プロジェクト開始時に、すべての作業を最後まで詳細に計画できるとは限りません。
特に期間の長いプロジェクトや、不確実性の高いプロジェクトでは、後半の作業内容がまだ決まっていないことも多くあります。
そのような場合に活用されるのがローリングウェーブ計画法(Rolling Wave Planning)です。
この記事では、ローリングウェーブ計画法の意味や考え方、実務での活用方法までわかりやすく解説します。
一言でいうと
ローリングウェーブ計画法とは、「近い将来は詳細に、遠い将来は大まかに計画し、進捗に合わせて計画を詳細化していく手法」です。
ローリングウェーブ計画法とは
ローリングウェーブ計画法は、プロジェクトの開始時点ですべてを詳細に計画するのではなく、直近の作業だけを詳細化し、将来の作業は概要レベルで計画しておく手法です。
プロジェクトが進み、情報が増えるにつれて、後半の計画を徐々に具体化していきます。
PMBOKでは、この考え方を「段階的詳細化(Progressive Elaboration)」を実現する代表的な計画手法として紹介しています。
なぜローリングウェーブ計画法が必要なのか
例えば、1年後に実施するテスト工程を、プロジェクト開始日に詳細まで決めても、その頃には要件や設計が変わっている可能性があります。
最初から細かく計画すると、何度も計画を作り直すことになり、かえって非効率です。
そこで、近い将来だけを詳細に計画し、状況に応じて計画を更新していくことで、現実的なプロジェクト運営が可能になります。
ローリングウェーブ計画法のイメージ
| 期間 | 計画の粒度 |
|---|---|
| 今月~来月 | アクティビティ単位まで詳細化 |
| 3~6か月後 | ワークパッケージ単位 |
| 半年以降 | フェーズ単位の概要計画 |
プロジェクトが進むにつれて、概要計画だった部分を順番に詳細化していきます。
メリット
- 不確実性の高いプロジェクトへ対応しやすい
- 最新情報を反映した現実的な計画を作成できる
- 計画の作り直しを減らせる
- 見積もり精度が向上する
デメリット
- 計画を定期的に見直す手間がかかる
- 関係者との合意形成を繰り返す必要がある
- 後半の予算やリソースが確定しにくい場合がある
アジャイルとの違い
| 項目 | ローリングウェーブ計画法 | アジャイル |
|---|---|---|
| 目的 | 計画を段階的に詳細化する | 価値を継続的に提供する |
| 計画 | 段階的に更新する | イテレーションごとに計画する |
| 適用 | ウォーターフォールでも利用可能 | アジャイル開発で利用 |
ローリングウェーブ計画法はアジャイル専用ではありません。
ウォーターフォール型プロジェクトでも、不確実性が高い部分については広く活用されています。
実務ではこんな場面で活用される
例えば、新しい業務システムを開発するプロジェクトでは、要件定義や基本設計は詳細に計画できます。
しかし、運用テストや教育計画は、システムの完成度や利用部門との調整状況によって内容が変わることがあります。
そのため、初期段階では概要だけを計画し、プロジェクトが進んだ段階で詳細なアクティビティへ分解します。
このように、情報が増えるタイミングに合わせて計画を具体化することが、ローリングウェーブ計画法の考え方です。
よくある勘違い
最初は計画しなくても良いという意味ではない
ローリングウェーブ計画法では、後半を「計画しない」のではなく、「概要レベルで計画する」ことが重要です。
全体像がないまま進めることとは異なります。
計画変更を繰り返すことが目的ではない
計画を頻繁に変更することではなく、情報が増えたタイミングで計画の精度を高めることが目的です。
プロジェクトマネージャ試験ではここが重要
IPAのプロジェクトマネージャ試験では、不確実性への対応や計画策定の考え方として、ローリングウェーブ計画法が出題されることがあります。
午後試験では、「情報が不足している状況でどのように計画を立てたか」「段階的に詳細化した理由」を説明できることが重要です。
「最初から完璧な計画は作れない」という前提を理解しておきましょう。
PM道場のワンポイント
未来の不確実な内容まで無理に詳細化すると、変更のたびに計画を作り直すことになります。
優れたプロジェクトマネージャは、「今決めるべきこと」と「後で決めるべきこと」を意識して計画を作成しています。
計画とは、一度作って終わりではなく、プロジェクトの成長とともに育てていくものです。
関連用語
- WBS
- アクティビティ
- スケジュールベースライン
- テーラリング
- プロジェクトライフサイクル
- アジャイル
- ウォーターフォール
- 段階的詳細化(Progressive Elaboration)
まとめ
ローリングウェーブ計画法とは、近い将来は詳細に、遠い将来は概要レベルで計画し、状況に応じて段階的に詳細化していく計画手法です。
不確実性が高いプロジェクトでも、現実的で柔軟な計画を立てられることが大きな特徴です。
重要なのは、「最初から完璧な計画を作ること」ではなく、「必要なタイミングで計画の精度を高めること」です。
関連記事
- WBSとは?
- アクティビティとは?
- スケジュールベースラインとは?
- テーラリングとは?
よくある質問(FAQ)
Q. ローリングウェーブ計画法とは何ですか?
A. 近い将来は詳細に、遠い将来は概要レベルで計画し、プロジェクトの進捗に合わせて段階的に計画を詳細化していく手法です。
Q. アジャイルでしか使えませんか?
A. いいえ。ウォーターフォール型プロジェクトでも、不確実性の高い部分について広く利用されています。
Q. 段階的詳細化との違いは何ですか?
A. 段階的詳細化は「考え方」、ローリングウェーブ計画法はその考え方をスケジュール計画に適用する具体的な手法です。
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