |
| 重視するもの | 目的・方向性・人 | 計画・進捗・コスト・品質など |
| 代表的な活動 | 動機づけ、意思決定、ビジョン共有 | 計画、進捗管理、リスク管理、課題管理 |
ただし、PMにとってはどちらか一方だけが必要なのではありません。
リーダーシップとマネジメントの両方が重要です。
例えば、
「プロジェクトを成功させるために何を目指すのか」を示すのがリーダーシップ。
「その目標を達成するために、どのような計画で進めるのか」を管理するのがマネジメント。
というように考えると分かりやすいでしょう。
サーバントリーダーシップとは?
サーバントリーダーシップとは、リーダーがメンバーを支援することを重視するリーダーシップの考え方です。
「サーバント(servant)」には「奉仕する人」という意味があります。
一般的なリーダー像では、
「リーダーが指示を出し、メンバーがそれに従う」
というイメージがあります。
一方、サーバントリーダーシップでは、
「メンバーが力を発揮できるように、リーダーが支援する」
という考え方を重視します。
例えば、PMがすべての問題を自分で解決するのではなく、メンバーが問題を解決できるように、必要な情報や環境を整えたり、障害を取り除いたりします。
サーバントリーダーシップの特徴
サーバントリーダーシップでは、次のような考え方が重要になります。
- メンバーの話をよく聞く
- メンバーの成長を支援する
- メンバーが働きやすい環境を作る
- チームの障害を取り除く
- 信頼関係を築く
- メンバーの自主性を尊重する
- チームとして成果を出すことを重視する
つまり、リーダー自身が目立つことよりも、チームが成果を出せる状態を作ることを重視します。
アジャイルとサーバントリーダーシップ
サーバントリーダーシップは、特にアジャイルやスクラムとの関連で語られることがあります。
スクラムマスターは、チームがスクラムを適切に実践できるよう支援し、チームが自律的に活動できる環境を整える役割を担います。
そのため、スクラムマスターの役割を理解するうえで、サーバントリーダーシップの考え方は参考になります。
例えば、チームで問題が発生したときに、スクラムマスターがすべての問題を解決するのではなく、
「チーム自身が問題を解決できるように支援する」
という考え方です。
これは、メンバーの自律性を高めることにもつながります。
サーバントリーダーシップは「何でもメンバーに任せる」ことではない
サーバントリーダーシップについて、
「メンバーに自由にやらせること」
と誤解することがあります。
しかし、単に何でも任せることとは違います。
リーダーは、必要な場面では方向性を示し、意思決定を行い、チームを支援する必要があります。
例えば、チーム内で解決できない問題が発生した場合、PMが「皆さんで何とかしてください」と放置するのはサーバントリーダーシップではありません。
PM自身が上位組織や他部署と調整し、チームが問題を解決できる環境を作ることが、サーバントリーダーシップにつながります。
つまり、
「任せる」のではなく「任せられるように支援する」
という考え方が重要です。
リーダーシップのスタイルは一つではない
リーダーシップには、さまざまなスタイルがあります。
例えば、
- 指示型
- 参加型
- 支援型
- コーチング型
- サーバントリーダーシップ
などがあります。
どのスタイルが常に正しいというわけではありません。
プロジェクトの状況、チームの成熟度、メンバーの経験、緊急度などによって、適切なリーダーシップは変わります。
例えば、重大な障害が発生し、今すぐ判断が必要な状況では、PMが明確に方向性を示す必要があります。
一方、経験豊富なメンバーが自律的に活動できている場合は、細かく指示するよりも、メンバーを支援するほうが効果的かもしれません。
状況に応じてリーダーシップのスタイルを使い分けることが重要です。
PMのリーダーシップで重要なコミュニケーション
リーダーシップを発揮するうえで、コミュニケーションは欠かせません。
特にPMは、
- プロジェクトの目的を伝える
- メンバーの意見を聞く
- 問題を共有する
- 意思決定の理由を説明する
- 関係者の認識を合わせる
といったコミュニケーションを行います。
「自分の考えを伝える」だけではなく、「相手の考えを理解する」ことも重要です。
特にサーバントリーダーシップでは、メンバーの声を聞くことが重要になります。
リーダーシップでよくある失敗
PMがすべての判断をする
PMがすべての判断を行ってしまうと、メンバーが自分で考えなくなってしまう可能性があります。
もちろん重要な意思決定はPMが行う必要がありますが、メンバーが判断できることまでPMが決める必要はありません。
可能な範囲でメンバーに判断を委ねることも重要です。
指示を出すことがリーダーシップだと考える
「これをやってください」と指示を出すだけでは、メンバーの主体性を引き出すことは難しい場合があります。
なぜその作業が必要なのか、プロジェクトとして何を目指しているのかを共有することが重要です。
メンバーに任せすぎる
逆に、「自主性を尊重する」という理由で、PMが何も関与しなくなることも問題です。
必要な場面では、PMが方向性を示したり、障害を取り除いたりする必要があります。
自分が一番頑張ればよいと考える
PMが誰よりも多くの仕事を抱えることが、良いリーダーシップとは限りません。
PM自身が頑張るよりも、チーム全体が力を発揮できる状態を作ることが重要です。
プロジェクトマネージャにとってのリーダーシップ
PMにとってのリーダーシップは、「メンバーの先頭に立って引っ張ること」だけではありません。
時には先頭に立ち、時には後ろから支え、時にはメンバーに考えてもらう。
プロジェクトの状況に応じて、役割を変えることが重要です。
例えば、プロジェクトの立ち上げ時には、PMがプロジェクトの目的や方向性を明確に示す必要があります。
