前回の記事では、
「PMに必要なのはコミュニケーション能力ではなく、コミュニケーションを設計する力」
という考え方について書きました。
では、そのコミュニケーションは、いつ設計すればよいのでしょうか。
私の答えは、プロジェクト開始時のキックオフミーティングです。
キックオフミーティングというと、次のような「説明会」のイメージを持っている方も多いでしょう。
- プロジェクトの目的を説明する
- スケジュールを共有する
- 体制を説明する
もちろん、それらも大切です。
しかし、人見知りだった私にとって、キックオフミーティングの一番の目的は違いました。
「初対面」を終わらせること。
これが、私にとってのキックオフミーティングの本当の価値でした。
人見知りにとって一番難しいのは「最初の一言」
私は昔から人見知りでした。
特に苦手だったのは、初対面の人との会話です。
プロジェクトが始まると、多くのメンバーやステークホルダーとは初めて仕事をします。
本来であれば、自分から声を掛けて関係を築いた方が良いのでしょう。
しかし私は、
- 「何を話せばいいんだろう。」
- 「今話しかけても迷惑ではないかな。」
そんなことばかり考えてしまい、自分から話しかけることができませんでした。
「そのうち話す機会があるだろう。」
そう思って先延ばしにしていたのです。
しかし、その「そのうち」は、決まってトラブルが起きたときでした。
キックオフをやらないと、プロジェクトは「いつの間にか」始まってしまう
ある時、キックオフミーティングを実施しなかったプロジェクトがありました。
気付けば、それぞれが作業を始め、プロジェクトは静かにスタートしていました。
しかし、そのプロジェクトではチームマネジメントがうまくいきませんでした。
プロジェクトメンバーは、
- 何のためにこのプロジェクトをやるのか
- どれほど重要なプロジェクトなのか
を十分に理解できていませんでした。
そのため、当事者意識も生まれにくく、PMである私が後から一人ひとりとコミュニケーションを取り、プロジェクトへの意識を高めていく必要がありました。
人見知りの私にとって、それは非常に大きな負担でした。
今振り返ると、問題はコミュニケーション能力ではありません。
プロジェクトのスタートを設計できていなかったのです。
キックオフは「説明会」ではなく「チームを作る場」
それ以来、私は必ずキックオフミーティングを実施するようになりました。
ただし、目的は説明ではありません。
私が一番大切にしているのは、
「このプロジェクトを成功させるチームを作ること」です。
そのために、必ず次のことを伝えています。
- このプロジェクトの目的
- なぜ今このプロジェクトが必要なのか
- ステークホルダーが期待していること
- 会社として期待していること
- PMとして、このプロジェクトにかける思い
スケジュールや体制は資料を見れば分かります。
しかし、
「このプロジェクトは重要なんだ。」
という熱意は、PM自身の言葉でしか伝えられません。
私は、この時間がプロジェクトメンバーの当事者意識を育てるのだと思っています。
不安を話してもらう時間が、未来のリスクを減らす
キックオフでは、もう一つ必ず行っていることがあります。
一人ひとりに、不安なことを話してもらうことです。
プロジェクトの規模によって時間は調整しますが、できる限り全員に話してもらいます。
すると、
- この技術は経験がありません
- スケジュールが少し心配です
- 他案件との兼務があります
など、さまざまな声が聞こえてきます。
これは単なる自己紹介ではありません。
私はこの時間を、リスクを見つける時間だと思っています。
さらに、この時間にはもう一つ大きな意味があります。
全員が一度は発言することで、
「話してもいい場なんだ。」
という空気が生まれます。
この最初の一言が、その後の相談のしやすさにつながっていくのです。
最初の30分が、その後数か月のコミュニケーションを変える
キックオフが終わると、不思議なくらいコミュニケーションが楽になります。
- チャットを送る
- 電話を掛ける
- 相談する
どれも心理的なハードルが下がるのです。
特に電話では、その効果を強く感じます。
相手は、私の顔を思い出しながら話してくれている。
私も、「一度話した相手だから」という安心感があります。
トラブルが起きたときも、
「すぐ連絡してください。」
と言えば、すぐに対応してくれることが増えました。
私はこれを、キックオフで築いた信頼関係のおかげだと考えています。
PMBOKには「キックオフをやりましょう」とは書かれていない
PMBOKには、
「必ずキックオフミーティングを実施しましょう。」
とは書かれていません。
しかし、コミュニケーション・マネジメントでは、必要な情報を必要な人へ適切なタイミングで届けることが重要だとされています。
また、ステークホルダー・エンゲージメントでは、ステークホルダーとの良好な関係を構築し、維持することが求められます。
私は、この考え方を実践する最初の機会がキックオフミーティングだと考えています。
単なる説明会ではありません。
チームを作り、信頼関係を築き、コミュニケーションを始めるための最初のイベントなのです。
おわりに
私は今でも人見知りです。
初対面の人と話すことが得意になったわけではありません。
それでも、キックオフミーティングを大切にするようになってから、コミュニケーションに対する苦手意識は大きく減りました。
理由は簡単です。
自分を変えたのではなく、コミュニケーションが生まれる環境を設計したからです。
キックオフミーティングは、プロジェクト開始の儀式ではありません。
チームが同じ方向を向き、安心して相談できる関係を作るための第一歩です。
だから私は、人見知りのPMほどキックオフミーティングを大切にしてほしいと思っています。
あなたへの問いかけ
あなたのプロジェクトのキックオフミーティングは、「説明会」で終わっていませんか。
それとも、チームを作るための最初のコミュニケーション設計になっているでしょうか。
これはCTAサンプルです。
内容を編集するか削除してください。

