「PMにはコミュニケーション能力が必要です。」
プロジェクトマネージャについて学ぶと、必ずと言っていいほど耳にする言葉です。
そのため、「話すのが得意な人」「誰とでもすぐに打ち解けられる人」がPMに向いていると思われがちです。
しかし、PMBOKを読むと少し違った景色が見えてきます。
PMBOKでは、コミュニケーション・マネジメントについて、「必要な情報を、必要な人へ、適切なタイミングで届けるための計画・実行・監視」を重視しています。
一方で、「社交的になりましょう」「話し上手になりましょう」とは書かれていません。
私はこの違いに救われました。
なぜなら、私は人見知りだったからです。
私は「コミュニケーション能力を身に付けなければPMは務まらない」と思っていました。
しかし10年以上PMとして仕事を続ける中で気付いたのは、PMに本当に必要なのはコミュニケーション能力ではなく、コミュニケーションを設計する力だったということです。
私が一番苦手だったのは「初対面の人」と話すこと
人見知りにもさまざまなタイプがありますが、私が特に苦手だったのは初対面の人との会話でした。
プロジェクトが立ち上がると、多くのメンバーやステークホルダーとは初めて仕事をします。
本来であれば、自分から積極的に声を掛けて関係を築いた方が良いのでしょう。
しかし私は、
- 何と話しかければいいんだろう。
- 今話しかけても迷惑ではないかな。
そんなことばかり考えてしまい、自分から声を掛けることができませんでした。
「そのうち話す機会があるだろう。」
そう思って先延ばしにしていたのです。
ところが、その「話す機会」は決まってトラブルが起きたときでした。
トラブルのときに初めて話すのでは遅い
問題が発生すると、PMは多くの人と連携しながら状況を整理し、対応方針を決めなければなりません。
しかし、お互いに十分な関係性ができていない状態では、
- 相談しづらい
- 本音を引き出しにくい
- お願いもしづらい
という状況になります。
私は何度も、
「もっと早く話しておけば良かった。」
と後悔しました。
当時は「コミュニケーション能力が足りないからだ」と思っていましたが、今振り返ると違います。
コミュニケーションが生まれる場を設計できていなかったのです。
私を変えたのは「キックオフミーティング」だった
転機になったのは、キックオフミーティングの目的を変えたことでした。
以前の私は、キックオフはプロジェクトの目的やスケジュールを説明する場だと考えていました。
しかし今は違います。
私にとってキックオフの最大の目的は、
「最初のコミュニケーションを設計すること」
です。
自己紹介をする。
挨拶をする。
顔と名前を一致させる。
ほんの数分の会話でも構いません。
一度でも会話していると、その後のコミュニケーションは驚くほど楽になります。
チャットを送る心理的なハードルが下がります。
電話を掛けるときも、
「相手は自分の顔を思い出しながら話してくれている。」
そんな安心感があります。
私は社交的になったわけではありません。
社交的でなくても話せる環境を作っただけだったのです。
振り返ってみると、私は無意識のうちに「コミュニケーション・マネジメント計画」を見直していたのだと思います。
「誰と、いつ、どのようにコミュニケーションを取るか」を計画することは、情報共有だけではありません。
コミュニケーションが自然に生まれるきっかけを設計することでもあるのです。
PMBOKの「テーラリング」を、自分自身にも適用してみた
PMBOKでは、プロジェクトの特性に合わせてプロセスや手法を調整することをテーラリングと呼びます。
私はこの考え方を、プロジェクトだけでなく自分自身にも当てはめるようになりました。
以前は、
- もっと話せるようになろう。
- 人見知りを克服しよう。
と考えていました。
しかし、それでは長続きしませんでした。
そこで発想を変えました。
「人見知りでも成果を出せるプロジェクト運営を設計しよう。」
そう考えるようになったのです。
キックオフを実施する。
定例会を設ける。
レビューの場を作る。
相談しやすいルールを決める。
これらはプロジェクトを管理するためだけではありません。
自分の苦手を補うための仕組みでもありました。
PMは「人を変える」のではなく、「行動しやすい環境」を設計する
この考え方は、プロジェクトメンバーにも当てはまります。
PMは、
「もっと相談してください。」
「もっと報告してください。」
と言うだけでは十分ではありません。
相談しやすいタイミングを決める。
報告する基準を決める。
定例会や1on1を設ける。
つまり、行動しやすい環境を設計することが重要です。
これは、PMBOKのステークホルダー・エンゲージメントの考え方にも通じます。
ステークホルダーを動かすために必要なのは、「相手の性格を変えること」ではありません。
相手が行動しやすい環境を整えることです。
そして、この考え方は自分自身にも使えます。
人見知りという性格を変えようとするのではなく、
人見知りでも行動できる環境を設計する。
その方が、ずっと現実的で、再現性があります。
私が考えるPMのコミュニケーション能力
私は昔、コミュニケーション能力とは、
- 話すのが上手なこと
- 誰とでも仲良くなれること
だと思っていました。
しかし、今は違います。
私にとってPMのコミュニケーション能力とは、
「必要な情報が、必要な人へ、必要なタイミングで届く状態を設計する力」
です。
話すことが目的ではありません。
プロジェクトを前に進めることが目的です。
だからこそ、PMに必要なのは社交性ではなく、
必要なコミュニケーションが自然に生まれる仕組みを作る力なのだと思います。
おわりに
私は今でも人見知りです。
初対面の人と話すことが得意になったわけではありません。
それでもPMとして仕事を続けられているのは、自分を変えたからではありません。
自分に合った環境を設計するようになったからです。
これは、プロジェクトマネジャという仕事の本質にも通じています。
PMは、プロジェクトを成功へ導くために、計画を立て、仕組みを作り、人が動きやすい環境を整えます。
それなら、自分自身に対しても同じことができるはずです。
苦手なことを無理に克服しようとするのではなく、
苦手でも成果を出せる環境を設計する。
私は、それこそがプロジェクトマネジメントの考え方を、自分自身に活かすことなのだと思っています。
あなたへの問いかけ
あなたは、苦手なことに出会ったとき、自分を変えようとしていませんか。
それとも、苦手でも成果を出せる環境を設計しようとしていますか。
プロジェクトマネジメントは、プロジェクトを管理するための知識だけではありません。
自分自身をマネジメントするための考え方でもあるのではないでしょうか。
まずは一つだけ、環境を変えてみる
もしあなたが私と同じように人見知りで悩んでいるなら、性格を変えようとする必要はありません。
まずは一つだけ、コミュニケーションが自然に生まれる仕組みを作ってみてください。
例えば、キックオフで必ず全員と自己紹介をする、定例会を設ける、1on1の時間を確保するなど、小さな工夫で十分です。
自分を変えることは難しくても、環境を変えることはできます。
その小さな仕組みが、プロジェクトだけでなく、あなた自身をきっと助けてくれるはずです。
これはCTAサンプルです。
内容を編集するか削除してください。