一方で、チームが成熟してくれば、メンバーが主体的に判断できるように権限を渡していくことも重要になります。
このように、「自分がチームを動かす」のではなく、「チームが自律的に動ける状態を作る」という視点を持つことが、PMのリーダーシップを考えるうえで重要です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
リーダーシップについて学ぶときは、次の用語と関連付けて整理しておくとよいでしょう。
- サーバントリーダーシップ
- チームマネジメント
- チームビルディング
- コミュニケーション
- 動機づけ
- コンフリクトマネジメント
- 意思決定
- 合意形成
- ファシリテーション
- ステークホルダーエンゲージメント
- スクラムマスター
- アジャイル
特に、「指示するリーダー」と「支援するリーダー」の違いを理解しておくと、リーダーシップに関する問題を考えやすくなります。
PM道場のワンポイント
強いPMとは、自分が一番頑張るPMではなく、チームが力を発揮できる環境を作れるPMです。
PMになったばかりの頃は、
「自分が判断しなければ」
「自分が解決しなければ」
と考えてしまうことがあります。
しかし、プロジェクトが大きくなればなるほど、PM一人ですべてを判断することはできません。
そこで重要になるのが、メンバーを信頼して任せることです。
ただし、単純に仕事を丸投げするのではありません。
「メンバーが自分で判断し、行動できるように必要な支援をする」
という考え方が重要です。
これが、サーバントリーダーシップの考え方にもつながります。
PMの役割は、必ずしも「一番前でチームを引っ張る人」ではありません。
プロジェクトの目的を示し、メンバーが力を発揮できる環境を作り、必要なときにはチームを支える。
そんなリーダーシップも、PMにとって非常に重要だと私は考えています。
関連用語
- サーバントリーダーシップ
- チームマネジメント
- チームビルディング
- コミュニケーションマネジメント
- ファシリテーション
- ネゴシエーション
- 合意形成
- 意思決定
- コンフリクトマネジメント
- ステークホルダーエンゲージメント
- スクラムマスター
- アジャイル
まとめ
リーダーシップとは、目標を達成するために、人やチームに方向性を示し、行動を促し、力を発揮できるようにすることです。
PMにとってのリーダーシップは、単純にメンバーへ指示を出すことではありません。
- プロジェクトの方向性を示す
- メンバーを動機づける
- 意思決定する
- メンバーの意見を聞く
- チームの障害を取り除く
- メンバーが力を発揮できる環境を作る
といったさまざまな活動が含まれます。
その中でも、サーバントリーダーシップは、リーダーがメンバーを支援し、メンバーが主体的に活動できる環境を作るという考え方です。
重要なのは、「メンバーに何をさせるか」ではなく、
「メンバーがどうすれば力を発揮できるか」
という視点を持つことです。
プロジェクトの状況によって、強く方向性を示すことが必要な場合もあれば、メンバーに任せて支援することが必要な場合もあります。
その状況に応じてリーダーシップのスタイルを使い分けることが、PMにとって重要なスキルです。
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- チームビルディングとは?
- ファシリテーションとは?
- ネゴシエーションとは?
- 合意形成とは?
- 意思決定とは?
- ステークホルダーエンゲージメントとは?
- スクラムマスターとは?
よくある質問(FAQ)
Q. リーダーシップとは何ですか?
A. 目標を達成するために、人やチームに方向性を示し、行動を促し、力を発揮できるようにすることです。PMの場合は、プロジェクトの目的を共有し、チームとして成果を出せる状態を作ることが重要です。
Q. PMにリーダーシップは必要ですか?
A. 必要です。プロジェクトでは多くの関係者が関わるため、PMには方向性を示し、関係者をまとめ、必要な意思決定を行うことが求められます。
Q. リーダーシップとマネジメントの違いは何ですか?
A. リーダーシップは方向性を示し、人やチームを目標に向けて動かすことに重点があります。一方、マネジメントは計画、進捗、コスト、品質、リスクなどを管理し、目標達成に向けてプロジェクトを運営することに重点があります。PMには両方が必要です。
Q. サーバントリーダーシップとは何ですか?
A. リーダーがメンバーを支援し、メンバーが力を発揮できる環境を作ることを重視するリーダーシップの考え方です。メンバーの話を聞き、障害を取り除き、成長や自律的な活動を支援します。
Q. サーバントリーダーシップはメンバーにすべて任せることですか?
A. いいえ。何でも任せることではありません。メンバーが主体的に活動できるよう支援しながら、必要な場面ではリーダーが方向性を示したり、意思決定したりすることも重要です。
Q. サーバントリーダーシップはスクラムと関係がありますか?
A. はい。スクラムマスターの役割を理解するうえで、サーバントリーダーシップの考え方は参考になります。スクラムマスターは、チームが自律的に活動できるよう支援し、障害を取り除く役割を担います。
Q. PMは常にメンバーを引っ張る必要がありますか?
A. 必ずしもそうではありません。プロジェクトの状況やチームの成熟度によって、方向性を強く示すことが必要な場合もあれば、メンバーに権限を渡して支援するほうが効果的な場合もあります。状況に応じてリーダーシップのスタイルを使い分けることが重要です。
私は令和5年度 IPAプロジェクトマネージャ試験に合格しました。
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